感冒
中世ヨーロッパ風の異世界へ転生したときの死因といったらやっぱりこれ。
風邪のことなのだがインフルエンザによる症状も含み、様々な病原体によって引き起こされ、さらにここから肺炎や免疫機能の低下による他の病気との併発、合併症があり得る。
現代日本においてはほとんど死ぬような病気ではないのだが、治療薬は存在せず死亡者や脳性麻痺といった後遺症が少数ではあるが報告されている。
寝れば治る。走っていれば治る。
たかが風邪。しかしこれが栄養状態の悪い人間であったり衛生状態の悪い場所でかかってしまったのなら容易に人を殺す病気になる。
1918年に発生したスペインかぜは世界的流行を起こし、地球人口の約3割、当時5億人が感染し、うち5千人から1億人が死亡したといわれる。
異世界においても風邪を始め感染症は存在するだろう。そして医学が発達していない中世ヨーロッパ風異世界において、感染症に対する手立ては神に祈るか、効き目の怪しい民間療法に頼るほかない。
現代日本から転生した主人公なら必ず「なんだ風邪か」と考え、ろくに栄養もとらずに、場合によっては働きに出る。そうして死ぬのである。
中世ヨーロッパにおいて女性は一生に5回ほどの出産をした。10回という話もあるが、現代日本と比べるととても多い。しかし人口は伸び悩み、流行りの病気でもあれば人口は激減した。20歳までの生存率が55%ほどであったためとされる。
異世界転生した主人公たちはまず半数が20歳を迎えることができない。
中世ヨーロッパ風の異世界のこうした面倒な病気事情には回復魔法やポーションの存在が天敵であり、万能な回復魔法はシリアスさをおおいに損なう諸刃の剣になります。
例えば回復魔法・ポーションを使いすぎると体が間違った回復をしてしまったり、癌細胞まで活性化してしまい死ぬのが早くなってしまったりというデメリットを用意しておくと、物語にシリアスさを持たせつつ芯のある構成を作りやすくなるかもしれません。