目覚めは激痛と共に
意識が戻る。というか、神様の言ってた世界に来たのだろう。
新たな体の感覚。
まずは耳から音が入って……
待って下さい。
お腹の辺りで尋常じゃない痛みが!!!
あえて例えるなら、内臓をヒモか何かで縛られて、更に引っ張り上げられてる様な激痛。
実際、やられた事無いけど…
「グ グ ッゲァァ」
言葉ではありません。
微かに口は動いていたのかもしれませんが、異世界での第一声は、うめき声でした。
数分?数十分?
体は動かず、呻きながら痛みと格闘し……
痛いながらもようやく慣れてきた。
考える余裕も出来て…
まず、体を襲う痛みについて考える…
(あれか…)
1つ思い当たった。
空腹だ。
半年以上も自分で飲食できてないなら、どうやって栄養を摂ってたのかわからないけど、固形物なんか入ってないハズだ。
いきなり食べ物はヤバいかな…
なんて考えてたら、寝そべってる足下の方から呻き声が聞こえてきた。
「ギ ギ ム…」
何が言いたいかは別として、すぐに判ったね。
(母ちゃんもちゃんとコッチに来たんだな。)
手足は動きそうに無い。
口は微かに動く。
お互いが存在してる事を確認する様に呻き続ける。
突然バタバタと足音がした。
「レイア!ロウ!」
女性の声だ。
こっちの世界のお母さんだろう。
(レイア?ロウ?俺の名前がロウなんだろうな。)
回復待ちなんだろうけど、目が開かないのが残念。
更に会話ができないのも残念なんだけど、ここから新しい家族との生活が始まると思えば、第一回の記念すべきイベントだ。
「オ オ カァァ」
「レイア!!!」
女性。お母さんと言おうか。
足下の方からする母ちゃんの呻き声。
(いや。こっちもレイアと言わないと。)
レイアの方に駆け寄る。
「レイア!レイア!」
「オガ オカ……」
レイアの呻き声に
「うん。うん。」
「ありがとう。よかったね。」
声から、泣いてる様に感じた。
別の足音が聞こえた。
「レイア!ロウ!」
今度は男の声だ。
男はそのまま泣き始める…
「あぁぁぁぁぁ………」
父親かな?と考えてると更に足音。
バタリと倒れる人の音。
色々と音だけが情報として入ってくるもので、見えないから余計に呻き声も出ちゃってさ。
最終的に第三者的な目線で報告させて貰うと、この部屋の中では…
呻き声を上げる寝たきりの姉弟。
その姉の手を握り、力尽き倒れてる母親。
ただ泣き続ける夫。
声をかける事も出来ずに立ち尽くす司祭とシスター。
記念すべきイベントは、訳の分からない光景を演出して幕を閉じる事となりました。