表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

12/12

10.戦いの前、悪魔の所業

あとがきにお知らせありです。






 その場所にたどり着くと、待っていたのはブラウン親子だった。

 彼らは無表情でこちらを待ち受けており、そこに漂うのは不気味さ以外に何もない。しかし、俺たちはいかなくてはならない。彼らの魂を救うために……。


「やぁ、お兄さん。それに、お嬢さんもいらっしゃい!」

「パリィ……!」


 すると聞こえてきたのは、愉悦に満ちた少女の笑い声だった。

 声の主――パリィは屋根の上からこちらを見下ろして、無邪気な笑みを浮かべている。その姿は一見すれば、とても幻想的で美しいモノであった。

 だが、俺とミナにとっては怒りを抱かざるを得ない腹立たしいモノ。


「やだなぁ。そんな怖い顔されたら、ボクも泣いちゃうよ? 女の子だもん」

「笑いながら言っても、説得力ないぞ」

「あはははっ!」


 その感情を隠さずに返答すると、彼女はまたも腹を抱えて笑った。

 ミナはすでに剣を引き抜き、臨戦態勢。それでも、はやる気持ちを抑えようとしているのが分かった。俺はそちらにも意識を割きつつ、再びパリィを見る。


「悪いが、これ以上はお前の遊びに付き合うつもりはない」

「へぇ……。さっきとは、ずいぶんと違うんだね?」


 そして言うと、少女は目を細めた。


「あぁ、師匠としては情けない限りだが、弟子に教えられてな」

「ふ~ん。それで? キミたち、どちらが戦うのかな」

「――私だ!」


 パリィのその言葉に反応したのはミナ。

 我が弟子は剣を真っすぐに構えつつ、前へと出た。


「なるほど、ね。お師匠さんは――ボクの相手、ってところかな?」

「まぁ、そうなるな」


 俺はそう答えながら【空間収納】より、一本の杖を取り出す。

 この世に僅かしか存在しないと言われている、オリエステル鉱石を装飾した逸品だ。これによって、俺の使用する魔法の威力は格段に跳ね上がる。

 この女に対しては、手加減抜きだ。泣かせる程度では、済まさない。

 千年に渡る罪の報いを受けさせてやる――!


「まぁまぁ、そんなに急がないでよ。可哀想なキミたちに、特別な演出を考えてあげたんだからね! それを見てからでも遅くはないだろう?」

「――――なに?」


 その時だ。

 パリィがそんなことを口にしたのは。

 特別な演出――それは、いったいなんだ?



「さぁ、目を覚ましなよ――レレイ。千年の眠りは、快適だったかい?」



 だが、考えるよりも先に――銀髪の少女は指を鳴らした。

 その瞬間だ。俺たちの大切な友人に、異変が起きたのは……。



「……あ、あああああああああああああああああああああああああああっ!?」



 響いたのは、絶叫。

 それはレレイのモノ。なにか、崩れ落ちるような、そんな叫び。


「師匠、これはいったい……」

「もしかして――パリィ! 貴様!!」


 ミナは動揺し、俺はその異変の正体に気が付いた。

 間違いない。この悪魔のような女は――。


「――ご名答! 今この時に、ボクはレレイの意識だけを解放してあげたのさ! 優しいだろう? 彼女は自我を完全に回復した状況で、人形として扱われるのさ!!」

「な、そんな――!?」


 ――意識を完全に奪うよりも、もっと惨いことを平然とやってのけた!

 満面の笑みを浮かべて。そこに、罪悪感の欠片も見せずに!!

 俺は腸が煮えくり返るのを感じながら、少女を睨む。


「おやおや。コワイなァ……せっかく、涙の再会を演出したというのにね。ほら、レレイの本音を聞きたいと思わないのかい?」

「――――――っ!」


 ケラケラと嗤うパリィ。

 しかし、そんな彼女に目もくれない者が一人いた――ミナだ。

 少女は剣を下ろして、レレイへと歩み寄る。そして、こう訊ねた。


「レレイさん? 貴女の願いを聞かせてください」――と。


 俺はそれを聞いてハッとする。

 そうだった。俺たちがまず、やるべきことは――。


「……私を、私たちを」


 ――レレイたちの願いを叶えること。


「殺して、下さい。終わらせて……下さいっ!」


 涙腺が緩むのを感じた。

 しかし、そんなものに構ってはいられない。

 俺はその言葉を聞いた瞬間に、杖を構え直した。ミナも同じく、聖剣を構えて大きく息をつく。そして――。


「――レレイさん。分かりました!!」


 そう、決意を込めてそう叫んだ。

 パリィは変わらず、屋根の上で愉悦の表情。

 俺はその両方を見て、改めて意識を集中させた。






 


 これが、最初の村での戦い。

 それと同時に、一つの村の悪夢の終焉への始まりだった……。



 


https://ncode.syosetu.com/n1360fa/

「婚約破棄された私ですが、このたび最強の治癒師として冒険者になりました。」

こちらもブクマ等、応援よろしくお願い致します。


<(_ _)>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ