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第七章 落ちていく空2



 ――私の子供たちは呪われているのか……

 集中治療室に運ばれた長女を、第一夫人とともに見守るアスタイン。アガミの召使いから聞かされた報告。その一連の経緯を考えながら……なにゆえ愛する子供たちが、このような仕打ちを受けなければならないのか。とアスタインは自ら捧げる神に対して嘆いていた。

 幼少の頃から仕えていた執事に裏切られ、記憶を消された長女アガミ。ひとり息子のノーグァは薬物に侵され、そして先祖返りの末、どこかへ連れ去られてしまった次女ホズリ。これらの連鎖を呪いと言わずして何と喩えれば良いのだろうか。

 ベッドを囲む物々しい医療機器。細心の注意を払い、脳内をめぐる神経信号を監視モニタリングしながら、腕の骨折の再生治療を施す医師たち。強制的に記憶を消去されたため、低次機能に及ぶ神経物質の具合を見ながらの作業。全身麻酔を余儀なくされ、頭部が動かないよう装着された強制固定器具は、子を見守る親にとっては見るに忍びない姿だった。

「あなた……」

 涙で頬を漏らす夫人の手を、アスタインは強く握りしめた。

「心配ない。きっと上手くいく」

 他の部屋では、技術者たちがウーヴの捨てた携帯端末を復元しているのだ。腕の治療を施した後、携帯端末より記憶を復元する段取りとなっている。……が、問題は消去前における記憶のバックアップなのだが。

「バックアップデータが存在しない場合、ショック療法で可能な限りアガミさまの記憶を復元いたします。ですが……」

 医療スタッフと技術者たちがおこなったカンファレンス。その歯切れの悪い物言いに、アスタインが苛立ちをみせた。

「元に戻る保障がないのか?」

「擬似的に回復させることは可能ですが……現段階においては完全復元は難しいかと」

 医師の告げる過酷な判断を聞いて、夫人が頭を抱えてフラついた。

「奥さま!」と、慌てて支える召使いたち。無理もない。アスタインでさえ、目眩を覚えるくらいなのだから、正気を保っていられるほうがおかしいだろう。

「最善を尽くします」と頷く名医に、アスタインも言葉短く返した。

「よろしく頼む」

 同時に「どうか、娘にご慈悲をお与えください」と心の内で神に祈った次の瞬間、不意にアスタインの猫耳が……いや、その場にいた全員がある種の音を感知した。防音防壁が備わった宮殿にも関わらず、伝わってきた微細な振動。それは獣の耳を持つ者にとって、聞き逃せない危険な音であり……その大気を揺るがす不可解な振動に、誰もが獣の耳を震わせ、手を止めた。

 ――天変地異か?

 しかし気象予報では、地殻変動はおろか、天候などによる災害などはなかったはず。

「何があったのですか?」

 着信音が鳴った端末を耳にかざす側近の執事と共に、窓の外をうかがうアスタイン。だが、広大な敷地に加え、樹齢200年の木々に阻まれているため、外界の様子を伺い知ることができなかった。

「陛下。至急、作戦司令室オペレーションルームへ移動してください」

 執事の緊張した面持ちに、アスタインは理由を訊ねることなく頷き、医療チームの責任者の肩を叩いた。

「そのまま治療を続けてくれ」

 そして動揺している夫人に近寄り

「アガミを頼む」

 そう言って、アスタインはマントを翻し、執事を連れて集中医療室を後にした。


「状況を申せ」

 オペレーションルームに向かいながら報告を求めるアスタインに、後ろを歩く執事が手短に答える。

「キャッツベル号の砲撃により、星王広場が攻撃を受けております」

「キャッツベル号が?」

 予期せぬキャッツベル号の暴走。果たして街はどのような惨事になっているのだろうか。同時に船の管理を預けているマエストロの所在が気になった。

 ――このような事態において連絡を寄こさないところをみると、爺の身に何かあったとみていいだろう

 何事においても顔色ひとつ変えず、与えられた従業じゅうぎょうを遂行する匠だ。それだけに、目に見えぬ不安が募る一方だった。そんな胸騒ぎを抱えながら、転移エレベーターを乗り継ぎ、オペレーションルームに到着すれば、参謀総括長が敬礼してアスタインを出迎えた。

「お取り込み中のところ、申し訳ありません」

「かまわん。それよりも被害状況を」

「はっ! 救援に当たっている各部隊長からの報告に寄りますと、死者、重傷者はゼロ。ただし数の把握はできてはいませんが、軽傷者がいるとのことで、それにあわせて医療班を派遣させております。また街はずれの地域における星民の避難も完了しております。次に建物施設などの被害ですが……」

 参謀総括長の報告を耳にしながら、黙って大型スクリーンに目を向けるアスタイン。荒れ果てていく星王広場と街並み。被害規模が大きく、もっと酷いものかと想像していただけに、少ない犠牲でとどまっていたのは奇跡としかいいようがない。

「どうやら手際の良い初動が功を奏しているようだな。それで、キャッツベル号の舵は誰がとっている?」

 搭乗者や破壊活動の目的。知りたい情報は山ほどあった。だが……

「先ほどから全チャンネルで呼びかけておりますが、いまだ応答がありません」

 見れば、今も通信オペレーターたちが、身元不明の相手に対し、応じるよう懸命に呼びかけていた。

 星王継承式典に合わせ、武装を施し直した船。しかも一般人が知らない最強兵器の装備。代々伝わる厳格な儀式とは言え、マグネタードライブの存在は、この上なく厄介なものだった。

 ――アレを使用されては、破滅しかない

 星王継承以来、最大にして最悪な危機。

 ――まさか、このような事態になろうとは……

 同時にアスタインの脳裏に、ひとりの幼女の顔がよぎる。

 惑星崩壊における保険手当。星が崩壊すれば、保険など何の役にも立たないと考えていた。しかし、ある意味それは間違ってはいなかった。幼女の説明によれば、惑星脱出後における星民たちの保障をなすもの、もしくは新たなる星を提供され、星府再建の約束までされるものだった。また仮に何かしらの理由により再建が困難だった場合、特約として星民三代までの暮らしを保障するものだったのだ。

 永きに渡り、繁栄してきた惑星ナァー。決して滅ぶことなどないと今日まで信じてきたが……まさか、このようなテロ行為で終焉を迎えようとは、誰が想像していたであろうか。自身の持つ刀で首をはねられる。それは、この上ないほどの雪辱だった。

「陛下。ここはひとつ、ダストホール使用の許可を」

 参謀総括長から求められた決断に、アスタインは苦悩した。

 有事における軍艦や対空砲などの軍備を整えてこなかった惑星ナァー。あるのはダストホールと呼ばれるブラックホールのみであり……また、それだけで対抗手段としては必要充分なはずだった。

「…………」

 静かに返答を待ち続ける参謀総括長を見据えながら、執事が促す。

「陛下。ご命令を」

 どうやら、躊躇するほどの時間はないようだ。

「ダストホールにて、キャッツベル号を排除せよ」

 代々、受け継がれてきた船。破壊や制止ができない以上、次元の彼方へ葬り去るほか方法がない。窮余の策。早計な判断だが、ここでキャッツベル号を食い止めなければ、惑星ナァーの明日はないだろう。

「これよりダストホール作戦を展開する。作戦内容はキャッツベル号の排除」

 参謀総括長の命令に、オペレーションルームに緊張が走った。無理もない。過去の歴史において、ダストホールの使用は二回だけと聞く。しかも、それらは外惑星からの侵略行為に対してではなく、衝突確率の高い隕石が相手だったのだ。衝突の恐れのある危険な隕石を発見し、数年の時間をかけて計算シミュレーションを行い、ダストホールを惑星の外へ向けて展開するものだった。ところが、今回はそれらとは真逆の地表面に極めて近い使用となるだけに、オペレーターたちの目つきが厳しくなるのも当然である。

 ――事無く済めば良いのだが……

 キャッツベル号一隻ならば極めて短い時間と小規模のダストホールで済むはず。しかし、使用において気になることがあった。地上における被害。それらを考慮し、被害を最小限にとどめられるのだろうか。見れば、優秀なオペレーターたちが険しい面持ちで、様々な要因を踏まえながら模索していた。そして数分の討議を重ねた結果……船の直上に『レベル2』相当のダストホールを展開させる結論にいたった。

「質量における展開規模はおおよそ7%。所要時間は初動展開から収束まで約3秒の予定です」

 作戦立案者のオペレーターから告げられた大まかな作戦内容。実際の数字は、もっと緻密なものなのだろう。

「ただ、ひとつ問題が……」と、難色を示すオペレーターの言葉に耳を傾ければ、ダストホールを発生させる座標値が定まらないとのことだった。しかも現在のキャッツベル号の高度では、星王広場下の避難所シェルターや、プラール宮殿にまで被害が及ぶ可能性があるというのだ。だとすれば、他の船で成層圏まで牽引できれば良いのだろうが……

方策ほうさくとして、宇宙港のナァー運輸組合の要請も考えましたが……武装艦相手に丸腰の商業船では、近付く前に打ち落とされるのが関の山かと」

 ――そうなると、キャッツベル号がダストホール使用の安全高度に達するまで、指をくわえて待つしかないのか

 と歯がゆい思いで戦艦を睨むアスタイン。……が、次の瞬間、ある異変に気づいた。

「キャッツベル号の船尾付近を拡大せよ!」

 突然、声を荒げたアスタインの指示にあおられ、すぐに船尾を拡大する監視オペレーター。そしてカメラが船体側面の非常口に立つ黒猫を捉えた途端、オペレーター全員がざわついた。

「なんで古代猫族が、あんなところに乗っているんだ?」「この騒動の関係者か?」「いや、それにしては様子が変だぞ」

 誰もがアスタインの娘とは気づいてはいなかった。無理もない。公の場に出ることもなく……しかも古代人の猫の姿では、到底その発想には及ぶはずがない。だが、父親であるアスタインだけは違った。

「ホズリ……」

 灰色に萎れた右の猫耳。色鮮やかな翡翠色の瞳が、地上を見やって恐怖に怯えていた。

 ――なぜ、そんなところにいるのだ……

 暴風に煽られている黒猫。その娘の心境を探ろうと、瞬きをも忘れてスクリーンを凝視した。

 間違って落ちでもしたら、助かる高さではない。ウーヴとクローン人間に拉致されたと聞いてはいたが、よりにもよって、これから排除しようという戦艦に乗船していたとは。

「陛下。お顔の色がすぐれませんが……お知り合いですか?」

 参謀総括長の問いに、事情を知っている執事が短く答える。

「……はい」

 それ以上のことを口にできず、押し黙る執事に対し、アスタインが力なく言葉をつないだ

「私の……もう一人の娘だ」

 やり場のない思いとともに握り拳が震えた。

 ――そうなると、この騒動の主犯はウーヴか

 アスタインの中で、事の経緯がすべて繋がった。幼きノーグァを陥れ、アガミを傷つけただけでなく、ホズリもあのような危険に晒すとは。

 ――許せん……。もし、目の前にあの者がいたならば、迷わずこの爪で八つ裂きにしてやるものを

 ウーヴの顔を思い浮かべ、湧き上がる憎悪に駆られていると……レーダー監視オペレーターが逼迫した声を上げた。

「報告します! キャッツベル号に近付く小型船が一隻あり!」

 同時に別のオペレーターも声を連ねた。

「船体識別コード名はグリーンマーメード号。所有者はコスモダイレクト社のクレハ・クリス・クレアのスペースクルーザーです」

「バカな! なんで、こんなところに民間船が?」

 動揺する参謀総括長とともに、アスタインも驚いた。匠から星王式典の参列を促された幼女。その船が、なぜ目の前の危険な空域をさまよっているのか?

 ――まさか……ホズリ救出のためか?

 頼りないリアクターシールドを張りながらキャッツベル号の砲撃をかわし続ける小型船に、アスタインが叫んだ。

「今すぐ、後退するよう、あの船に伝えよ!」

 ホズリ救出のためとはいえ、死に直面しかねない危険行為。ましてや、幼女ひとりで何ができようか。

「こちら、プラール宮殿作戦司令室。グリーンマーメード号、応答願います」

 だが、返答がない。

「聞こえますか? あなたが飛行中のルートは非常に危険です。速やかに、その空域から離脱してください。繰り返します。あなたの飛行中のルートは……」

 必死の呼びかけに応じず、ひたすらキャッツベル号に近寄ろうとする小型船を見かね、アスタインが通信オペレーターの席へ歩み寄る。

「私が呼びかけよう」

 手渡されたヘッドマイクをもって、沈黙を続けるスペースクルーザーに呼びかけた。

「クレア。この無線が聞こえていたなら、応答しなさい」

 すると、舌っ足らずな幼い声が返ってきた。

「その声……もしかしてぇ、星王さまですかぁ?」

「そうだ、アスタインだ。クレア、良く聞きなさい。その空域は危険だから、すぐに安全な場所まで下がりなさい」

 叱りたい衝動を抑えながら説得すれば……予想外の返事が聞こえてきた。

「それは分かってますですぅ。なのでぇ、保子莉お嬢さまを救出次第ぃ、離脱しますのでぇ、お気遣いなくですぅ」

「待ちなさい! 君ひとりで解決できる問題じゃないのだぞ!」

「それも重々承知しておりますですぅ」

 そして……

「とにかくぅ、いまは操縦だけでぇ精一杯なのでぇ、後ほどぉあらためてぇお話しますですぅ」

 そういうことでぇ失礼しますですぅ。と一方的に通信を切られてしまった。

「なんということだ……」

 懸命に攻撃をよける小型船を見やりながら、ヘッドマイクをオペレーターに突き返した。

「グリーンマーメード号の損傷に備え、救助艇の手配を!」

 と参謀総括長に命令するアスタインだった。



 ――ダメか……

 船体後方の側面に設けられた非常ハッチの縁を掴んだまま、黒猫が肩を落とした。

 白髪の老人に促されるがまま船尾へ急いだ保子莉。目的は脱出ポッドでキャッツベル号から降りること。だが、生体認証を拒否され、起動はおろかハッチ開放すら受け付けなかったのだ。

 ――なぜ、言うことを聞いてくれぬのじゃ……

 長年に渡り、我が家のように過ごしてきた船に、まさか拒絶されることになろうとは。

 ――何か、手はないものか……

 潔くポッドでの脱出を諦め、他の脱出方法を探ろうと、非常ハッチを開いて船外の様子をうかがった。船の高度や周辺の状況次第によっては、飛び降りることも考えた。……が、その儚い期待はあっけなく裏切られた。目測における高度はたぶん800……いや、もしかしたら500メートルにも満たないかもしれない。当然、周辺に飛び移れるような高い建物などもなかった。

「流石に、この高さでは無理か」

 それと同時に……

 ――星民たみたちは、無事なのだろうか

 焦土化していく星王広場下で、避難を余儀なくされた人々の安否を気遣う保子莉。地中深く造られたそれは非常に強度なものと聞いている。とは言え、いつまでも持ちこたえられるものではない。

 ――きっと、それまで爺が何とかしてくれる

 信じる老人にすべてを託したのだ。ならば、自分は脱出することに専念するのみ。と、気を取り直した矢先……地上を砲撃していた火線が船体後方へと流れを変え始めた。

 ――爺が、ジャゲのやつを止めたのか?

 それにしては砲撃がやまないのはなぜなのか? と非常口から身を乗り出し、矛先の変わった後方を見やれば……リアクターシールドを展開しながら近付いてくる一隻のスペースクルーザーがあった。

 ――クレア? クレアなのか?

 見覚えのある流線形の小型船。迷わずこちらに向かってくるその船に、保子莉の心に希望が生まれた。

 ――あの船に乗り移れさえすれば……

 が、激しい砲撃の前では成す術もなく、船体を左右に振りながら一進一退を繰り返すばかりだった。

「もう少し……もう少しじゃ、クレア!」

 と願いを口にした瞬間、矢継ぎ早に飛ぶビーム線状のひとつがシールドを突き抜け、小型船の左側面の外壁を焼いた。

 その撃墜さながらの光景に肝を冷やす保子莉。だが、それでもスペースクルーザーは、すぐにバランスを立て直し、再びキャッツベル号に向かってくる。煙を引きずりながら諦めずに突進してくる小型船に、保子莉は追い払うように手を振った。

「下がれ、クレア!」

 これ以上、近寄ればシールドなど用をなさないし、何よりクレアの身が危ない。

「もう、良いと言っておるのが分からんのか!」

 聞こえるはずのない声を、なおも懸命に張り上げた。自分のために犠牲者を出すわけにはいかないのだ。

 しかし次の瞬間……スペースクルーザーの上部円形ハッチから身を乗り出す人の姿に、我が目を疑った。

 ――トオル?

 その突然のことに、言葉が出なかった。

 胸の内で湧き上がる切ない想い。

 もう会えないのだと、諦めた想い。

 苦しくて悔しくて、涙を流した想い。

 だったはずなのに……。

「今、助けるから!」と半身を乗り出して必死に叫ぶ彼に、思わず手を伸ばす保子莉。……が、自分の毛深い腕を見て、手を引っ込めた。

 猫に変わり果てた自身の獣姿。果たして彼の瞳にはどう映っているのだろうか? 危険を承知で助けにきたことは分かっていても、心が硬直したように動かない。

 意思とは裏腹に、強ばる感情。

 なぜ、助けに来たのか?

 自分のことを、どう思っているのか? 

 この状況において不謹慎だと分かっていながらも、知りたい彼の本心。

 自分でも卑しい女だと、思った。でも……それでも知りたかった。

 だが、断続的に続くキャッツベル号の攻撃をかわしながらでは、それ以上近付くことは許されず……また高度を上げるキャッツベル号に対し、傷を負い失速寸前の小型船とともに彼が遠退いていく。

「トオル!」と再び手を伸ばした瞬間……聞き慣れぬ振動が猫耳に触れた。

 ――なんじゃ?

 音の発信源と思われる遠くの船首側を覗けば、船体の外壁装甲が音を立てて変形を始めていた。

 ――いったい、なにが起きておるのじゃ……

 まるで花弁のようにゆっくりと開く船首部分に疑問を抱いた。

 ――そういえば……格納庫に何かが取り付けられていたような

 艦橋でウーヴが見ていた監視モニター。その中でハンドサインを送っていた老人と一緒に、見慣れぬ大型機械が映っていたアレはいったいなんだったのだろうか?

 嫌な予感とともに、胸騒ぎが込み上がる。

 ――機銃砲以外にも、何か搭載されておるのか?

 危険な兵器。いや……そんなはずはないし、そんな話など聞いたことがない。そもそもキャッツベル号は惑星宝具であって、戦艦ではないと教わっているし……何より爺が、そのような武器の搭載を許すはずがない。

 ――とにかく、今は逃げることだけに専念せねば

 脱出するよう言われた老人の言葉を思い起こし、後方を見やった瞬間……シールドを突き破ったビーム線上が彼の頭上をかすめた。しかし、それでも小型船は離れようとはせず、また彼も身を隠そうとしないでいる。

「ダメじゃ! それ以上、近寄ってはおぬしが死んでしまう!」

 近距離ともいえる射程範囲に、突っ込んでくる彼と小型船。もし手が届くのならば、船ごと押し返したいくらいだった。

「寄るな! 寄ってはならぬ!」

 だが、その保子莉の願いも虚しく……雨のように降り注ぐビームがスペースクルーザーを襲った。

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