第2話 友達
青年は困っていた。すごく困っていた。青年はお人好しが嫌いなのに、
お人好しであるナハト・ドンナーがすごく関わってくるからだ。
だがそれを、ナハト・ドンナーは知らない、何故なら…馬鹿だからだ!
けれど、ナハト・ドンナーはそんなに頭が悪いわけではない。
しかし、鈍感なのである。しかも…自覚が全くない!面倒なタイプだった。
「おーい?リヒト、どうかしたか?俺変なこと言ったか?」
「いや、なんでもない」
「リヒトのなんでもないって大体なんかあるだろ?」
ナハトは、鈍感だ。でも、4年とちょっと一緒にいるだけはあって
言葉が足りない俺の気持ちを理解してくれている。
有難いけどそれでもやっぱり…お人好しは嫌いだ、
「お前には関係のない話だ」
「なぁ俺達《友達》だろ?何かあれば助け合うのが当たり前だろ!」
「友達か…」
ここで友達を辞めてしまえばコイツは俺にはもう関わってこないだろう。
これがコイツの為なんだ。
気づいて欲しいんだお前は優しすぎる。
俺は口下手だから…仕方がないんだ。
「お前は優しいな。でも、迷惑なんだよっ…俺はっ…」
(俺は…俺の目的を達成するために…誰かが犠牲になってほしくないんだ。)
簡単に言えるはずだったなのに…なんで…
ははっ俺って最低だなぁ
青年は理解していた。
自分には言葉より行動のほうがあっていると、
だからこそこんなことになってしまったのだろう。
だが、《友達》である彼はそれを知っている。
「迷惑だろうがなんだろうが…俺はリヒトの《友達》でいるつもりだ。だからそんな心にもないこというなよ…」
そんなナハトのは顔初めてみたような気がする。
悲しくて、泣きそうで、少し呆れているよな顔。
この格差社会で1人でも多くの人が笑顔でいられるように…それが、それだけが、
俺の目的だったのに…馬鹿なのは、俺だったんだな。
青年は後悔した、これまで想いを言葉にするのが苦手なのを言い訳に人と関わることを無意識のうちに避けていたことを。そして、世界にはこんな自分にもに関わってくれる人がいたことを思い出すきっかけとなった。
「ごめん…ナハト。そんな顔させちまって。馬鹿なのは俺だった…」
「分かってくれたなら、大丈夫だ!これからもよろしくな!」
「ありがとうナハト…」
『キーンコーンカーンコーン(チャイムの音)』
「やばいぞリヒト!授業が始まる!」
「あぁそうだな」
「なんでそんなに冷静なんだよっ!」
青年とナハト・ドンナーは急いでいた。
そう、授業に遅れそうだからだ!
「なぁリヒトぉもう少し急いで?なんで呑気に歩いてんの?」
「昨夜飲んだコーヒーに枝豆入れたやつが不味すぎて吐き気が…」
「俺のせいかよ…ごめんってー俺が悪かったよ〜」
「気にするな。大丈夫だ、それに転移魔法を使えばいいだけだからな」
「リヒト、なんでもっと早く言わなかった…」
「お前が馬鹿だからだな。俺はもう行くぞ。〈move〉」
「あっ!ちょっと待てよ〜」
青年が杖を振ると、瑠璃唐草(別名 ネモフィラ)の花弁と共に青年は消えた。
ナハト・ドンナーが青年を追って転移魔法を使おうとしたときだった。
ナハト・ドンナーは気づいてしまった。
「あ…杖、部屋に置いてきた…」