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13.韻 ちっちゃな犬娘の怒り爆発

 腐華が御堂と戦闘をする少し前、列車の外は反乱軍達と政府軍との銃撃戦が起こっていた。

 激しい鉄火が巻き起こり、鮮血と木片が海一面に散らばる。

 その中突っ切るもの一つ。

 それは鉄の扉、それはどんな攻撃にもビクともしないもの。


 「あれを何とかしろぉ!」


 「ちくしょう、魔装連射砲でも効いてねぇ。あの扉なんだよ!!」


 政府軍が魔法やガトリング砲を放ちまくるが、それを塞ぐ扉。

 白く、そしてデフォルメされた手足を持った扉…ミスタードーアは反乱軍の壁として、政府軍を圧倒していた。


 「キキマセーン!ワターシ、トッテモ硬イノデ!」


 「いいぞドーア、そのまま行くぞ!!」


 オヤジことマリアの一声で、反乱軍が士気を上げる。

 しかし政府軍も負けてはいない、射撃と魔法は強く、ドーアがいなければ壊滅していたと言っても過言ではなかった。

 水柱が外れた魔法と弾丸で幾つも巻上がり、列車は列車でボロボロと破壊されていく。


 「くそ、いくらドーアがいても…全員庇えねぇ」


 「ハイ、やっぱり鎖殿に任せるしかないですねハイ」


 ドーアの後に隠れられないものは、鉄火に晒され、身体中に穴を開けられて海に沈められていく。

 体に当たらなくとも、水上バイクのようなものこと【水牛】が炸裂させられて、これもまた狙い撃ちされる。

 鮮血で海が染まっていく。

 今の反乱軍の仕事は、腐華が王子を捕らえるまでの時間稼ぎ。

 攻撃しつつ生き残る術を選んでも、死人は出続けている。

 しかし、それを見て黙っていられないものが一人いた。

 その少女は、最初は怯えていた。

 ただただ自分を救ってくれた素敵なあの人の役に立ちたくて。

 でも反乱軍の皆も自身に良くしてくれた大切な人達。

 その人達が傷つき死んでいくのも見たくはなくて。

 眠りし獣は目を覚ます。


 「……黒壇死告槌(メメント・モリ)


 ポツリと、そんな声がマリアには聞こえた。

 その直後、自身の背後に乗せていたフィーネが海へと飛び降りた。

 縛り付けておいたのにも関わらず、その縛っておいた紐は引きちぎられていた。


 「フィーネ、何やって…!?」


 マリアが気づき、振り向いても既にフィーネは海面に。

 しかし驚くべきことに、フィーネは海面に立っていたのだ。

 それだけでマリアを含む反乱軍、そして政府軍の驚愕は終わらなかった。

 フィーネは懐から、とても小さなナイフを取り出した。

 柄尻に髑髏のレリーフが作られ、全体的に真っ黒。

 しかもおかしなのは、刃渡りが手のひらほどなのに対して、柄が大型の剣並に長いことだ。

 それをフィーネは戸惑うことなく、【自身の胸に突き立てた】。

 鮮血が彼女の胸から溢れ出す。

 吹き出る血潮は、しかし海へとこぼれ落ちることは無い。

 全てがナイフへと吸い込まれていく。

 全員が呆然とする中、フィーネは突き立てたナイフを引き抜いた。

 するとゾルゾルと気色の悪い音を立てて、真っ赤な、そしてグロテスクな何かが現れる。

 それはまるで戦鎚、小さく可愛らしいフィーネの体から出てきたとは思えないほど大きな、そしてどす黒く内臓が絡み合って出来たかのような物体。

 凶悪な、そして鋭い峰をいくつも生やし、触れることは非常に危険と誰もがわかるその見た目。

 自身の体の倍近く長いそれを、フィーネは担ぎ走り出す。


 「【黒死告(ディスコード)】」


 そう呟き、戦鎚を両手で持ち、一気に振り回す。

 ブンブンと風を切り、フィーネは高速でべイコマのように回る。

 そして、その勢いのまま列車へと突っ込んで行った。

 それを見て呆然としていた政府軍たちは慌ててフィーネを狙う。

 回るたびに、鮮血のような何かを撒き散らして迫る少女に、政府軍は恐怖を抱いたからだ。


 「撃て、撃てぇ!!」


 誰が言ったか射撃要請。

 それに合わせて鉄火がまたばら撒かれるが、今度は1人にのみ。

 フィーネだけを狙って弾丸、そして法魔が放たれる。

 その殆どがフィーネに命中するが、彼女は止まらない。

 ギャルルンと海面を走り、ついには列車と目の鼻の先に。

 それに合わせたかのようなタイミングで列車から爆音。

 車両の何台かの上部が切れ飛んでいた。

 それに反乱軍、そして政府軍が驚くまもなく、フィーネの戦鎚が列車に到達。


 「潰れろっ!!」


 フィーネの小さな呟きに合わせて、戦鎚が回転の勢いを乗せて、列車に叩きつけられる。

 辺り一帯に衝撃による地震と誤解するほどの振動が発生する。

 車両の1つが丸々潰れ、中に乗ってた兵士がどうなったかなど考える必要も無いだろう。

 叩きつけによって、フィーネの戦鎚から鮮血が撒き散らされ、それは弾丸のように触れた兵士を八つ裂きにする。


 「の、乗ってきたぞ!!」


 兵士の混乱をよそに、フィーネはもう一度戦鎚を担ぎ直し、兵士達を睨む。


 「皆を殺す……アナタ達嫌い!」


 そう叫び、腐華が向かった方角とは反対。

 銃撃を続けている貨物車両へと突っ切って行った。


 「フィーネって………あの見た目で、あんなに強かったのかよ」


 反乱軍の誰かが呟いた。

 それには誰もが頷くことになった。

 それからはフィーネの活躍もあってか、反乱軍は包囲網を設立し始める。

 それは上手く行き、徐々に流れが反乱軍に傾き始めた時だった。

 前方車両から再度爆音、空高く何かが飛び出していた。

 それは腐華であったと反乱軍が気づくのはそう遅くはなかった。


 「フカ!?」


 「フカの姐さん!」


 全員の驚愕、しかしそれ以上に腐華から生えているものに驚く。

 翼に角、そして尾。

 明らか人間には無いそれ。

 それは腐華が人間ではないことを表していた。

 だが、その驚きを表す前に、腐華は何かをドーアのドアノブに目掛けて投げた。

 それはフック、見事にそれはドーアに引っかかる。


 「ムム!?ナンデショーカ、カラダニナニカ引ッカカリマシター!」


 ドーアの言葉を置いて、腐華は列車へと、コンパスの針のように回転しながら、やがて戻って行った…


 「なあオヤジ……俺らとんでもないのが仲間になってたんだな」


 反乱軍の1人がいう。

 それにマリアは何も言うことは出来なかった。

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