寂しい夜のこと
本作品は「半透明の守護者 硝子と少女」の続編です。
一応、前作を読んでいなくても読めるようになっていますが、もしも興味がおありでしたらそちらも読んでいただけると嬉しいです。
なお、シリーズ一作目のURLはこちらです!
https://ncode.syosetu.com/n7748il/
また、本作は一度きりの良いところで完結していますが、三月二十八日より、夏休みの続編が出る予定です。
よろしければ読んでみてください。
星明りが一つも届かない夜。
遅い時間には似つかわしくない、小学生くらいの少年がひっそりと家を飛び出した。
少年は、上の方が真っ黒で下の方へいくほど白っぽくなっていく、グラデーション掛かった珍しい白衣を着ており、癖のない黒髪は男の子にしては随分と長い。
裾がふんわりと広がるワンピースのような白衣も相まって、少年は女の子のような見た目をしていた。
ガチャリと音を立てて施錠したのだが、家族は誰も気が付かない。
中身のあまり入っていないリュックサックを背負い直して、首から下げた鍵を胸元にしまい込む。
小さく震える口からこぼれる嗚咽を、必死に噛んで飲み込んだ。
真っ黒い瞳から滲んでポロポロと溢れる涙を長袖で拭って、俯きがちに歩いて行く。
深夜ではないので、町には、ちらほらと人通りがある。
部活帰りの高校生や仕事終わりの会社員などとすれ違った。
だが、泣いている少年に話しかける者はいなかった。
少年はバスに飛び乗った。
満天の星空のように輝く町の明かりを置き去りにして、バスはどこまでも進んで行く。
少年はそれを、窓から眺めていた。