初めての改造
ある会社がウィッチカードというものを開発した。
ウィッチカードは身体に触れた状態で「キー」と呼ばれる発動条件を満たすと特別な力を行使できる「魔法」のようなカードのことである。
例えば……空中に物を浮かせたり、掌から水を出したり、身体能力の向上など様々な力を行使できるようになる。
このウィッチカードが世界中に広まったことにより、人々の生活が便利になり、とても豊かなものになった。しかし便利になった反面、強盗や殺人などの犯罪に、ウィッチカードを悪用する者も出てきてしまった。
政府はウィッチカードの悪用を阻止するために法律を作り対策本部を設置したが、カードを利用した犯罪は増加していくばかりだった。
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「るんるるるんる~♪」
鼻歌を歌いながら黒田航はスキップで買い物に出掛けている。
「やっと金が貯まったぜ、
カツアゲすんの大変なんだよなぁ」
そう航は絶賛不良中なのである。
「確かここの階段を下れば改造ショップ……だよな!!
緊張するぜ!!」
そう言いながら航は薄暗い階段を下っていく。
カランカラン。ドアを開けるとそこにはスキンヘッドの大男がカウンターに立っていた。
「なにか」
スキンヘッド大男はボソッと呟いた。
「お、俺のカードを改造してくれ!
とびきり凶悪なやつにさ!!」
航は【念力】のウィッチカードとありったけの金をカウンターに置いた。
「改造は違法だぞ?もう引き返せなくなるがいいのか?」
ドスの聞いた声でスキンヘッド大男が喋った。
「当たり前よ!知っててここに来たからな」
これで俺も悪くてビックな男に近づいたな!
「毎度あり、明日また同じ時間に来な」
スキンヘッド大男はニヤリと笑った。
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翌日
「はいよ」
そう言いながらスキンヘッド大男は航に向かってウィッチカードを投げた。
「うぉっ!!俺ってばナイスキャッチだぜ
ちゃんと改造してくれたんだろうな?」
「当たり前だ、今からカードの説明をするぞ...」
どうやら【念力】は【不可視の念力】になったらしい。
通常の【念力】は物体を浮かす能力で、重い荷物や高い場所の物を取る時に使うウィッチカードだが、この【不可視の念力】は浮かせた物体を不可視にすることができるらしい...
「っっっておい!!!!ショボくないか?????
もっとこう...何かなかったのかよ!」
せっかく稼いだ金が無駄になっちまったぜ...
「まぁ落ち着け、そいつを使えば万引きだってできるし
不意討ちだってできるんだぞ?
透明になった石を持ち上げて、頭上から落とせば...な?」
「その手があったか!!」
使い方次第でショボい能力もイカす能力になるってことか!
「はぁ...そういうことだ」
スキンヘッド大男は呆れたようにため息をついた。
そして、思い出したようにこう言った。
「そのウィッチカードの〈キー〉は〈目を瞑る〉だ」
「わかったよ、じゃあな!」
航は足早に街へと繰り出していった。