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DOLL―What can the hand of you save?―  作者: 刹那END
―第2章― 血戦
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Epilogue bridge

 アメリカ 大統領府


 そこには大統領とその補佐官の姿があり、大統領は椅子に座ってノートパソコンの画面を見ながら眉をひそめている。その隣で立っている補佐官は一向に口を開かない大統領に対して言葉を投げかけた。勿論、英語で。

「大統領……これは明らかに“生物兵器禁止条約”に該当するものです。早く、対応をご決断なさらないと、批判を浴びせられる事となりますよ?」

 決断を促される大統領は自らの頭を両手で抱えてみせる。

「……ああ。日本には警告文を送って、早急にウイルスを破棄するように申し立てるつもりだ」

「そんなものでは生ぬるいですよ、大統領。もっと、確実にウイルスを廃棄する方法があるじゃないですか」

 頭を抱えていた大統領は自らの顔を上げて、にやりと口元を歪める補佐官の方へと目を移した。そして、補佐官はゆっくりと、その方法を口にする。

「――――大陸間弾道ミサイル(ICBM)――核兵器を以ってして、日本を潰せばいいんです。何の為に普天間基地を日本に置いているのか、その目的を忘れないでいただきたいですね」

「待て! そうすれば、核戦争が起こってしまう!」

「それは否めません。ですが、“それでいい”とはお思いになりませんか?」

 大統領はその目を大きく見開き、危うく席から立ち上がって補佐官の胸倉に掴みかかるところだったが、必死にその衝動を抑えていた。

「それでいいとは……どういう意味だ?」

「核戦争が起こってしまってもいいと言う意味合いで使わせていただきました。だってそうでしょう? もはや、アメリカは世界のリーダーとは言えなくなった。なら、もう一度、ゼロからやり直せばいい」

 「正気か?」と言うような表情で大統領は補佐官を見つめ、首を横に振る。

「その方法は取らない。そして……君は首にする」

「そんな事をお許しするとでも思っているのですか?」

 上着の内ポケットから黒いものを取り出して、大統領へと向ける補佐官。それは銃であり、当たり前の様にその銃口は大統領の脳天を差していた。

「撃てば、その銃声は建物内に響く。お前が撃ったのは明確だ!」

「だから、怖くないとでも言うおつもりなのでしょうが、この建物内にあなたの味方がいるとでもお思いなのでしょうか?」

 にやりと段々と笑みを浮かべていく補佐官に対して、段々とその顔を引きつらせていく大統領。

「英雄とは死んで初めて完成するもの、そうだとはお思いになりませんか? だって、英雄になった人たちの殆どはロクな死に方をしてはおりません」

「お前……お前は一体、何者で……何がしたいんだ……!」

 体を仰け反らしている大統領の荒い息が空気に触れた瞬間、気化しそうなくらいに大統領は汗を掻いている。

「私は――――ゼロにしたい。この世界をゼロにし、やり直したいだけです。そして、その元凶はあなた自身なんですよ、大統領」

 ごくりと唾を飲み込む大統領は尋ねかけようとするが、その前に補佐官が口を開く。

「私には妻と妻のお腹の中には娘もいました。幸せでしたよ。ですが、あなたが私の妻と娘を車で()いた事によって、その幸せも終わりを告げる事となってしまいました。そして、あなたは私の妻と娘を轢いた事を改竄した」

 大統領はその目を大きく見開かせ、その後、諦めの表情を浮かべる。

「そう、か……あの女性は“君”の妻だったのか……これが私の報い」

「そうですね。これがあなたの報い――――」

「だが、君はどうやってゼロにする?」

 補佐官の言葉を遮り、尋ねかける大統領は尚も同じ表情を浮かべたままであり、その口は言葉を続ける。

「いや、もし仮に君が私を殺し、世界をゼロにできたとしよう。そしたら、君は――救われるのか?」

「…………」

 沈黙する補佐官に大統領は続ける。

「君の妻と娘は帰ってくるのか?」

「帰って来ないのなら、私から“そちら”へと出向くまでです」

「……どういうことだ?」

 首を傾げる大統領に補佐官は一言だけで答えることによって会話を終わらせる。

「あなたには関係の無いことです」

 その瞬間、補佐官は自らの手に持った銃の引き金を引き、目の前の大統領を殺害した。床に広がっていく血を見ながら補佐官は笑う。

「これで……救われる……?」

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