神様、念を押す
その場を収めてくれたのは司祭とシスターだった。
お母さんを寝室に運び、父さんを椅子に座らせ落ち着かせる。
本来、両親に聞かせるつもりだったのだろうけど、仕方ないと父さん相手に話し出した。
「今回はカロス様より神託を授かり、ご家族の回復となりました。」
「しかしながら前例の無い個人への奇跡ということで、他言無用にてお願いします。」
ウンウンと父さんは頷く。
「奥様には、その旨をお伝え下さい。」
そこで俺の口が勝手に動く。
「レイノル司祭だったか?」
「は?」
鳩が豆鉄砲を喰らった……
司祭はキョトンとした顔をしていた。
「レイノル司祭だったか?尋ねているのだが?」
「はい。レイノルです。」
「教会の奇跡登録も駄目だぞ。」
「なっ…」
司祭は2発目の豆鉄砲を喰らった。
「レイノル司祭。私が誰かは判っているであろう?」
「この件は口外はもちろん、登録も禁止だ。」
父ジェイルは司祭と俺を交互に見る。
空気の様に存在していたシスターも同じようにキョロキョロと…
司祭は気付いた様で
「カロス様の御意向とは言え、過去に遡れば200年程、奇跡の行使はございません。」
「ここで新たな奇跡の登録となれば、カロス様のご慈悲、お力を改めて教会内に……」
司祭は、まくし立てる様に早口で言う。
「無用だな。今回は完全に私の気紛れだ。」
「ですが、神様の奇跡などこのセベット村初の出来事ですよ!」
司祭様は奇跡の登録とやらがしたかったそうだ。
「レイノル司祭は不服そうだが、依代を通してとは言え、私と会話をした者など存命の者でも五人と居ないぞ。」
「それを今回の駄賃だとして胸に収めて貰いたい。」
司祭様。凄く残念そうな顔をする。
「ジェイル。この子はお前達の子であると共に、この世の子は神の子でもある。」
「大切に育て、生きる事に励むがよい。」
父ジェイル。突然話を振られ口をぱくぱくさせてガクガクと頷く。
「最後に、お前の妻サリアだったか。気持ちは受け取ったし、だからこその今回の気紛れ。」
「祈りは、もうよい。家族と共に精進せよと伝えておけ。」
神様が語り終えるとしばしの時間が経ち、司祭とシスターは表情暗くも家を後にした。
父ジェイルは椅子に座ったままボーッとしてた。
俺は腹痛が収まりかけてたのに、今度は無理矢理喋らされたせいか、別の痛みと疲れがやって来て強い睡魔に襲われた。
痛みと疲れと唸るだけの初日だった。
次からは日常回スタートです。