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プロローグ

青春します。

でも異常な世界も垣間見えます。

 どうしても抑えられない怒りがある。

 その感情に身を任せる事は破滅に近づくと自分でも理解していた。

 そして……理性で抑えつけるには無理だとも理解していた。

 だけど、僕は狂うほどの“憤怒”を消化する術を知っている。


 日常で溜まる“憤怒”を消化する為に夜の街で探すのだ。

 暴力を与えるに必要なモノたちを――


 そっちが本来の自分だと思い知らされる。少しずつ感情と自分の境が曖昧になって行くが、それでもいつかは終わると信じていた。

 だから目が赤い時だけ……“彼女”の事はとても鬱陶しく感じた――





 

「それで?」


 人数は五人。場所は悲鳴が他には届かない建設途中のビル。

 男達は各々が鉄パイプやナイフなどの殺傷できる武器を持ち、さっきまで(・・・・・)彼を囲んでいた。


「ひいっ。た、助けて!」


 もとの顔が分からない程に腫れた顔になった襲撃の首謀者が懇願する。


「足か腕」

「へ?」

「君たちの懇願はこの場しのぎだ。殺さない限り何度でも絡んで来るよね?」

「そ、そんなことはしない! 神に誓う!」

「嘘は良くないよ」


 彼は落ちているナイフを拾う。


「じゃあ、こうしよう。周りで気を失っている君の友達。彼ら全員の足か腕のどちらかを折ってくれたら見逃そう」

「そ、そんなこと――」

「出来ない? それはおかしいな。君は僕に複数で襲いかかったよね? しかも武器を持ってる。これで刺されたり殴られると人は死ぬんだよ?」


 彼はナイフを持って男の前に目線を合わせる様にしゃがみ、切っ先を向ける。同時に人のモノとは思えない“赤い眼”が見つめてくる。


「人を殺す気概を持っていた。それは凄く勇気がいる行為だ。僕には持てない。だから、骨を折るくらいは簡単でしょ?」


 男はようやく理解した。コイツはイカれてる。関わるべきじゃなかったと――

 『レッドアイ』。一年前からこの街に現れ出した厄ネタの通り名である。


「やれやれ。しょうがない、君達を見逃すよ」

「本当か?!」


 突然の心変わりに男の眼に希望が現れる。


「その代わり」


 と、彼は男の目の前にナイフを突き立てた。


「見逃す人数一人につき、君の指を一本貰う」

「は、はぁ?!」

「そんなに嬉しそうにしないでよ。指一本で友達の骨を救えるんだ。ほら、安いものでしょ?」


 あ、ありえない。明らかに狂ってる――


「……じゃあ、君と彼らとで計5本。足の指の方がいいかな? 足の小指は無くても困らないから二人分は得したね」

「ま、待ってくれ!」


 足の指を目掛けてナイフを振り上げた彼を制止する様に男は声を上げる。


「待つよ。で? どうするの?」


 男は震えながら立ち上がった。


「ああ、別に逃げてもいいよ。君の代わりは彼らにやってもらうし、君の分は後日、取立てに行く」


 男は背に“赤い眼”がじっと見つめているのを感じている。

 逃げることも出来ない。男は気を失っている仲間へ近づく。


「足よりも腕がいいよ。ほら、歩けないと不便でしょ?」






 夜の闇の中で暴力だけが、世界の真実だと一層認識した。

 それだけは絶対に自分を裏切らない。だから、僕はこの“怒り”を暴力で消化している。

 キッカケは何でもいい。

 どんな時代になっても暴力が無くならないのなら、それに磨きをかけることは間違いではないだろう。


 夜を歩く。宛もなく、ふらふらと。

 視界の端には様々な情報が入り、今日も品定めをする。

 こんな事は長くは続かない。僕以外なら――






 『レッドアイ』に関して。

 犠牲者全員がまともな状態ではない。

 肉体的にも、精神的にも、事情聴取は不可能とされる。

 唯一共通している証言は全員が“赤い眼”に酷く脅えているという事だった。

 故に捜査は遅々として進まず、『ブラック』と同様の厄ネタとして処理すると署内では決定された。


 四季彩市警察署、特殊捜査課ファイルより。

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