02.赤子の育てかた(前編)
{さて、レイラをどうする?}
俺達はこの子を拾ってしまった、捨てれば死の未来しか待っていなかったとはいえ、魔物が人間を拾ったのだ。ならば責任も持って育てなければいけない。
{どうする、とは?}
{そりゃ、どう育てていくかだろうが。}
{それはさすがに早すぎるんじゃないか?3歳くらいになってレイラがやりたいことをやらせればいいじゃないか。}
アレンはきっとレイラを魔物の子と同じように考えているんだろう。
{たしかにレイラのやりたいことをやらせたい、だが人間族は脆い。特に赤子なんて直ぐに死ぬ。おまけに俺達全員子育ての経験なんかねぇんだ。今からレイラがどんな子に育つか予想して準備しねぇと、何かあった時に慌てふためいて取り返しのつかないことになるだろ。}
良くも悪くもここに人間族は居ない、レイラが人間族である以上、いつかは人間族とも関わることになるだろう。ゆえに、自分達も人間族について学ばなければならない。
{たしかに、そうだね。レイラを魔物の子と同じ感覚で見ていたよ。}
{わかったなら、あいつらを連れてこい。}
アレンが辺りを見渡すと、赤子を上にあげて遊んでいるリリーとヤルバが居た。
{それー!たかいたかーい!!}
{次は儂にもやらせてくれんかのう!}
上に持ち上げられる時の感覚が楽しいのか、レイラは満点の笑顔ではしゃいでいる。うん、可愛い。
{何をしているんだあいつらは…}
アレンはため息をつきながら言った。そうしてリリーに近ずいて、
{これからレイラをどう育てるか話し合うから、遊ぶのは程々にして案を考えてくれ。…いいなぁ、僕も持ち上げたい…}
アレン、最後に本音漏れてるぞ。
{確かに…また後でね、レイラちゃん!}
{この子は将来どうなるんかのぉ…}
リリーとヤルバがレイラを籠に戻し、案を考えながら歩いてくる。
{とりあえず、素質を確認しない?}
{たしかに、それによって育てかたも変わるもんね。}
{それじゃあヤルバ、倉庫から鑑定機持ってきてよ。}
{あの機械重いから老体には堪えるわ…ユメ、手伝ってくれ。}
そう言ってヤルバはユメの手を引っ張っていく。
鑑定機は魔力の属性、魔力の成長率、現在の魔力量が測定出来る。ここ数年は使っておらず、倉庫に眠っているがヤルバがメンテナンスはしているし、まだ使えるだろう。
{レイラちゃんはどんな素質持ってるかなー?どの属性になるか予想しようよ!}
{うーん、水じゃないか?レイラは持ち上げた時に無意識だろうけど重心を動かして安定するように動いていたし。}
{いやそれ関係ないだろ。}
体重移動が水属性の素質なんて、冒険者は全員水属性の素質があることになってしまう。
{いや関係あるね、あの子は水属性の適正がある!}
{それらしい理由言ってるけど、あんたがレイラちゃんに魔法教えたいだけでしょ。}
{なんか文句あるかい!?良いじゃないか君たちはレイラを抱っこできて!それすら出来ないんだぞ?魔法くらい教えてあげたいんだよ!}
…なんで俺を睨む?嫉妬を向けるのはリリーに対してだろ。
明らかなとばっちりである。
{成長したらレイラも怖がらないだろ。}
{それに成長した姿を考えてみなさいよ!風属性なら舞いの様に魔法を使うレイラになるのよ!}
{それを言うなら水属性だって神秘的な光景と水の滴るレイラだぞ!}
{それはお前らの持つ属性だろうが…}
{逆に聞くけど、ガイルはなんの属性が良いの?}
レイラに合う属性か…利便性を考えるなら火か水だな…移動の面なら風も良いかもしれない。
{うーん…強いて挙げるなら火だな。}
{ガイルも自分の属性じゃん!!}
{お前らみたいに変な妄想膨らましてねぇよ。利便性を考えろ、火なら野営がしやすくなるし、水なら飲み水を自由に確保出来る。移動なら風で速く目的地に着くことが出来る。}
{まぁレイラの素質がどんなものであったとしても俺たちのやることは変わらないし、1番大事なのはレイラが幸せに生きることだ。}
そのためならレイラの素質が何属性なんか、些細な問題である。
{ガイルがマトモなこと言ってる…親バカだね。}
{もう既に重度の親バカだよね。}
{お前ら喧嘩売ってんのか?}
魔力の属性について
全部で7種類(無、火、水、土、風、光、闇)
無、光、闇を除く4属性が一般的な属性として扱われる。
〔無〕:魔力を持つ者全員が使える。純粋な魔力そのものを使用する。
〔火〕:4属性で1番使える者が多い。炎や熱を操る。
〔水〕:水や冷気を操る。汎用性が高く、工夫しやすい。
〔土〕:自然界に存在する植物や地面、金属を操る。
〔風〕:4属性で1番使える者が少ない。空気を操る。
〔光〕:勇者のみが使えるという魔法。魔物やモンスターに対し威力が上がる。闇魔法と対を成す。
〔闇〕:魔王や1部の魔物のみが扱える魔法。光魔法と対を成す。
純粋な魔力→4属性魔法
勇者⇄魔王
的なイメージです。