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DOLL―What can the hand of you save?―  作者: 刹那END
―第2章― 血戦
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No.32  グラウンド・ゼロ

『まずはお前が何故、此処に来たのかを問いたいな……大貴を助ける為にしては無鉄砲すぎる』

 Persona(ペルソナ)を睨みつけたまま、口を開かない(しょう)のその目は、一瞬、大貴の方へと向けられた。

 完全に気が動転してる……

 岩のように固まっている大貴を見て、翔はそう推測した。

『……Doubt(ダウト)の命令だな? 翔』

 一発で見抜かれた翔に動揺は無かった。

『ふん。血戦を待てばいいものを。どうせ、先手を打つとか抜かしたんだろう。それに乗せられたお前もお前だがな』

「血戦には行かねぇ」

 翔ではなく、Deicida(ディーシダ)のワクチンへと向けられていたPersona(ペルソナ)の視線が翔の言葉を聞いた瞬間に、翔へと向けられた。

 それはPersona(ペルソナ)の驚きを表している行動であった。

『……正気か? 世界中の人々がお前のせいで、死ぬことになるぞ?』

「お前が全ての殺し屋の連絡手段を得るために利用したBystander(バイスタンダー)ってのは、とんだ役立たずだな……『俺はもう、殺し屋じゃない』って情報を知らなかったんだから」

『――!?』

 訝しげな表情を浮かべながら、驚いているPersona(ペルソナ)は、翔へと詳しい説明を促す。

『お前はもう、殺し屋じゃない……? どういうことだ?』

「どうもこうもねえよ。言葉通りの意味合いだ。俺は殺し屋を辞めた! だから、殺し屋宛に送られたあのメールに従う必要は、俺にはねえんだよ!」

 声を張り上げる毎に痛くなる、腹の痛みを我慢しながら、翔はそう言い放った。

 そんな翔の言葉を聞いて、Persona(ペルソナ)は笑い出す。

『クックックッ……ハッハッハッ! 殺し屋を辞める? 散々、自分の都合で関係の無い人間を殺してきといて、その上、自分の都合でそれを簡単に辞めるだとぉ……? 身勝手で、愚かな人間が……』

「身勝手で愚かな人間だとしても……今頃、気付いても遅いと言われたとしても……俺はもう、殺し屋じゃねえ!」

 その翔の目には断固たる決意の色が見えた。その目の色から察したPersona(ペルソナ)は溜息を吐いてみせた。

『だったら、お前は、血戦にも行かないという事か……ならば、交渉の条件として、まずはそれを提案しよう。血戦に参加しろ』

 あいつの手に持ってるのはウイルスだけ……銃で撃たれた傷は……大丈夫だ。この距離なら――()れる!

 そう思った翔はじりじりとその右足を床に落ちた刀に近づけて行き、瞬間、右足を振り上げ、刀を宙へと、舞わせた。

 それを器用に右手で取った翔はそのまま、Persona(ペルソナ)に向けて、疾走した。

『首斬り!!』

 翔のその動きを察知した途端、そう叫んだPersona(ペルソナ)

 翔は構わずにその刀を振るおうとしたのだが、千里眼によって、後ろにいる人物を視た翔は体を半回転させて、後ろの人物によって振り下ろされる“大きな鎌”をか細い古刀で防いだ。

 鎌と刀が激しく激突し、金属音を響かせる中、翔はその顔に苦笑いを浮かべる。

「お前……いつの間に、ここに入ってきやがった……?」

 この部屋に入る前から、千里眼を発動させていた翔の眼に首斬りの姿は映っていなかった。しかし、現に首斬りは翔の目の前に存在している。

『さっきだよ。部屋の外でずっと、首斬りを待機させてもらったよ。さて、もう一度、交渉といこうか? 今度はお前の命も、その対象にしてな』

 首斬りの鎌を刀で防いでいる翔の頭にPersona(ペルソナ)は、後ろから、左手にウイルスを持ち替え、右手に握った銃の銃口を突きつけた。

『千里眼思っていて、首斬り並みの速さのお前でも、避けられまい。で、血戦には来るのか、来ないのか。どちらだ? 翔』

 翔は「Yes」としか答えられようの無いその状況なのにも拘らず、答えるのを躊躇った。だが、やはり答えたのは、

「分かった……」

 「Yes」の答えだった。

『あと、もう二つだな……今から血戦を終えるまで、大貴を救おうと此処を攻めてこない事。それに、血戦を終えるまで、不穏な動きを見せない事だ。約束が守れなければ、今だったら大貴を、その後はお前の大切なものを失う事になる。分かったな?』

 翔はその首をゆっくりと、縦に振った。

『首斬り。下がれ』

 瞬間、首斬りはその部屋から、廊下へと瞬時に後ろへと下がった。

 刀を持った手を下げる翔に対して、Persona(ペルソナ)は銃口を突きつけたまま、Deicida(ディーシダ)のワクチンが入った注射器を大貴へと刺し、中の液体をゆっくりと入れていった。

『さて、ではその刀を鞘に収めて、正面から出て行くと良い。血戦……楽しみにしているよ?』

「絶対にお前を……後悔させてやる……」

 刀を鞘にしまい、Persona(ペルソナ)に背を向け、歩き出す翔。

「お前の人形は俺の手で――全て破壊してやるよ」

 捨て台詞を吐きながら、翔はその場から去っていった。

 大貴とPersona(ペルソナ)しかいないその空間。そこでPersona(ペルソナ)は、翔の言葉に心中で答えた。

 楽しみにしてるよ、翔。だけど、君は千里眼をやはり、“人の過去”には使えてないようだ……それが一体、どんな結果を招いてしまうのか。知るのはDoubt(ダウト)のみか……? どうせ奴の事だ。翔の心が――侠気に支配されようとも、都合の良い事なんだろう?


 ◇


「いやぁ……そうなってくると、此方としても、(たの)しいことになりそうだよねぇ……」

 自分の居城へと戻って来た情報屋――Doubt(ダウト)。が、居城と言っても、それはファーストフード店の上に存在する一室であった。

 Doubt(ダウト)は目の前の机に自らの足を乗せ、棒付きの飴玉を(くわ)えながら、目の前にいる人物をそっと見た。

「そうは思わないかい――――白井(しらい)裕次郎(ゆうじろう)くん……?」

 そう。Doubt(ダウト)の目の前にいる人物は翔の父親――一宮(いちのみや)堆我(たいが)と共に二○○一年の9.11の被害を最小限に抑えた英雄――ニコラス・ファルマンの息子の白井裕次郎だった。

 そんな白井は今、大きくその目を見開かせて、驚愕していた。

「なら……天谷(あまや)大貴を殺されないようにしていた俺の行動は……全て、無駄だったという事か……?」

「……そうなるねぇ。でも、君なら、こんな事は予想の範囲内だったんじゃない?」

 Doubt(ダウト)の尋ね掛けに対し、首を横に振る白井。

「お前みたいに千里眼を持っているわけ無いのに……こんな予想なんて、できるわけ無いだろ……」

「まあ、そうだろうねぇ……で、“それ”を目指して、Persona(ペルソナ)は人形を創り続けてたみたいだけど、天谷がK事件の犯人にされてからは、あの感情の持たない人形は創られなくなった。それは次の段階へと進んだ事を意味しているんだよぉ。だから、感情のある人形が現れただろう? そして、9.11以来、その人形たちも、創られなくなってしまったぁ……これも多分、次の段階へと進んでる事を意味しているんだよぉ?」

 飴玉を口から出して、にやりとその口を歪めるDoubt(ダウト)を見た白井は、その目を見開かせた。

「おい……まさか――!?」

「そのまさかだよぉ。彼はもう、“人間の死体を利用しないで”一人の人形を作り上げた筈だぁ……その実力を確かめるために、その人形も血戦に参戦させるだろうねぇ……」

 唾をごくりと呑み込んだ白井はDoubt(ダウト)へと尋ねかける。

「その人形は……どれくらいの強さなんだ……?」

「さあ? まだ、確かじゃないけどぉ……首斬りくらいの強さなんじゃないかなぁ……あっ! ごめんねぇ。その名は君の前では言わない方が良かったねぇ」

 Doubt(ダウト)からあからさまに目を逸らす白井を見て、Doubt(ダウト)は「分かりやすいなぁ」と心中で呟き、笑みを浮かべる。

「もう、気にしてない……」

「嘘はついちゃいけないねぇ。君の仲間を全て殺したやつだよぉ? しかも、二度もぉ。気にしないわけがぁな――」

「黙れ!」

 Doubt(ダウト)の言葉を遮って、叫んだ白井は(はらわた)が煮えくり返りそうな表情をしていた。

 そのまま、後ろを振り返って、部屋から出て行こうとした白井。しかし、Doubt(ダウト)はそんな白井に忠告する。

「気をつけたほうが良いよぉ? 君も翔と同じ、Persona(ペルソナ)の復讐の対象なんだからさぁ」

 飴玉を口の中に入れなおしたDoubt(ダウト)と同時に、白井はその足を止めて、後ろを振り返った。

「なぁ……あの二○○一年に起こった9.11には何の意味があった? あいつにしては、一番無駄な行動だったとしか思えてならない……」

「無駄ねぇ……僕もそんな時期があったけど、千里眼を使えば、すぐに分かったよぉ。説明するにはまず、Persona(ペルソナ)の目的を知っておかなければならなぁい。何だか、分かるかい?」

 白井は思案した末に自信無さげにその答えを吐き出す。

楽園(エデン)への復讐……」

「そう。楽園(エデン)への復讐が、奴の目的だぁ。けど、楽園(エデン)から追放されてしまった彼はどうやって、楽園(エデン)に復讐するんだろうねぇ?」

 そのとき、白井の頭の中に一つの推測がたった。それをDoubt(ダウト)に確かめようと、白井は言葉を漏らした。

楽園(エデン)と俺たちの世界を繋ぐために……9.11を起こした、と言うのか……?」

「ご名答。二○○一年のあの日、“世界貿易センタービル(グラウンド・ゼロ)”に一人の女の子が訪れていた。その女の子を狙って、Persona(ペルソナ)は航空機をグラウンド・ゼロへとぶつけたんだよぉ。その女の子の名は――――中森(なかもり)(ゆい)

 瞬間、白井は目を大きく見開かせた。

「どういう……事だ……?」

「彼女が鍵なんだよぉ。楽園(エデン)と此処を繋ぐ、ねぇ。けど、そこで君の頭にも、疑問が湧いてくるはずだぁ。『なら、何故、今の彼女を狙わないのか』ってねぇ……答えは簡単。彼女は眠ったまま、目を覚まさないしぃ、他の誰かが誘拐したとしても、警視庁の地位を使って、(おおやけ)に動く事ができるからだよぉ」

 小さくなった棒付きの飴を口から出して、惜しそうに眺めながら、Doubt(ダウト)は事実を述べていった。

 その場から数分、動けなかった白井は、Doubt(ダウト)の飴玉を噛んだ音で現実に引き戻され、Doubt(ダウト)に背を向けた。

「じゃあねぇ。また、来るのを楽しみにしているよぉ? 英雄の息子さぁん」

 Doubt(ダウト)のふざけた言葉に返答することなく、白井はその場を後にした。

「さぁてぇとぉ」

 飴玉を舐め終え、残った棒をゴミ箱へと投げ入れたDoubt(ダウト)は、足を机に乗せた状態のまま、天井を見た。

「僕は高みの見物といかせてもらうとするよぉ」


 ◇


 警視庁の地下


 そこでPersona(ペルソナ)は事後処理を行っていた。

 まずは拘束したままの大貴を牢屋へと戻させ、大貴を拘束していた器具を片付けさせる。

 それが終わったPersona(ペルソナ)は、地下の更なる地下――地下二階へとその身を投じた。そこにはあのDeicida(ディーシダ)による人体実験の模様を見れた大型のディスプレイや機械の備わった部屋があった。

 しかし、そこはDeicida(ディーシダ)の実験をしていた時よりも多くの人々が出入りをしており、大型のディスプレイに映る白い部屋も違うものへと、様変わりしていた。

 大型のディスプレイに映っているのは何かの液体に入っている男の姿だった。

 男はちゃんと、呼吸できるように鼻と口にマスクをしており、マスクの先には太い管が繋がっていた。

『どうなんだ?』

「はい。体温、脈拍共に正常。心肺なども正常に稼動しています。もう、液体から出しても、問題は無いでしょう」

 Persona(ペルソナ)の質問に淡々と答えるのは、Deicida(ディーシダ)の実験の際にもPersona(ペルソナ)の質問に答えていた人物であった。

『なら、俺もその場に同席させてもらおうか?』

「では、こちらへ」

 Persona(ペルソナ)を先導するため、部屋から出たその白衣を着た男は、同じ階にある他の部屋へと向かった。

 そして、一つのドアの前で白衣を着た男はその足を止めて、ドアを開け、Persona(ペルソナ)を中へと入れる。

 白衣を着た男はドアを閉めるのと同時に、円状のガラスに入った液体に浮かぶ男の方へと近づき、その横の機械で何かのボタンを押した。

 瞬間、中の液体が段々と引いていき、円状のガラスケースの中の液体はなくなり、男の姿だけが残った。

「開きます」

 白衣を着た男がそう告げた瞬間に円状のガラスケースが天井へと吸い込まれていき、同時に男の口と鼻を覆っていたマスクが外され、男はその目をカッと見開いた。

『気分はどうだ? DOLL(ドール)

「それが我の名か? Persona(ペルソナ)

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