俺の大切なもの
序章
俺の大切なもの
学校からの帰り道、俺はいつも通り赤坂 瑠美と帰っていた。俺の名前は和宮 歩
俺たちは昔から仲が良く、付き合ってはいないが毎日一緒に帰ったり、二人で出かけたりしていた。今日もこれから、商店街にあるカフェに行く予定だった。カフェに向かっている最中、いろいろな話をしながら向かっていた。話をしながら向かっていたので、あっという間にカフェについてしまった。
カフェに入ると店長が
「いらっしゃい。またお二人さんかい。本当に仲がいいの~。二人ともいつものでいいかい?」
二人そろって元気よく「はい!」と返事をした。俺たちは、ほとんど毎日来ているので、もう常連客になっていた。俺たちは窓際の席に向かい合って座った。多分周りの人たちから見たら、俺たちはカップルにしか見えないだろう。でも実際は違うのが悲しとこだな。
学校のこと、勉強のこと、愚痴など瑠美と話していると、楽しくて時間がいつもの数倍早く流れているように感じてしまう。こんな楽しい時間がいつまでも続けばいいのになと、つくづく思う。
「歩、それ本気で言ってるの?」
瑠美が話しかけてきた。
「えっ?なにが?」
「だから今、歩が言ってた、こんな時間が…ってやつだよ」
「あっ、それもしかして俺声に出ちゃってた?」
「うん…」
「もちろん!本気に決まってるじゃないか」
俺がそう言い終えると、瑠美は頬を少し赤くして俯いた。
(瑠美は本当に可愛いな~)
なんだかんだで、俺たちは8時までカフェにいてしまった。
「瑠美、そろそろ帰るか」
「うん、そうだね…」
あれ?なんでだろ、瑠美がさっきより元気がない気がする。まぁ、気のせいだろ。
そのままカフェを後にし、二人で帰途に着いた。カフェから20分ほど歩いただろうか。商店街から離れるにつれて、人気が少なくなっていった。完全に人気が無くなったあたりで瑠美が立ち止まった。
「瑠美、どうかした?」
「あのね、歩。わた…わっ、私っ…」
瑠美がなにかを言おうとした途端、瑠美の後ろから誰かが走ってきた。暗くてよくわからないが、多分性別は男だろう。その男の後ろから、さらに数人走ってきた。どうやら先に走ってきた男を追っている用だった。
「待て!無駄な事はやめろ!福原!」
後ろで走っている人たちからそんな声が聞こえた。福原…どっかで聞いた名前だな。どこできいたんだっけな。そんなことを考えていると瑠美が
「ねぇ、福原ってニュースでやってた、通り魔じゃない?」
「そんなわけ…」
完全には否定が出来なかった。今の現状を見る限りだと、その考えが一番しっりくるのだ。先頭を走っている男が数人に追いかけている。恐らく後ろを走っているのは警察だろう。そして先頭の男が福原と呼ばれている。これらの情報を整理すると、やっぱり先頭を走っているのは連続通り魔事件の犯人、福原 大介。
ここにいるとまずいな。福原と警察はどんどんこっちに近づいでくる。
「おい!瑠美、早くここから逃げるぞ!このままだと俺たちが殺されちゃうよ!」
「ごめん、歩… 私、怖くて足に力が入らないの… だから、私を置いて早く逃げて…」
「馬鹿野郎!そんことできるわけないだろ!」
こんなやり取りをしてる間に福原達は数メートル先まで迫っていた。
「ガキども!そこをどけ!」
「君たち危ないから離れて!」
福原が腰からナイフを取り出した。このままだと瑠美が…俺はとっさに瑠美を抱きかかえた。抱きかかえたとたん、「グサッ」という感触と共に背中に激痛がはしった。福原にナイフで刺されたのだ。福原はナイフを刺したせいでスピードを失い、すぐ警察に取り押さえられた。
俺は刺された痛みに耐えながら、瑠美が無事かを確認しようと思い、瑠美に話しかけようとする。だが俺はその場に倒れてしまった。さっき刺された傷口から血が大量に出てきている。どうやら太い血管を切られたらしい。瑠美が慌てて駆け寄ってきた。
「歩!しっかりして!お願い!死なないで!」
(体に力が入らない。体がだんだん寒くなってきた。意識も朦朧とするな…俺こんなところで死んじゃうのかな?)
「歩!ねぇ、歩ってば!死んじゃやだよ!」
瑠美が泣きながら叫んでいる。瑠美の声がだんだん遠ざっていく。
(やばい…意識が…)
ほとんど消えかけてる意識の中、瑠美との思い出が沢山蘇ってきた。二人で出かけたこと。思いっきりケンカしたこと。毎日一緒に登校や下校をしたことなど。いつも当たり前だと思っていたことが、今ではとても大切な時間だったと思えてきた。そして俺は自分の本当の想いに気付く。
(俺、本当は瑠美の事が大好きなんだ…)
こう思ったとたん、自然と涙があふれてきた。
(こんなことになるんだったら、もっと早く瑠美に本当の気持ちを伝えとけば…よかっ…た…)
歩は最後の力を振り絞り
「だい…好きだ…よ…るみ…」
そう言い残し、歩の意識は完全に失われた…
瑠美は歩の最後の言葉が聞こえたらしく
「私も大好きだよ…歩…助けてくれてありがとう…さようなら…」
そして、大声を出して泣いた。