第五話 投げられた
よろしくお願いしますヾ(´▽`*)
俺とノワールが出会って早いものでもう1週間だ。
契約が切れることはなく、俺とノワールは光る鎖で繋がっていた。ずっと見えるけど、これ他の人に見えてんのかな?
まぁそれは良い。確認しようも無いし。
問題は別にある。
そう、ノワールとの共同生活だ。
まず食事。魔人に進化して見た目人間でも元は魔物。
基本的にすべて生。火が起こせないのだ。進化前の個体が黒氷蛇だから、能力が全て氷系統なのだ。そして俺も火系統の能力には縁がなかった。…それが無くとも生で食べるんだけどね。蛇だから。
緑色の液体を垂れ流す虫のような魔物を持ってこられた時は吐きかけた。主食は魔物だから木の実や果物を探したりしない。
現在の俺の食生活は辛うじて食べれそうな魚っぽい魔物だ。それでも、腹を壊したが。ここ最近、胃が強くなった気がする。
これは本当に、本当に由々しき事態だ。
俺が果物やらを探せばいいと思うだろう?俺もそう思った。
だが、この森…───シグノ大森林というらしい───…は、強力な魔物が蔓延る魔物の楽園とまで呼ばれていて、Lv.1の俺が一人でいたら瞬殺なのだ。
なら、ノワールが俺を守ってその間に探せばよくね?って思うだろう?俺もそう思った。
しかーし!そうは問屋が卸さなーい!
何故なら!ノワールさんは自分勝手だから!
美味しそうな魔物(カエルみたいな魔物とか)を見つけると俺を抱えてしとめに行く!!なんと時速百キロで!!!車でもなんでも無い!!!
一瞬で意識飛んだよ!!!!!!!!
…アレはやばい。比喩でもなんでも無くやばい。
その後丸一日起きれなかったよ。
今はやっと意識を保てるようになったのだが、車酔いならぬノワール酔いになる事もしばしば。
そんな状態で見た事も無い植物の判別など付くはずもない。
やめろって言うんだけど、お前が弱いのが悪いと言われた。ええ、ごもっとも、とっても正しい。ぐうの音も出ない。
守ってもらってる立場なのにワガママを言うなんて、と思われるかもしれないが、超特急ノワール号は本気で怖いのだ。
…結局、俺が強くなって、そこらの魔物に遅れを取らないようになれば良いのだがこの森は初心者用では決して無い。鍛えると言っても良い相手がいない。
とりあえず、心命連結の効果でノワールの能力を使えるので、特訓中だ。
あぁ後、人間モードでいるのが窮屈になったノワールさんが魔物モードに変身したことがあった。
俺が避難する前に。
結果、魔人に進化し魔物モードの大きさも進化したノワールは全長十五メートル、胴回りが直径一メートルというもはや蛇とは言えない生物になり変身の勢いで俺を弾き飛ばした。
川の向こうで死んだはずの爺ちゃんが手を振ってるのが見えた。
…ボディーガードが一番危険。
それに衛生面の問題もある。
初日のノワールからの逃走により泥まみれになりほつれたスーツ。臭いし汚い。
しかも、この森の湿度が高くジメジメしていてワイシャツが張り付いて気持ち悪い。
風呂は諦めてるが服が一着しか無いのはキツイ。
近くの川で洗って何度も着てる。
そうそう、服といえばノワールが進化した時裸じゃなかった。それって服を創れんのか…?!と期待したのだが、アレは鱗を服に変換しているのでいわばノワール専用の鎧なんだと。
もう少しで良いから、生活水準を上げたい。
『おい、ケイ。
向こうで大きな魔物の気配がする。
仕留めに行くぞ。』
どうやらノワールさんが魔物を見つけてしまったらしい。
俺としては、果物とか探したいのだがこうなったら超特急ノワール号の運行は決定なのだ。
当の本人は目をギラギラさせて、じゅるりと舌なめずりをした。物凄く様になっている。
イケメン爆ぜろ。
俺を小脇に抱えひとっ飛び。
なんとか意識を保ちノワールさんに目を付けられた哀れな魔物を見る。
毒々しい紫色をした蜘蛛がいた。
勿論、大きさが尋常じゃない。
8本の長い脚を動かして張り巡らされた巣を動き回っている。巣には所々血がこびりついていた。
『ち、バイオレットスパイダーかよ…。
あれ毒多いから喰えねぇんだよな…。』
食べれないなら撤退しろよ!?
という俺の心の中の絶叫を無視し、一直線に向かっていく。
すると、蜘蛛が突然進行方向を変えた。
向かう先には蜘蛛の糸に絡まった2匹の犬。
遠目からでも弱っているのが分かる。
『最後の晩餐か?イイぜ、待っててやるよ。』
『なんで助けてやるっていう選択肢が無いんだよ!?』
『この世界は弱肉強食。それにもう虫の息だろ。助かんねぇよ。』
『いや、でも…』
『アーーー面倒クセェなぁ!!じゃあお前が行ってこい!!!!』
『へ?おわああああ!!!!』
ボール投げ宜しく投げられた。
最後まで読んで頂きありがとうございます
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