第三話 ガーベラ
「はぁ、はぁ、はぁ」
身体中の傷口から血が流れながら、目の前にいる猛獣を睨む。
リアラとおばあちゃんは、もう逃げきれたかな。
「ぐぎゃあああああ!」
猛獣がこちらに向かって走ってくる。
すぐに短剣を構え、防御に徹する。
猛獣が右足を振り回し、回転しながら襲いかかる。
「くっ、うぅぅぅぅ、きゃあああああ!!」
防御しきれず、10メートルほど後ろに吹っ飛ぶ。
「がはっげほっ!」
右足を食らった箇所に手を当てる。
見ると、そこにはたくさんの血が流れていた。
まずい......死ぬ......これ以上傷つけられたら、死んじゃう......
猛獣は勝ちを確信したのか、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
せっかくここまで生きてきたのに......
猛獣の足音を聞きながら、僕は死を覚悟した。
今まで、死を覚悟したことは沢山あった。
だからもう慣れた、もうこのまま死のう......
ごめん、リアラ......リアラ......
ここで僕はリアラと過ごした日々を思い出す。
一緒に森を探検し、一緒にご飯を食べたり、一緒に寝たり、
そうだ......今までとは違う!今はリアラがいる!
リアラのために、何としてでもこの場を生き抜く!
傷の痛みを感じながら、立ち上がり、短剣を構える。
「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、はぁ、」
僕と猛獣は同時に走り出し、猛獣の爪と僕の短剣が激突しようとしたその瞬間、
「ばしゅん!!」
魔法陣が現れ、猛獣がどこかに消えてしまった。
「な、なんで......」
突然のことに困惑し、短剣が手から滑り落ちると、僕もその場にへたりこんだ。
「いつっ!」
緊張が解け、身体中の痛みを感じ、すぐに治癒魔法をかける。
「そうだ、リアラとおばあちゃんは......」
二人のことが心配になり、すぐに短剣をしまうと、走り出した。
「リアラ!!」
道の真ん中でリアラを見つけ、すぐに駆け寄る。
「リアラ!大丈夫?おばあちゃん......は......」
そこには、頭だけがなく、体だけのおばあちゃんが倒れていた。
「うそ......」
「ごめん......リーバ......ごめん......私......守れなかった......」
リアラは泣きながら、何度も謝った。
僕も膝から崩れ落ち、おばあちゃんの体をじっと見つめていると、目から涙がこぼれ落ちる。
たった二日間しか一緒にいなかったのに、何故かどんどん涙が落ちる。
それからしばらく僕達は一緒にその場で泣いた。めいっぱい泣いた。
「よし、これでいいかな。」
あの後、やっと泣きやみ、私とリーバはおばあちゃんの遺体を家まで連れていった。
家の庭に埋めると、三人で探した四葉のクローバーも一緒に植えた。
そして、二人で手を合わせ、おばあちゃんとその主人があの世で一緒に幸せに暮らしていることを祈った。
「それじゃ、行こうか......」
「うん」
お互いの手を握り、私たちは街へ向かって走り出した。
「ここが、街......」
小さい頃に見てそれ以来だった街は、とても活気に溢れていた。
至るところで屋台が開かれており、道にはたくさんの人が歩いていた。
「すごいや、これが街なんだね!」
「そういえば、リアラは街をテレビとあの時でしか見たこと無かったんだよね。」
私は目を輝かせながら、1番近くの屋台にふらふらと近づいた。
「おう嬢ちゃん!食うかい?儂の自慢のソフトクリーム!おいしいぞ!」
屋台の人が大きい声でそう言うと、私は初めて聞く言葉に期待が溢れた。
「そ、ソフトクリーム?ってやつ、ください!」
「私もお願いします。」
「あいよ、味はなんにする?オススメはバニラだよ!」
「じゃあ、オススメのバニラで!」
「私はチョコで」
二人で別々のものを頼み、屋台の人がソフトクリームを作り始める。
「お待たせぇ!できたぞ!毎度ありー!」
ソフトクリームを受け取り、道の端による。
「こ、これがソフトクリーム......」
「いただきます」
横でリーバがソフトクリームの1番てっぺんを1口食べる。
私もそれを真似し、てっぺんを一口食べる。
「!!おいしいーー!!」
食べた瞬間口の中に冷たさを感じるが、味はまろやかでとても美味しい。
「本当、おいしい......」
リーバは笑を零しながら、二口目を食べる。
私はそれをじっと見てると、リーバがそれに気づく。
「分け合いっ子しようか。」
「!うん!」
リーバが私のソフトクリームを一口食べる。
「あ、バニラっておいしい......」
「でしょでしょー?私もいただきまーす!」
リーバが手に持ってるソフトクリームを一口食べる。
「チョコもおいしいー!」
それから街中の屋台を周り、たくさんの食べ物を分け合いっ子しながら、食べているといつの間にか街の中央まで歩いていた。
「なんかやってるね。」
街の中央には先程食べ歩きをした時とは比べ物にならないほど、たくさんの人がおり、その人たちが見ている方向には一人の人間がいた。
「であるからして」
踏み台に乗り、魔法で大きい声を出しながら、手振り素振りをしている一人の男性がいた。
「選挙だね。」
選挙?
一瞬なんのことかと思ったが、思い出した。
テレビでやってたなぁ。
確か、その国や街の政治を務める人を選ぶってやつ。
「まぁ、僕達はこの街の人間じゃないし、関係ないね。」
「そだね」
人混みの中を通り、今日の宿を探そうとする。
その瞬間、
「バンッ!」
大きい音がし、その方向を振り向くと、さっきまで演説をしてた人が倒れていた。
「え......」
周りがざわめく中、私たちの横を人が大慌てで逃げていくのを見た。
「リアラ!僕はあの人を治癒する!あなたは今の男を追いかけて!!」
突然リーバがそう言い、すぐに倒れた人のところに走っていった。
「え......あれ男の人だったの?」
一瞬疑問が湧いたが、すぐにリーバの言うことを聞き、男の人を追いかけた。




