あなたが決めるの?!
今から4年前。私たちが中学1年生の時。
私───水無月千代子は心臓がばくばくしておりました。
何故って、今日は入学式ですから。
コミュチキで人見知りな私には地獄の日でしかないのです。
何?言葉遣いがおかしいって?
緊張してるんです。私の気持ちも考えて!
入学式、式典自体はそこまで怖くない。
おっさんとおばさんの話聞いて座っていればいいからね。
クラスに行ってから、地獄がはじまる…
そうなんです、私小学校の頃仲良かった友達1人も同じクラスになりませんでした。
中学3年間、ぼっち確定────
緊張よ…お願いだから止まってくれ。
でないと私が、死んでしまう。まじで。
あ…やばい…吐きそう。
遂にクラスへ移動です。
小学校より広い廊下、教室にたくさんの先生。
すみません、今は全てに吐き気します。
わくわくなんてしません。
私は1年4組、27番。窓側の後ろから2番目の席。
前にずらっと知らない顔が並んでいる。
ううっ…胃が痛い。
先生が話しているが、ありがたみの無いお経にしか聞こえない。
私はここでやっと、隣の席の人物がいない事に気づく。
名前は…?星野…なんて読むんだこれ。
つきはな?いや…違うと信じたい。
つきか?まさかのげっかちゃん?
実は男だったりして…
「何私の席じろじろ見てるの?」
へっ、天の声?嘘だろ?!
「いや私浮いてないんですけど…横にいますよ。」
あっ。やらかしたパターンだわ。
ここは一つ、気を利かせて名前でも聞こう。
「あっ、ごめんね。君、名前は、何ていうの?」
「いやいや。席見てたんなら分かるでしょ。しかも聞いてきた方から名乗るものじゃないの?」
「…すっごい理不尽。」
「なんか言った?」
小声で言ったつもりだったんだけど。
耳良すぎか地獄耳か。
耳を凝視してみたが別段変なところは見られなかった。
「私は水無月千代子。友達にはちよことかちーことかって呼ばれてたよ。よろしくね。」
「あっ…うん。私は星野月華。名前、読めないんだろうって見てたと思うんだけど。これでるかって読むの。月ってルナっていうでしょ?それに中華の華でるか。」
「いいなあ可愛い名前。私なんて古臭い名前だし星野さんが羨ましいよ~」
事実、私は名前にかなりコンプレックスがあった。改名できるなら、今すぐ変えたかった。
あれ、星野さん怒ってる。
「あのね、私の事星野って呼ばないで。苗字呼びが嫌いなの。ちなみに私、あなたの事はじゅんと呼ぶ事にする。水無月って6月のことでしょ?6月は英語でジューンだから。」
一瞬本気の目をして、彼女はそう言った。
名前はネーミングセンスがあるのかないのかさっぱりわからない名前だ。
「わかった、じゃあ私はるかちゃんと呼ばせてもらうね。」
流石に彼女のようにあだ名をつけられる自身はなかった。
なにか違和感を感じた。あれっ、クラス中の視線がこちらへ向いている。
くすくすといった、性質の悪い笑い声も聞こえる。
あっ。またやらかした。
「星野さん、水無月さん。仲良くなるのはいいことですが今は話す時間じゃないですよ?それに星野さん。遅刻してきたならちゃんと私に声をかけてください。」
「はーいすみません、今度から気をつけまーす。」
「反省が感じられない…まあいいです。こちらへ来て入学資料を受け取ってください。」
そう言って2人で私のもとから去っていく。
そこでもう1つ、違和感。
るかちゃんには、髪の毛が半分なかった。