1 異世界転生
「あゆむ…起きて…」
(誰だ?俺の名前を呼んでいるのは…あれ?俺って、死んだはずだよな…なんで、意識があるんだ?)
「あゆむ…」
(この声、どこかで聞いたことがあるような…)
「あゆむ…起きてよ…」
(この声…瑠美だ!)
目が覚めた。周りを見てみると、知らない男の人がイスに座って本を読んでいた。
「あぅあの、あなたあぅは誰ですか?」
口がうまく回らない。男の人は俺の声に気付き、こちらに近づいてくる。男の人は俺の前まで来ると、俺を軽々と抱き上げた。
(この人の身長何メートルあるんだ!?高2の俺をこんな簡単に持ち上げるなんて!)
「オギャー!やめてください!俺オギャー!を離してください!」
(なんで言葉が話せないんだ!?「あぅあぅ」とか「オギャー」ってまるで赤ちゃんじゃないか!)
男の人は、俺を抱きながら部屋の中を歩き回っていた。すると、壁に立てかけてある鏡を見つけた。今の自分の姿を確認しようと、鏡に映る自分の姿を見る。俺は自分の姿を見て、目を疑った。なんと俺は赤ちゃんになっていたのだ!
「オギャー!なんで俺が赤オギャー!ちゃんになっオギャー!てるんだ!?」
(死んだはずなのに生きてるし、目が覚めたら知らない場所にいるし、おまけに赤ちゃんになってるなんて!なにがどうなってるんだよ!)
赤ちゃんなので言葉を話すことができなく、ただ泣き叫ぶ事しかできなかった。ずっと泣き叫んでいると、男の人がベットに寝かせてくれた。ベットに入ると急に眠気が襲ってきた。そして、そのまま深い眠りに落ちていった。
翌朝。1日寝たおかげで、冷静になることができた。今の状況を整理すると、俺は、よくアニメとかである、転生をしてしまったのだろう。
(多分転生の原因は、瑠美をかばって死んだからか…)
この部屋を見る限りだと、ここは地球のどこかの国なのだろう。
(もし、異世界だったら…)
そんな不安を抱いていると、昨日俺を抱いた男の人が部屋に入ってきた。今日は男の人の他に、きれいな女の人と3歳か4歳ぐらいの女の子が入ってきた。きれいな女の人は、女の子を抱いて俺に近づいてきた。女の人は赤ちゃんになった俺の頭をなでながら、女の子に何かを話している。
(こんなきれいな人に頭をなでてもらえるなんて、嬉しいけど少し照れくさいな…ん?この人が話してるのは何語だ?日本語や英語ではないようだが…)
女の人が話し終わると、女の子も俺の頭をなでてくれた。
(多分だけど、あの男の人は俺の父さんで、この二人は母さんと姉さんかな?)
そんなことを考えていると、母さんらしき人が俺のことを抱きかかえてくれた。
母さんたちが、また何かを話しているが、何を言っているのか全く分からない。
(みんなが話している言葉を早く覚えないとな。俺は今どこの国にいるのかすらわからないんだから、まずこの国の言葉を覚えることから始めるか。そして何年かかかるかもしれないけど、日本まで瑠美に会いに行かないと…)
さっき抱いていた不安を忘れ、言葉を覚える事と瑠美に会うことを目標にし、歩の新しい生活が始まった。