今日から「お」の字の奪い合い!
『あの日』から一週間がたった。
俺が小百合かもしれないと疑った少女に話しかけた日からだ。
蓮「うっぜぇな。お前は家で漫画でもよんでろ!」
敏志「酷い言い方だね。君こそ家に帰って暖炉の炎でも見つめながら一人寂しくコーヒーでも飲んでたらどうだい?」
蓮「暖炉なんてねーよっ!」
小百合「こーらっ!二人とも喧嘩ばっかりして。。お願いだからもうちょっと仲良くしてよぉ…」
小百合が今にも泣き出しそうな顔で俺と敏志をみている。
というかどうしてこんなことになってるんだ・・・。
事の発端は『あの日』にさかのぼる。
〜一週間前〜
蓮「小百合・・・なのか?」
俺は聞いていた。
正直怖かった。
これでもし小百合ではなかったら俺はまた絶望するだろう。
聞かなければよかったと。
一瞬沈黙が流れたがすぐに少女が口を開いた。
少女「どうして私の名前しってるの・・?」
男「ん。小百合?知り合いなの?」
少女「多分違うと思うんだけど。。ちょ、ちょっとまって。
でもそんなはずは・・・。お兄ちゃん・・・なの?」
俺は言葉で言い表すことができないほどうれしかった。そうしてずっと呼びたかった人の名前を呼んだ。
蓮「あぁ。蓮だよ!逢いたかったよ小百合!」
そうして俺は小百合に抱きついた。
暖かくて。優しくて。懐かしい匂いがした。
小百合「お兄ちゃん!私も会いたかった!」
小百合は涙を流しながら強く返してくれた。
敏志「おふたりさ〜ん。いい雰囲気のとこ悪いんだけどギャラリーの皆さんが・・・」
蓮「うおっ」
小百合「きゃっ」
二人は急いでお互いから離れた。
俺たちが気付かない間に周りのひとが全員こちらを凝視していたのだ。
忘れていた。公道だった。
そうして俺たち3人はお互いのことを話した。
まず小百合と一緒にいた男の名前は敏志だということ。
*本城 敏志*
ほんじょう さとし
16歳。
そして小百合の幼かったころよく面倒をみていたこと。
小百合がおにいちゃんと呼び慕っていたということ。
俺はなんだか心に違和感を覚えたが、気付かないフリをしておいた。
次に小百合と敏志がどうしてここに来ていたのかということ。
小百合と敏志はこの日学校が休みだったらしく、電車で買い物へ出かけていた帰りに小百合がここに寄りたいといったそうだ。
小百合「でもね。。小さいころ以来にきたから風景もすごく変わってたし、全然お家の場所わかんなかったの。
だから最後にファミレスよって帰ろっか。言ったの!そしたら…そしたら…!」
小百合の目から再び涙が零れ落ちた。
俺は思わず笑みが零れた。
それをみたのか小百合も、にっこりと笑みを返してくれた。
俺は空白の時間をこれからゆっくりと埋めていこうとおもった。
暖かくて優しかったはずの時間を取り戻そうと決心した。
そうして3人とも話し終えたところで、、
小百合「で、おにいちゃん!」
蓮&敏志「どうした?&どうしたんだい?」
二人が同時に答えた。
小百合「あ。。。両方ともおにいちゃんだった笑``」
蓮「紛らわしいな。どうする?」
敏志「僕はいつもどおり『おにいちゃん』でいいよ。むしろそれ以外は違和感あるしね。」
蓮「はぁ?俺が『おにいちゃん』だろうが。小さいころはずっとそう呼ばれてたんだ。」
敏志「それなら僕も同じだよ。ここは譲れないね」
俺と敏志の間に目には見えないが視線と視線のぶつかり合いが激しく繰り広げられている。
小百合「あの〜・・・。仲良くしようね。おにいちゃん?」
蓮&敏志「仕方ないな。&わかったよ。」
二人が答えた瞬間にまた視線と視線との戦争が開始された。
蓮「悪いな小百合。これだけは仲良くできそうにないな。小百合はどっちが『おにいちゃん』に相応しいと思う・・?」
敏志「僕も聞きたいな。」
明らかに二人の顔が引きつった笑顔になっている。
小百合はワタワタと手を横に振りながら、
小百合「そ、、そんな決められないよ〜。私にとって二人とも大事なおにいちゃんなんだし。。。。」
蓮「だそうだ・・・。勝負・・・するよな?」
敏志「どっちが小百合の『おにいちゃん』に相応しいか・・。だね」
ここから『おにいちゃん』VS『おにいちゃん』の争いが始まったのだった。