入学早々テスト!?
「なぁエル。今日の授業ってなんだっけ?」
「え、えっと、今日は英語と数学の実力試験だよ。
でもこれは昨日配られたプリントに書いてあったよね?」
「あ、あぁ。その紙なくしちまってな。
あは、あははは...」
笑って誤魔化そうとしたが、エルは俺をじーっと
見つめてきた。
「サクヤくん?貰ったプリントはちゃんとなくさないようにしまっておかないとダメだよ?
そうしないと忘れ物しちゃうんだから。」
「はい...実は教科書とか筆記用具、全部忘れました。」
「もう!貸すのは今日だけだからね?
はいっ、シャーペンと消しゴム。」
あぁ、別に俺はMってわけじゃないがエルに怒られるのは嫌いじゃない。
そして怒ってる時のエルも可愛い。
「サクヤくん、大丈夫?
顔がちょっと変だよ?
保健室に行った方がいいかも。」
「い、いや大丈夫だ全く問題ない!」
保健室?冗談じゃない。
学校にいる間は常にエルを見てないと逆に
体調が悪くなっちまう。
「そ、それよりさ。
最初の授業なのにもうテストやるのか?
何も習ってないのに一体どんなテストをするって言うんだよ。」
「この学校では最初の授業で、高校3年生までに習う内容をどれだけ覚えたかをテストするんだよ。」
「3年生までに習う内容をテスト!?
まだ習ってもないものを知ってるわけないじゃないか!そんなテスト皆出来るわけないだろ。」
冗談に決まってる。
いくらエリート養成学校とはいえ入学したばかりの生徒が皆3年生で習うものを知ってるわけがない。
そう自分に言い聞かせながら俺は笑った。
しかし、エルは笑っていない。
それどころか俺の言ったことに対して驚いたような顔だった。
「サクヤくん、それ本気で言ってる?」
「え、だってこれから習う内容だろ?
中学1年から3年のテストの間違いじゃないのか?」
「ううん、違うよ。
サクヤくん、1つ...聞いてもいいかな?」
「あ、あぁ。」
「もしかして君は、間違ってここに入学してきちゃった人なの?」
間違って...入学した?
一体どういうことなんだ?
「どういうことだ?」
「もしかして、他の高校に入る予定だったけど、たまたまその高校の試験で満点を取ってしまったんじゃないのかい?」
まさか...
エルの予想通りだ。
俺は元々霧生高校に入る予定だった。
そして俺は注目されるために満点を取った。
そのせいで俺はここに入学させられたってことか。
校長は俺の家に来た時、俺が満点を取ったから入学して欲しいと言っていた。
最初は理解出来なかったが、今ようやくその言葉の意味を理解したよ。
「そうだ。俺は元々別の高校に入学するはずだった。
だけどいきなりこの学校の校長が家に来て、
満点を取ったから入学して欲しいって行ってきたんだ。」
「やっぱりそうだったんだね。
テストの話をした時、君はそんなのありえないって言いたそうな顔してたもん。」
「そうだな...俺にとっては信じられない話だよ。
なぁエル、ひとつ聞きたいことがある。
高校3年間で習う内容のテストに皆答えることが出来るのか?」
「それについて今からボクが説明してあげる。」
「よろしく頼む。」
「まず初めに、ボク達は生まれた時からこの学校に入ることになっていた。
この学校に入るために生まれてきたようなものさ。」
「なんだって!?
生まれた時から入る学校を決められてるなんてマジかよ...」
「うん。
そしてボク達は小学生で中学の勉強を終わらせ、中学では高校の勉強内容と専門的な知識を身につけた。」
「中学生で全ての勉強を終わらせた。
つまり皆今回のテストはできるということだな。
それは理解できた。
でもなんで高校生になったばかりなのにそんなテストしなくちゃいけないんだ?」
「それはね、ボク達に次のテストを受ける資格があるのか知るためさ。」
「次のテスト?」
「異世界に行っても戦える人材かどうか能力を測るためのテストだよ。」
異世界...?
聞き間違えたのか?
でも戦える人材かどうか測るってどういうことなんだ?
異世界とか厨二病かよ。
異世界になんて行けるわけないだろ?
「ちょっと待ってくれ。
今異世界って言ったのか?」
「そうだよ。ボク達は異世界に行くために
この学校に入ったのさ。」
「それは流石に冗談だよな?
異世界に行くだなんて。
アニメの中じゃあるまいし。」
「事実だよ。
この学校では50年前から毎年100名の生徒の中から最も成績が優秀だった男女2名ずつ計4人を異世界に送っているんだ。」
「異世界に送るって...
一体何のために異世界に行くんだよ。」
「600年前、最高神キルアがその命と引き換えに封印した魔王サリオンが、70年前に突然封印が解かれてしまった。異世界の人々は20年間なんとかサリオンを食い止めていたけど、その後サリオンを抑えきれなくなって、ボク達地球人に助けを求めてきたんだ。
最初に異世界に行った人達は、異世界に着いた時力を手に入れたんだ。そう、英雄の力を。
でもその人達は魔王サリオンに敗れてしまった。だから今の校長がテストを作った。
地球の知識を十分に持ち、英雄の素質を持つものを選び、その者に異世界を救ってもらうために。」
「異世界が大変なのは分かった。
でも、なんで俺達が助けないといけないんだ?」
「別に、困ってる人は異世界人だろうと全員助ける!とかそういうのじゃないんだ。
ちゃんとした理由があるんだよ。」
「理由?」
「魔王サリオンを倒さなければ、異世界を滅ぼした後、次は地球に来るということが分かったんだ。
だから早くサリオンを倒さなければいけない。」
「サリオンを倒さないと地球が滅びる。
そんなことが...」
「信じられないかもしれないけど全て本当のことなんだ。」
ただの厨二病ならこんな学校まで作らないだろう。
なら本当に地球がやばいのかもしれない。
間違えて入学してしまったとはいえ、
この真実を知ってしまっては何もしないわけにはいかないだろ。
「事情はよく分かった。
それでさ、間違えて入った俺でも、
テストで成績がよければ次のテストを受けれるのか?」
「え?」
エルはものすごく驚いたような顔をした。
「だから、テストでいい成績を出したら次の能力テストを受けれるのか聞いてるんだよ。」
「あ、え、えっと...
もちろん成績がよければ次のテストは受けれるけど、サクヤくんは普通の高校生だからテストを受けても何も答えられないと思う...」
「まぁ、ダメだった時はしょうがないけど一応挑戦したいなって。」
「そっか。
なら今からテストの開始時間までに少しでも高校の勉強を教えてあげる!」
「助かる!」
『キーンコーンカーンコーン』
テスト開始時間になってしまった...
「始まっちゃった...」
「ははは...
ま、まぁなんとかなるでしょ...」
俺はこの時不安しか感じられなかった。