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オカルト研究会

オカケンに夢中

たくさんの方に読んでいただいて、幸せです。

感謝を込めて、『異世界民宿 物見遊山』『リーゼロッテはいつも怒っている』のあんりが現実世界に帰った後の、サイドストーリーを読みきりとして書きました。お時間潰しにでもお読み頂ければ幸いです。

「ねえ猿渡さん、三組のオカケンが呼んでるよ。」

「え?誰それ?なんで?」

「ああ、ちょっとオタクっぽい三組の男子だよ。知らない?」

「知らない。何だろう?」


女子の話の輪から離れて、入口で待っている男子の元へと向かう。

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・えー!なんでぇー?ヤダよ、放課後は用事があるし。」

「・・・・・」

「・・・・・」


なんか揉めているのかな?肩を落として、みるからにガッカリした様子で教室から離れていった男子を目で追う。

呼び出された猿渡さんは、首を傾げて不思議そうな顔で元の話の輪に戻っていった。


「なんだって?」

「なんか、オカルトがどうの、ミステリーがどうの、陰謀論がどうのって言ってて、サークルに勧誘された!」

「オカケンって、オカ研のオカケンでしょ?」

「知ってるの?」

「知ってるよ、同じ中学だったから。昔から怪奇現象とかそういう話が好きだったからね。この高校のオカ研はその界隈では有名らしくて、そのサークルに入りたくてここの高校に来たらしいよ。」

「へー。オカ研って何?」

「そこから?オカルト研究会、略してオカ研。因みに、岡田健一、略してオカケンだよ。」

「そうなんだ。でも無理だよ、オカルト興味ないし。放課後は神社の手伝いあるし。」

「不思議ちゃんって噂でも聞いたんじゃない?あんりの神隠し騒動とか。」

「ああ、そうか。でも私はオカルトには興味ないな。」



はあ・・・健ちゃん、そういうとこ!そういうとこ!

私はオカケンこと岡田健一の幼馴染みで、幼稚園からの友人だ。


健ちゃんは、幼稚園の時は、登園からお弁当の時間までずっと教室にも入らず、蟻の行進を見続けたり、お遊戯の時間も一人座り込んで地面に絵を描いたり、朝露に濡れて輝く蜘蛛の巣を綺麗だと言ってその光具合が無くなるまでその場に佇んでいたりしていた。


お母さんも幼稚園の先生と良く話し合いに来ていたし、健ちゃん自体は穏やかで我儘を言うわけでも、他人に怪我をさせるような乱暴を振るう訳でもないので、おっとりマイペースな性格として扱われていた。


周りの子たちは、健ちゃんの行動を面白そうに笑ったりしていたけれど、それも暫くしたら無くなって、そういう子としてちょっと距離を置いて付き合っていた。


健ちゃんは別にそれに不満も無さそうだったし、いつも図鑑を眺めたり絵を描いたりして楽しそうにしていた。私は家が近所だから、良く健ちゃん家に行って一緒に遊んでいた。


小学生になると、健ちゃんがとても頭が良いことに周りは気付いて、学級委員や児童会に推薦されたりもしたけれど、健ちゃんはそういうのは出来ませんって、普段は見せない頑固さで固辞していた。


相変わらず、本ばかり読んでいたけど、読む本は図鑑からミステリーや超常現象のムック本になっていった。

スポーツも別に出来なくは無いし、相変わらず頭は良いし、高学年になると健ちゃんの良さに気付く女子もチラホラ出てきたけど、健ちゃんは全然そういうのに疎くて、話すことは『竜神がー』とか『アヌンナキがー』とかよりマニアックになって、気の変わるのが早い女子は離れていった。


中学時代はずっと学年一位を取っていて、県内一の進学校に余裕でいけるのに、担任や親の言うことを全く無視して地元のそこそこの高校に進学したのだった。

その理由も『オカケンに入りたいから』という、何とも健ちゃんらしいもので、健ちゃんのお母さんはうちのお母さんに、『幼稚園の時から何も変わってなくて心配、鞠ちゃんも同じ高校で良かった』と言っていたらしい。

健ちゃん自体は、友達が居なくても気にならないようだけど、母親としたら友人関係が築けないと将来的に大丈夫かと心配している、らしかった。

うちのお母さんは『大丈夫だよ、健ちゃん挨拶とか普通にできるし』と言ったらしいが、『それにしたって、遊びに行くでも友達呼ぶでもなく、今はネットばかりやって。問題起こさないか心配』と言っていたらしい。


確かに、健ちゃんは友達とワイワイやるタイプでは無いけど、学校生活ではそれなりに人の輪には入っていた、と思う。中学の修学旅行の時も、『どこに行ってもオカケンがここは~って説明してくれるから楽しかった』って言ってたし。優秀なツアコンとして認識されていたはず。


「健ちゃん、猿渡さんに用があったなら私に言ってくれたら良かったのに。」

放課後、部室で地図を見ていた健ちゃんに声をかけた。


「え?マリ同じクラスだっけ?」

バッと地図から顔を上げて、健ちゃんが声を上げた。


「そうよ、あのね、健ちゃん。猿渡さんの神隠し騒動の話をしたの、私なんだけど。」

私は呆れを声にのせて言う、まあ健ちゃんには伝わらないと思うけど。


「あ、そっか。じゃあマリにお願いしたい。猿渡さんから神隠しの話を聞きたいんだよ。」

健ちゃんが身近に起きた超常現象に期待しているのが見てとれた。


「そういうと思って、聞いてみたんだけど、ほとんど記憶に無いからって断られた。」

そういうと、

「えー、記憶に無いって言うのもホントかなー?」

唇をつき出して、不満げな表情。


「あのね、健ちゃん。女の子が何時間も居なくなったって、ちょっとした醜聞になることがあるの。本人が言いたくない、覚えてないって言ったらそのまま受け止めないとダメだよ。」


「それって、どういうこと?醜聞って何?なんか事件とかあったってこと?」

健ちゃんは相変わらず鈍い。


「何かあったか無かったかは問題じゃないんだってば。変に勘ぐられて余分なこと言われないように、そういったことは極力触れないモノなんだよ。」

私の力説に少し引き気味な顔をして、


「そうなんだ。いや、わかったよ。猿渡さんには謝りに行くよ。」

そう言った。


「いや、そう言うとこよ。あんな教室の入口で近くに居た男子に頼んで呼んでさ、それだけで注目の的だよ。」

「それがなにか問題かい?」

「もういいよ。猿渡さんには私が謝っておいたからもうそっとしておきなさいよ。」

「なぜ、マリが謝るの?」

健ちゃん、不満顔である。

いや、私だって私が謝るの変かな?って一応思ったよ!でも、話の流れで『うちの幼馴染みがスミマセン』的な感じになったんだもん。しょうがないじゃん。


「だいたい、神隠しの何が気になるの?」

私はわざと話を変えて、健ちゃんの前の席に(やっと)座った。


「ああ、あの日、猿渡さんが居なくなった頃、湖の真ん中から凄い水柱が上がって、空を黒い大きな竜のような影が、目撃されているんだよ!あの湖には竜神が眠っているという伝説があるだろう?本当に竜神がいるんじゃないかと思ってさ!猿渡さんの神隠しと同じ日だし、何か関係があるんじゃないかって思ってね。まあ、完全な勘だけどね。」

健ちゃんは、目をキラキラさせて一息で朗々と話した。


最近健ちゃんは、オーパーツだ、宇宙人だ、ということから、この地域には神代の失われて文明があるんじゃないかという、民俗学っぽいアプローチに変わってきた。

その為、地域の図書館で貸し出し不可の歴史書を読んだり、はたまた古事記や日本書紀を読んだりしている。何度もいうが、健ちゃん頭は良いのよ、昔から。


「その影ってどんなモノ?」

「これだよ!」

健ちゃんが自分のスマホで動画を見せてきた。

新月の夜、湖から立ち上る水柱、そして閃光の後、空に浮かぶ黒い影。


「これ、どうしたの?」

「あの晩うちの親も捜索に加わってたんだよ。それで俺も同級生だしって、手伝いで自転車で湖の周りを走っていたらこれに遭遇したわけ。ビックリさ。」

「その話、私聞いてないけど。」

ジトっとした目で健ちゃんを見つめる。


「ああ、一応他の地域でも目撃情報が無いか、聞いてみたんだよ。そしたらけっこう各地で同じような目撃情報があってね。あれは何かという仮説が立たなかったからマリにはまだ話して無かったね。部員にも誰にも話してないよ。」

健ちゃんは私のジト目など全く気にもせず、話続ける。


「でね、猿渡さんの神隠しと発見になにか関係あるんじゃないかって思ってね。」


「じゃあ、猿渡さんちの神社へ行ってみる?きっと彼女は知らないって答えると思うけど。」

「そうだね、そうしよう。」

思いもつかなかった様子の健ちゃんが勢いよく立ち上がった。


それから二人で自転車で猿渡さんちの神社へと向かった。

その神社はこの地域にたくさんある湖の竜神様をお祀りしている神社で、高台から湖を見下ろせる場所にあった。


「あれ?二人どうしたの?」

猿渡さんが、神社の境内を掃き掃除しているところにお邪魔した私たちに気付いて声をかけてくれた。


「あんりちゃんに謝らせようと思って連れてきたわ。」

「ああー、今日は突然教室で呼び出してすみませんでした。」

健ちゃんが頭を下げる。


「ふふふ、いいよ別に。ただ私は神社のお手伝いがあるから部活には参加できないの。」

巫女の格好をしている彼女をみれば、教室で拒否されたのが嘘でないと健ちゃんでもわかる。


「ああ、わかってる。マリにもデリカシーが無いと怒られて、興味本位で余分なことを聞いてしまってゴメン。」

「いいよ、もう。ところで、二人はいつから付き合ってるの!?」


!!!!!!!

私は突然のことに、異常に反応してしまい真っ赤になってしまった。

その顔を健ちゃんに見られたくなくて、そっぽを向いた。


「な、。いや、。え?」

鈍感な健ちゃんもあからさまな言い草にさすがにアタフタしている。


「私はそういうの、気付くタイプなんだよねー(はーと)」

「あ、あんりちゃん。何をいってるの・・・。」

私が小さい声で否定というか非難というか、彼女を窘める。


「え?うちの神社って縁結びの神様をお祀りしているんだよ。二人で来たからそうかと思った!まあ、折角だしお詣りして御神籤でも引いてってよ。」

彼女が商売人のような顔で本堂へと誘う。


「そ、そうだな。折角だしお詣りしていこうか。」

健ちゃんが彼女の後を追っていくので、その後をノロノロとついて行った。


彼女は社務所へと入って行ったので、健ちゃんと二人きりだ。

なんか気まずい。

ここへ来るまでは二人きりなんて意識もしてなかったのに。

顔の赤みは消えたかもしれないけれど、お互いの距離感を図りかねている。


「お詣りしたくないの?マリの家ってそういう宗教だったっけ?」

「は?お詣り別にしたくない訳じゃないけど。」

私は小さい声で答える。


「俺と一緒に縁結びにお詣りするのがイヤなの?」

健ちゃんが無表情な顔を向けて聞いてくる。


え?それどういう意味?その表情って何を意図してるの?


「別にイヤじゃないけど。健ちゃんどうしたの?」

「別にイヤじゃないってどういう意味?」

健ちゃんが抑揚の無い声で聞いてくる。


「どういう意味って、、、、、」

私が黙りこみ下を向いてしまう。

なぜ今こんな話になっているのだろうか?

あれ?猿渡さんに謝罪して、神隠しのあった場所を見に来ただけのはずなのに?

私は健ちゃんに何を責められているのだろう。


「マリ。マリが余りに鈍感で何も気づいてないから、俺もそれに付き合ってきたけれど、そろそろその茶番も終わりにしようと思うんだ。」

徐に健ちゃんが語りだした。


え?鈍感って言った?私のことを健ちゃんが鈍感って言った?


私が顔を上げて、健ちゃんを真っ直ぐに見る。


「マリ、俺はマリだけがずっと好きだよ。これからもずっと一緒に居て。側に居てね。」

健ちゃんが私を見つめて、スゴい良い笑顔で告白して(いって)きた。


「え?え?」

私は戸惑いがちに健ちゃんを見つめる。


「マリは俺のこと、好きだよね。昔からずっと俺のこと好きだもんね。」

健ちゃんがそれは自信に満ちた笑顔で言う。


バババっと顔が熱くなる。身体中の血が沸騰しているみたい。


「マリ。答えて。答えが聞きたい。」

健ちゃんに甘く微笑まれて、私は

「うん。昔から好き。ずっと健ちゃんが好き。」

と、口にした。


「良かった。俺もずっとマリだけが好き。お詣りしよ。」

健ちゃんに手を引かれて、本堂でお詣りして、そのまま猿渡さんのいる社務所へと行った。


「御神籤を二人。」

「はい、四百円です。」

健ちゃんがお金を払ってくれて、私たちは御神籤を引いた。


大吉!健ちゃんも私も。


「良かったね、鞠ちゃん。」

猿渡さんがスゴく良い笑顔で私に言ってきた。

「あ、あ、ええ。うん。良かった、良かった?良かったよ、うん。ありがと。」

なんか釈然としないような気もするけど、私は恋が成就したのだし良かった、と、思う。


「鞠ちゃんも、ああいう執着溺愛系が好きなんだね。けっこう多いんだね、良縁で良かった、良かった。」

猿渡さんがウンウンって頷いて気になるワードを言う。


「鞠ちゃんもって、そういう人って割りといるの?てか、そういう人ってどんな人?」

「割りといるよ、そういう執着ジャンルが好きな女子。そっか、鞠ちゃんもツンデレ気味だもんね。ツンデレはああいう人が好きなんだよね。」

「ツンデレ!私ツンデレじゃないよ。だからああいう人ってどんな人よ!」


「オカケンみたいに小さき頃より一人の女子を俺の!って決めたら、それを貫く重くて暑苦しい愛の人よ。ツンデレじゃない。普段はオカケン?誰ですか?みたいな顔しておいて、部活も趣味も合わせてさ。オカケンを理解して全てを許すの中々大変だと思うけど、え?そう感じない?やっぱそのジャンル好きには合うんだろうね。お似合いだよ、お幸せにね。」

めちゃくちゃ良い笑顔で言われて、私は卒倒しそうだった。


え?私の恋心ってバレてた?てか健ちゃんのことなんて知らなかったでしょうに、なぜそこまで詳しいの?


「なぜって、鞠ちゃんとオカケンって昔から番って呼ばれてるんでしょ?そう聞いてみればオカケンの執念染みた鞠ちゃんへの執着愛なんてすぐにわかるよ。だって、鞠ちゃんが心配だからって高校も一緒のところにしたんでしょ?みんなその愛(私には無理だけど)素敵って言ってたよ。」


「えー!?そんな!高校はオカ研に入りたいからじゃなくて?」

私は羞恥で顔を赤らめながら、さらに聞いた。


「その思春期の男の子の不器用な言い訳を信じちゃう辺り、オカケンが言う通り鞠ちゃん鈍感だよねー。」

そう言うと、キャハキャハと笑っていた。


「あんりちゃん、本当に同い年?スゴい恋愛指南本とか書けそうだよ。」

私は余りの恥ずかしさに身悶えしながら、そう言うのだった。


その後、猿渡さんちの神社で私たちが(やっと)カップルになったという噂が学校で広まり、恋愛成就のお詣りに来る生徒が増え、それがネットでもどんどん広がって行き、あの神社は日本でも有数の縁結び神社として有名になったのはまた、別の話。




お読み頂きましてありがとうございます。

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