FILE No.005 大妖幻
「一体どうなってるんだ(怒)!?」
中央合同庁舎第2号館の地下9階の最深部には、通称“フカシ係”と呼ばれる部署が、狭苦しい物置の中でひひっそりと存在していた。
この物置には、煤けた事務机と椅子が3セット、窮屈そうに並べられているのだが、部屋の大半はどこの物とも分からない大量の備品や家具で埋め尽くされていた。
だが、そんな狭い空間の中で、一際異彩を放っているのが係長席であった。
重厚な木材と上質な革で作られたであろうその机と椅子は、場違いなほど高級感があり、薄汚れてはいるものの、周囲のガラクタとは一線を画していたのだ。
時刻は午前8時30分。ペーパーレス化が進む中で、その立派な机の上では、どこか異様な光景が広がっていた。
その机の上には、まるで雪のように膨大な紙ファイルが山積みとなっており、机が悲鳴を上げているかのようであった。
この奇妙な光景を、朝っぱらから目の当たりにしているのは、フカシ係の係長に着任してまだ日の浅い陽無坂警部であった。
彼は到着するや否や、この部屋に足を踏み入れた瞬間、手に持っていた鞄を床に滑り落とすと、ただ呆然とその光景を見つめ続けた。
この時、周囲の空気だけがゆっくりと流れ、彼の時間は完全に止まっていた。
固まって動かない陽無坂警部に、毎朝1番で物置にやってくる、嘱託職員の磊田係長補佐[元係長]が、明るい声で挨拶をする。
「あ、陽無坂係長、おはようさんです。」
磊田嘱託職員は今、物置内のスペース拡張に精を出しており、黙々と整理整頓を続けていたのであった。
「あ…おはようございます。磊田さん、朝っぱらから何なさってるんですか?」
「あぁ〜私のね…。あの〜デスクがね…。まぁ〜係長降格と共に無くなったワケだがらね…。私の新しいデスクを置くためのスペースの確保と…。デスクの代わりになる物を現在物色中なんだよね。」
磊田嘱託職員は手を止める事なく、元気よく作業を続けていた。
「はぁ〜なるほど、そうなんですねぇ…。所で磊田さん、このファイルの山、何かご存知ないですか?」
陽無坂警部が山となったファイルを指差すと、磊田嘱託職員はチラリと振り返って答えた。
「あぁ〜ソレね。そのファイルの山はデータ化が完了した未解決事件のファイル、通称『非Aファイル』だね。」
「データ化が終わった…?非Aファイル…?何ですかソレ?」
陽無坂警部は眉をひそめ、その聞き慣れない言葉に疑問を抱いた。
西暦203X年、警察庁では書類や記録のデジタル化が推進され、新規の事件資料や捜査報告書は、全て電子データとして管理•記録されているのだが、過去の膨大な資料群は、未だデジタル化の途上にあった…。
「そこに積み上げられたファイルは、うちの事案でない事が確定し、かつデータ化が完了した未解決事件の捜査ファイル…。それを最後に廃棄するのが、フカシ係係長の仕事なんだよね。」
磊田嘱託職員は、陽無坂警部にそう説明した。
「えっ?あぁ…そうなんですね?」
陽無坂警部は、書類の山に圧倒されながら返事をした。
「まぁ〜今はデジタルの時代だからねぇ。紙媒体の捜査資料は時代錯誤なだけだし、特に未解決事件の資料は、いつまでも場所だけ取るから困るんだってさ。それに、うち警察庁でしょ?日本全国の未解決事件が対象だから、その量がもう桁違いなんだよね。警視庁だけでも相当な数なのに…。」
「なるほど…。しかし、この部署に未解決事件のデータ化業務があるとは、全く知りませんでした(汗)。」
「陽無坂係長、貴方も直に分かりますよ。このデータ化こそが、本来のうちの業務だと言っても、過言じゃないという事がね。」
磊田嘱託職員が、ファイルの山に視線を落とした。
「本来の業務…ですか?」
「そう。日本全国の未解決事件の中で、未解決の要因に『不可視事案』が絡んでいるとされた事件は、再度、科学的および非科学的な視点で、撤退的に調査するんだけど。その結果、殆どは科学的に立証可能な未解決事件だったって証明され、うちの担当から外れるんだ。」
「まぁ〜一見、不思議に思える出来事も、突き詰めれば何らかの科学的根拠に基づいているのが現実ですからね。」
陽無坂警部は徐に自分のPCを立ち上げると、データ化されたというファイルに、次々とアクセスしていった。
「で、これら全てが…!!なッ…こ…これはッ!!!」
数件のファイルを見ただけだが、その資料の完成度の高さに、陽無坂警部は思わず息を呑む。
それは単なる調査結果の羅列ではなく、未解決の要因や根拠の科学的解明、現象の意図的•偶発的要素の考察、初動捜査の不備や筋読みの誤りまで、全てパズルのように整合的に解き明かされ、当然の帰結として、犯人の特定にまで至る完璧な調査報告書であった。
「この捜査ファイル…あと裏付けさえ取れれば、事件解決じゃ〜ないですか?コレを…?」
陽無坂警部は、興奮を隠せなかった。
「そう、コレと同じ感じモノを焰間君と氷御角君は、ほぼ毎日、最低でも1人1つのスパンで提出してくるよ。まぁ〜こんなに一遍に、いくつも上げて来る事の方が珍しいんだけどね…。」
磊田嘱託職員は、どこか感心した様に頷いていた。
「それでその…。2人は…?」
陽無坂警部は、未だ登庁している気配のない、2人の警部補の所在を尋ねた。
「恐らく、音和代議士行方不明事件の不可視事案調査だろうね…。」
「はぁ〜なるほど…(溜)。」
〈暫く、私に構うな、という事か…。〉
陽無坂警部は、彼女達の意図を察すると、心の中で静かに呟きながら、山積みのファイルを無言で整理し、椅子に深く腰掛けてデジタル捜査資料を改めて丁寧に読み込んでいった。
「でも確かに、こんなにあったんじゃ〜かなり時間がかかるなぁ〜。」
そう、溜息混じりに呟きながら…。
―――――
朝の柔らかな光が静かな住宅街を包み込む。
まだ人通りの少ない小さな公園の片隅で、焰間警部補は大きく深呼吸しながら、片足を高く跳ね上げては大地を力強く踏みしめていた。
「ろすこい。」
カラフルなチュッパチャプスを咥えたままの掛け声は、どこか舌足らずで、しかし彼女の表情は清々しく、朝のルーティンである四股を今日も活気に満ちて踏み続けている。
一方、ブランコに深く腰掛けている氷御角警部補は、明らかに疲労の色を隠せていなかった。
彼女はチョコレートの香りが漂うポッキーを、ゆっくりと味わいながら齧っている。
「あ〜久々に徹夜した〜っ。今日の報告書の提出がマジ山場だった〜。ってか哪由香!そこでドスンドスンやめてくんない。アンタも徹夜明けなんじゃねぇ〜の?」
焰間警部補はまったく動きを止めず、再び片足を高く跳ね上げる。
「ううん。フチ、ヘフヤひてへんひ。ろすこい。」
「へっ?……(言語解析中)……って何で、アンタ徹夜してねぇ〜の?」
「何れっへひわへへほなぁ〜。ろすこい。」
氷御角警部補は諦めの溜息を吐き、勢いよくブランコから飛び降りると、焰間警部補の元へ真っ直ぐ歩み寄る。
そして、有無を言わせず彼女の口からチュッパチャプスを抜き取った。
「で、何て?」
焰間警部補は肩を竦めながら、どこか呆れた様に笑い、チュッパチャプスを奪い返す。
「せやから、あの辺、思た以上に妖幻い〜ひんかったんよ。ほんでなぁ、ウチ途中で飽きても〜て、ネットカフェ行ってたんよね〜。」
氷御角警部補は思わず額に手を当てる。徹夜明けの疲労が一気に押し寄せてきたのだ。
それでも、焰間警部補は黙々と四股を踏み続けている。
「はぁ〜!?って、どすこいすな!今、ちょっと徹夜明けでダルいんだから…! にしても、ネットカフェって…!?テメざけんなッ!!」
焰間警部補は、悪びれる様子もなく、ニヤリと笑みを浮かべた。
「清良ってそういうトコ、意外と韶和の刑事魂感じさせるん好きやよね〜。磊田係長でもあるまいし。いや、あん人でも韶和とちゃうか…。せやけど、お主、足で情報稼ぐみたいな頑張りまでは、見せてへんのやろ?」
その言葉に、氷御角警部補は眉をひそめる。
確かに、自分もソコまで歩き回るタイプではない。だが、ソレを指摘されるのは少し癪だったのだ。
「まぁ〜確かに、あんまり歩いてねぇ〜けど。靴底擦り減らすのめんどいし。けど、ボクはちゃ〜んと一晩中、話は聞いて来たわ〜っ(怒)!!」
氷御角警部補は右手を高く掲げると、焰間警部補の頭頂部目掛けて手刀を振り下ろす。
しかし、焰間警部補は涼しい顔で、その手刀を真剣白刃取りの要領で、ガッシリと両手で受け止めた。
「ほんで、一晩中聞き込みした結果、報われたん?どうせ、ろくな証言無かったんちゃうん?」
氷御角警部補の手刀をしっかりと掴んだまま、焰間警部補は挑発的な笑みを向ける。
「確かに、ろくな証言はなかったけど…。ボクは無いなら無いで、ちゃんと仕込みはしてるっつ〜の!」
〈ある意味、その所為で徹夜になったんだけどね…。〉
「それ言うねやったら、ウチも寝るためだけにネットカフェ行ったんとちゃうけど(誇)!」
「だから、テメェ〜は寝てんじゃねぇ〜よ!」
「ウチは、ちょい効率よろしゅうしてるだけやし。オマケにSNS上の気になる噂、ちゃ〜んとゲットしてるんやで(悦)。」
「はぁ?噂?どんな?」
焰間警部補はしたり顔で、ゲットした情報が載っているサイトをスマホで検索し、それを氷御角警部補に見せた。
「これって…?」
「何や、如何にもって感じちゃう?」
「まぁ〜確かにコレは…。如何にもだ〜ねぇ〜。」
「ちょい。突いてみよか?」
「み〜る(笑)♡」
朝の8時台の公園で、地雷系パンクファッションの女子が2人、ほくそ笑みながらスマホを覗き込んでいる姿は、傍目から見ると、かなり怪しく不気味な雰囲気を醸し出していた。
そのため通勤や登校で、この公園を横切る人々は皆、彼女達を見て見ぬフリをしているのだった…。
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2人は公園からほど近いカフェに入ると、冷たい抹茶オーレと熱いアメリカンを注文した。
僅かな安らぎをもたらすブレイクタイムだが、2人の心は先ほど目にした異様なSNSサイトに囚われ続けていた。
そのサイトは、有名人や著名人を標的にした、擬似的な『弾劾裁判』と称する場となっており、公開の場で一方的に糾弾する“リンチ会場”と化していた。
そんな無数の罵詈雑言が、個々の有名著名人に浴びせられる中を見て行くと…。
悪徳政治家として名高い音和金継の名前も、しっかりソコに刻まれていた。
現在、行方不明中とされている彼だが、このサイト内では既に『死刑判決』が下されていた。
その"刑の執行内容"を見た瞬間、2人の背筋は凍り付く…。
それは"数々の悪事を揉み消した罪"により"この世から存在ごとdeleteする"というモノであったからだ。
コレはまるで、音和代議士の失踪を暗示するかの様な文言であった。
その上、一般には伏せられている彼の『右手』に関する記述まであった。
それによると、"権威に執着する者の象徴として、音和自身を暗示するために残す“と記され、事件現場を想起させるには余りにも具体的すぎた。
これは最早、偶然では済まされない。結果的に、コノ書き込みは犯行予告とも取れる内容であった。
現場に残された右手が、音和のモノかどうかは本質ではない。
今、最も優先すべきは、この書き込みを行った人物に接触する事が、事案解決の唯一の手掛かりであった。
2人はそれぞれ飲み物に口を運び、沈黙の中で死刑執行内容を記した張本人との接触を模索していた。
氷御角警部補は、使い込まれた古いノートPCをバッグから取り出すと、その様子を見た焰間警部補が不思議そうに問い掛ける。
「スマホでええんちゃうん?」
氷御角警部補は、薄く笑いながら答えた。
「いいの!こ〜いうのは、雰囲気が大事だから。」
彼女は右手だけで器用にノートPCを操作し、あっという間に弾劾疑似法廷のサイトへとアクセスした。
そして、画面を見つめながら呟く。
「さぁ〜てと、音和金継の執行内容を書き込んだのは…。@QB574か…。コイツにっと…。」
画面には、投稿が次々と表示されていく…。
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:音和金継失踪、これって刑執行フラグか?www(^ω^)
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氷御角警部補は、不適な笑みを浮かべながら言った。
「さ〜てと、喰いついてこいや〜!」
焰間警部補が呆れ顔で返す。
「つ〜か、こないな時間に食い付くん?」
「イヤイヤ、今の時間はコーヒータイムが主目的だし。」
「せやね…。」
焰間警部補が、コーヒーを啜りながら同意して数秒後、画面に新たな投稿が現れる。
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:処刑人、降臨キタコレwww
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氷御角警部補は興奮気味に叫ぶ。
「キタ〜ッ。てか早ッ!」
「分かった。分かったから、早よ。」
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:処刑人降臨ってことは、ココで死刑確定した奴ら全員処刑人の餌食確定かよwww コワすぎワロタ(((( ;゜Д゜))))
:全員が処刑人に執行されるのって、やっぱ大罪犯したからなん?|Д´)ノ DEも実際、処刑人の気分次第説もあるよなwww
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焰間は、思わず眉をひそめる。
「うわっ。ウチ、こんなんあかんわ。清良、お主、よう、こんなんスラスラ打てるなぁ〜。ウチ、こんなん理解不能や。全部、お主に託すわ。」
氷御角警部補は、自信満々に笑いながら親指を立てる。
「あいよッ!任せなっ(得)!」
彼女の手元で会話が続き、処刑人についての議論が白熱していく…。
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:処刑人の刑の執行基準が気分次第?て事は、音和金継は気分で刑を執行された?Σ(・∀・;)
:そこは恐らく、社会に対するおっ(^ω^)害悪の、多寡DEぢゃね?
:害悪の多寡?この場合の害悪って、誰の基準によるモノ?処刑人のモノ?
:処刑人ぢゃなくて世間の、基準かな。多分 ここDE死刑が確定したお罪人の、中には、素逝や口が悪い(゜д゜( ::: * ::: ) =3 ブッだけの、社会的害悪の、少ねーよwwwwww罪人も含まれるから、その、程度の、罪人の、魂は穢れが少ねーよwwwwwwし、奪っても処刑人には何の、旨味も無EらしEお
:ていうか君、処刑人の知り合い?
:否 単なる崇拝者ww。゜m9(゜^∀^゜)゜。ブハハハハハハハハ !!
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投稿者とのやり取りを見守りながら、氷御角警部補はぼそりと呟く。
「コイツ、処刑人の事どこまで知ってんだ?」
焰間警部補は画面から目を離さず、冷静に助言する。
「ほな。ちょいカマ掛けてみ。」
「だねっとッ!!」
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:ちなみに処刑人は、次に誰の刑を執行する(^ω^)?
:特定ホント o(゜Д゜)っ モムーリ!DEも、世間を騒つかせる凶悪犯罪者の、可能性が大
:まぁ〜そうだよね。ところで処刑人って普通の人間?
:違うん●ーーー!お。普段は人間の、皮を被ってるけど!
(( ゜Д゜)_σ異議あり!?)、人間をギザ越したお存在だお
:もしかして神?だから降臨?
:ネ申..._φ(゜∀゜ )アヒャとは違うん●ーーー!DEも、大Eなる存在 大妖幻だお
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「大妖幻て…。コイツ、こんな用語まで知ってんの!?」
「取り敢えず、その大妖幻、何て言うんやろか?」
「う〜ん。じゃ〜こういう聞き方で…ど!」
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: 大妖幻?ちなみに何て名前?流石にそこまでは知らない(´・ω・`)?
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「これ…。ウチなら知っとっても、絶対教えへんけど(笑)。」
「はぁ!怒)!」
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:知ってるお 多分
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「えっ?知ってる!?」
「せやけど、多分いうんは何やろか…?」
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:多分って何?本当に知ってる?それとも噂知ってるだけ━━━(゜A゜)━━━??????
:本物かどうん●ーーー!かが分からねーよwwwwww DEも本人は、 大高頭四郎木村丸を名乗ってるお
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--●大高頭四郎木村丸●-------------------------------------
伝承に名を刻む、冷酷なる鬼の棟梁。
動乱の時代、数多の戦場に現れ、敵を容赦なく屠った非情の処刑人と語り継がれている。
その存在は伝説的であり、死んだという噂が流れる度に、突如として戦場に姿を現し、鬼神の如き戦果を挙げたとされる。
本質は戦闘狂そのもので、戦場があると聞けば必ず赴き、敵には一切の情けをかけなかった。
敵の強弱や立場を問わず、純粋な闘争への渇望に突き動かされ、戦場で相対した瞬間、敵と認識し、その命を刈り取った。
目撃情報は多いものの、遭遇したが最後、生き残る事は極めて困難なため、外見に関する記録はかなり少ない。
僅かに伝わる記述によれば、大きな目と獣の様な凶悪な顔つきを持ち、その巨躯は4mを超え、その人間離れした怪力を誇っていたとも伝えられる。
[※妖文堂書院刊《妖幻大全輯 第九篇》より抜粋]
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「大高頭四郎木村丸ねぇ…。仮に本物なら、飢䰦の使役くらいは余裕のヨッちゃんだよね。でも、ソイツが最後に目撃されたのって確か…。」
「幕末やね。せやけどまぁ〜木村丸がホンマもんかどうかはええとして、妖疑者は処刑人こと自称木村丸なんちゃうの?」
「だね。とりま、この木村丸情報を手繰ってみっかね。」
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:大高頭四郎木村丸って、鬼伝説で有名なあの木村丸だよね?今、どんな人間の皮被ってるんだろう?
:タソ♪|彡サッきから何?(´・д・`)ソンナーに処刑人に興味あるあるwwwの
:あるよ 法で裁けない音和金継を裁いたんなら、尚さらでしょ?てか、最早、新時代の神でしょ だから、君も崇拝してるんじゃないの?!(;゜Д゜) wwwwww
:そーだね!!最早、彼はネ申..._φ(゜∀゜ )アヒャかもね しかも、皇大に首席DE合格するおっ(^ω^)ほど頭脳明晰な人間の、皮被ってる噂だお
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「ほぉ〜ボクと同じっすかぁ…。て事は、ちったぁ〜骨のあるヤツて事か(笑)?」
「さぁ〜どやろね?ピンキリちゃう。ココにおる首席はん、漢字ぎょうさん知らへんしね(嘲)。」
「はぁ(睨)!?」
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:皇大ってスゴ!学業と処刑人の両立も可能な感じかな?
:そうん●ーーー!なんぢゃねーよwwwwww多分
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「ハイ!今の答えで、現役皇大生の確率濃厚ッ!」
「せやねんけど、このチャット相手って一体何者なんやろ?」
「………知らねぇ〜し!とりま、在学中の文系理系全ての首席合格者手繰ってみよう。吉と出るか、凶と出るかは当たってからだし。」
「せやね………。」
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:@QB574さん、色々教えてくれてありがとうヽ(´ー`)ノク
:どうん●ーーー!Σ(゜Д゜ υ) イタ!!しまシツェ!(;゜Д゜)こんな程度DE(・∀・)イイ!!の━━━(゜A゜)━━━??????某なら、EつEかなる時DEも話相手になるお
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この発言を受けた焰間•氷御角の両警部補は、そのままネット検索で、皇大首席合格者の情報を調べる事にした。
○本年度合格○
文系首席の『木葉京介』。
理系首席の『革城武』。
○昨年度合格○
文系首席の『土見雅彦』。
理系首席の『瓢田秀』。
○一昨年度合格○
文系首席の『竹常栄一』。
理系首席の『糸山嶺二』。
○一昨昨年度合格○
文系首席の『石宮慎吾』。
理系首席の『金須清美』。
「なるほどなぁ。男が7人、女が1人。確か崇拝者"彼"言うてたよね。」
「うん。言ってた。言ってたんだけど…。」
「何?」
「いや、この一昨昨年度理系の金須清美って子、知ってんだよね〜。へぇ〜この子、首席だったんだぁ〜。」
「何?何かあるん?」
「まぁ〜そんなに親しい関係じゃなかったし、1コ下の同じ理学部だから知ってる程度なんだけど、そんな首席で合格者した〜って雰囲気の子じゃ、なかったんだよねぇ〜。」
「せやけど、見た目って当てにならへんよ。だって清良と同じなんやろう?」
「はぁ?どうゆ〜意味(怒)!?」
「せやけど、見た目って当てにならへんよ。だって清良と同じなんやろう?」
「何で2回言う!怒)!?」
〈けど…何か引っかかるなぁ〜。〉
その後の調査の結果、1人を除いて普通に学生生活を送る大学生である事が裏付けられたのだが…。
残る1人は現在休学中で、音信不通となっていた。
その人物の名は奇しくも、金須清美であった…。