再開?
蓮「ただいま・・・」
俺は幼いころから見慣れたドアをあけると今も、これからもきっと
1人分の靴しかないであろう玄関があった。
あの日から10年がたった。
両親が離婚して俺と小百合が生き別れになった日からだ。
あれから俺は心を開かないようにして生きてきた。
自分の中で1番大切なものを失い
俺と一緒に暮らすことを選んだ父もまた・・・
「れぇん!どこへいっていたんだ!お前はまた・・!」
日本酒の一升瓶を片手に頬を赤く染めて言う。
「私は育て方を間違ったんだな〜!ったくこんなやつになっちまうとはな」
父さんは俺との二人暮しになってから狂いだした。
今までのあまり口にしなかったお酒も頻繁に飲むようになり
会社も行っているようだが通勤する日は少ない。
そうして苦難する生活の中で父さんはある日からそのストレスを俺に向けるよ
うになってきた。
はじめは愚痴ですんでいた。
しかし月日がたつごとにエスカレートしていき
俺の返事に満足できなかったりだとか
話を聞いてあげなかったりすると
暴力を振るうようになっていた。
でも絶対に俺は抵抗しようとは思わなかった。
どんなことがあろうとこの人が父親であるという事実は変わらないからだ。
蓮「父さん。出かけてくるよ」
俺は少し皺の入った学校の制服を脱ぎ、私服に着替えた。
これからバイトがある。
日々の生活を送る分にはバイトで事足りたし
これといってほしいものがあるわけでもなかったから
少しづつためてたまに服を買ったりするくらいだ。
蓮「いってきます」
父さんからの返事はなかった。
きっと寝ているのだろう
俺は靴を履いて外に出た。
蓮「・・・・」
いつも見ている景色。
昔はもっと色づいて見えた。
でもいまは何も感じない。
バイトへ向かう途中俺は昔の風景を思い出していた。
父と母が頻繁に口論するようになるまえのこと。
4人で仲良く遊園地や水族館。
ショッピングにもいった。
どの記憶も、家族みんな笑顔でいて
楽しかった。
そしてその笑顔の中心には小百合がいた。
俺はいつだって小百合のことを一番に考えていて
小百合を守る。とまでいった。
しかし結局はこんな現状になっている。
幼いころの妄言だから深く考えないでおこうとは思うが
それでも辛かった。
バイト先であるレストランに到着した俺は制服に着替えてホールの仕事をして
いた。
このレストランでバイトを始めて半年近くたってきたためか仕事の内容には慣
れていた。
客「すいませーん」
一番右側の窓際に座っている客が声をかけてきた。
俺は注文をとるために早足でその席へと向かいポケットから伝票を取り出した。
その席には、髪の毛を栗色に染めた割と大人しそうな男がいた。
そしてその隣には・・・
蓮「!!!ッ」
俺は大きく目を見開いた。
そこには淡いブラウンカラーのショートヘアーの中学生くらいの少女がいた。
確信はなかったが、面影がある。
もしかしたら間違っているかもしれない。
しかし心の中では期待の二文字が大きく膨れ上がっていた。
メニューを凝視しながらあっちこっちと指をさして隣にいる男にどのメニューが
いいかを訪ねている人物。
それは妹「小百合」なのかもしれない人物だった。