12.レイラのピクニック(後編)
うーん…
さっきからアーティアを振ってるんだけどなんか見た目に合わないんだよね。剣なのにそこら辺の木の棒みたいに振れるからかな?
{ねぇねぇ、アーティアって剣なんだよね?なんで私でも振れるくらい軽いの?}
『マスターの筋力などに合わせて最も振りやすい重さになるよう魔力で調整しています。』
へぇー!使用者に優しい設計!
『切れ味や強度も魔力で調整していますので魔力量を調整すれば様々な使い方ができます。』
なのに錆びるまで使われなかったんだ…昔の人って見る目が無いね!
どっかで試し斬り出来ないかなー…そこら辺の木で試すか。
{ちょっとそこら辺の木で切れ味試して来るねー。}
えーっと、アーティアに魔力を込めて…意外と難しいなこれ。魔力を押し出す感じで…おっ!いけた!
後はこれを木に向かって振る!
スパッ!!
おぉー凄い切れ味!
でも今のだけで魔力3割くらい持ってかれたんだけど…魔力消費凄すぎない?
{アーティア〜何とか出来ないの?}
『マスターの総魔力量を増やすことを推奨します。』
{ですよね…}
というか私の総魔力量ってどれくらいなんだろ。一振りで3割使うってことはめちゃくちゃ少ないのかな…
頑張って増やそ。
{はー…どうやって増やそうかな。}
そんなことを考えていると、さっきの木から何かが落ちてくる。
白くて丸っこいあの体格は…!
{『フォレストラビット』だー!!}
数少ないダンジョンの中に入ってくるモンスター!私の友達!あだ名はフォレラビちゃん。
えへへ…今日もモフモフしてやる…
そう思いながら近ずいた瞬間、何故か身体が動かなくなる。
何かが違う。
好奇心に溢れ、お菓子を上げれば喜んでぴょんぴょん跳ねるフォレラビちゃんじゃない。目を合わせれば、殺意に満ちた捕食者の目。
{ヒッ…!}
いつもの栗色とはまったく違う血のように赤い眼、それを見た瞬間身体が固まる。
逃げろ、そう本能が警告する。
『マスター!?このモンスターは狂乱しています!』
狂乱…?なにがなんだか分からなかった。身体は直感で動いたのだろう。
気づけば私はアーティアでフォレストラビットの噛みつきを防いでいた。
いつもはお菓子を頬張る口は、肉を喰らおうと開き、涎が溢れ出す。
{レイラー!!}
私を呼ぶ声がする、きっとアレンお兄ちゃんだろう。
でもその声は遠い。
目の前のフォレストラビットはただ私を喰らう、そのためだけに行動する。さっき防げたのはまぐれだ、次は喰われる。そんな予感がした。
{し、死にたくない…!}
そう思ってアーティアを振れば、フォレストラビットは離れ、突撃の姿勢をとった。
『死』
より濃密に、それを感じてしまい身体から力が抜けて尻もちをついてしまう。
私が抵抗出来ないことを感じたのだろう、フォレストラビットが突撃してくる。
死の直前だからか、アーティアの力なのか、フォレストラビットが遅くなる。
逃げようと思ったけれど、私の身体は信じられないほど遅く、動かない。
きっと全てが遅くなっている。そう理解した私はこの残された時間でみんなを思い出す。
お父さんは心配するかなぁ、お母さんは怒るかなぁ、リリーお姉ちゃんは…どうなるんだろう、アレンお兄ちゃん、ヤルバおじいちゃん…ごめんね、フーちゃん、最後まで一緒に居られなくて。
その瞬間、遅くなった世界で、それでも速い大剣が飛んできてフォレストラビットの胴体を真っ二つにする。
けれどその顔は止まらず、私を喰らおうとする。
ぐんと腕が引っ張られる感覚がした。同時に身体から残り少ない魔力が全て持っていかれる。
フォレストラビットの顔は半分に分かれ、私の顔の左右を通り過ぎる。
{な、なにが…?}
そう口にした瞬間、とてつもない頭痛に襲われる。
そこで私の意識は途切れた。




