20.説得成功?
「それまで!!」
終了の声がする。身体がぐらつき、倒れそうになった所をお父さんが支えてくれる。
「か、かったぁー!!!!わぁーい!!」
お父さんに勝ったのだ。しかも身体強化を三重に使っているお父さんだ。
正直、勝てるとは思っていなかった。今までは身体強化一重で勝率2割あれば良い方だった。
けれど実際、勝てたのだ。
「わぁーい!…ゴフッ」
あ、内蔵治癒してなかった。
「アーティア、治癒全力でお願い。ヤルバー、マジックハーブ頂戴!」
お父さんが私を抱きしめながら、少し震えた声で、言う。
「レイラ、強くなったな。娘の成長は速いと言うが、もはやここまでとは…よく頑張ったな。」
「どうお父さん?安心して送り出せる?」
ここまで力を示したのだ。もちろん送り出せるだろう。
するとお父さんは気まずそうに、
「あ〜…それについてなんだがな…さっきの模擬戦の前にそこの冒険者達と話し合ったんだが、冒険者デビューは1年後にすることにした。」
曰く、人間の社会で生きていく為の知識が足らなすぎるらしい。常識外れな行動をすれば、仲良くなる所か異端として狙われることもあるかもしれないと。
いや、わかるよ?確かにそんなものないけどさ、なんかなぁー!!
ついでに気になったことをリクさんに聞く。
「そういえば、リクさん。」
「ん、どうした?」
「今の私って冒険者のランクだとどこら辺になるんですかね?C級辺りですかね?」
今の実力でDやF級だと、さすがに心が折れそうな気がした。
「あー…ガイルさん、でいいのかな。少し話したいことが…」
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
【side:リク】
ガイルさんを呼ぶ。
「それで話したいことって言うのは?」
「レイラさんについてなんだが…彼女を冒険者のランクで表すと、既にA級を超えているんだ。」
先程の闘い、目で追うだけで精一杯であり細かい所までは分からなかったが、それでもガイルさんは牛頭族としてA-、知性・技術・魔法を含めたらAとA+の中間、さらに魔法の多重詠唱、これでA+の上位クラスにまで入るだろう。
冒険者のランクは、信頼や実績もあるが、1番は倒せるモンスターの強さだ。
仮にパーティを組んでBの強さのモンスターを討伐できるなら、1人1人のランクはB級となる。
しかし、単独でB級を討伐したのなら、ワンランク上のB+級となる。
これにより、レイラさんは既にA級を超えている。
「うーむ…この事実をレイラに伝えれば、慢心を招くかもしれない、か。」
「どうします…?」
正直、伝えない方が良いと思う。今の彼女には常識が足りなさすぎる。最後の腕を犠牲にした攻撃など、常識外れすぎるし、その後の腕の治癒?もはやあれは再生の域だろうか。そんなことをしていれば、人智を超えた化け物、異端として認知されるだろう。
冒険者になるのを1年後にして本当に良かったと思う。1年あれば最低限の常識を教えることくらいは出来るはずだ。
「それと、もう一つ。彼女がここから先冒険者として生活するのなら、多重詠唱は基本的に使わないようにさせます。」
「なぜだ?あれはかなり便利だぞ。」
「多重詠唱が使える人間は現在最低でもA級です。冒険者として初心者の彼女が使えば変な注目を浴びることになるでしょう。」
その後も人間社会においてしてはいけないこと、彼女の常識について確認した。
「レイラを、よろしく頼む。」
ガイルさんが頭を下げる。これではまるで人間ではないか。子供を心配し、託す人に頭を下げ、子が幸せに育つことを祈る。きっと心中では自分が育てたいのだろう。だが、それができない。そう理解して、理解していても難しい心の整理を彼はやってのけたのだ。娘を第一に考え続ける素晴らしい親だと、そう分かってしまう。
「はい、任せて下さい。」
だからこそ、自分も本気でやろう。彼に恥じる自分にならないように。託して良かったと思えるように。




