第十一話 悪ふざけしてみた
よろしくお願いしますヽ(゜∀゜ )ノ!!!!
「ふー!気持ちいいなーあ、ギンヤ、これぐらいのスピードで頼むわー。」
「ワン(分かった)」
海から帰ってきた俺たちは、今まで通りの生活を送っていた。
変化があったとすれば塩の精製が成功したのでコチョウの料理のレパートリーが増えた事かな。
焼き鳥とか美味かったなぁ〜。
順風満帆。
異世界スローライフ楽しいぜ。
今の生活には不満はない。俺は。
ノワールさんがなぁ〜。
なんだか知らないけどやたら人里行きたい、行きたい言ってくんだよね〜。魔人なのにそういう事思うんだな。人間の俺よりそういう思いが強い。
いや、俺も言ってもいいかなって考えてんだけどさ。異世界だし街に入るのにお金掛かったりするかもじゃん?今の生活、完全に自給自足だからさ。お金は基本掛からないし。
こんな風に
「ギンヤーあのキノコって食べれる?」
「ん…ニオイ、ふむあ〜〜んってする。」
「…それって大丈夫なのか?」
「ふわあ〜〜んって程じゃないけど、美味しい。」
違いがわからん。
ギンヤ語は今に始まった事じゃないしな。言語翻訳が働かないから解読不可だ。コチョウでも分からないらしいし。
という感じで飯とかはギンヤの万能鼻があれば毒を食べる事もないし、俺の造形があれば調味料とか服も用意できるし、問題はないわけだ。
四人で過ごすのは楽しいんだけどな、ノワールはちょっと飽きてきたのかね?刺激がほしい的な。
人の姿になれるようになったから人と関わってみたいとか。
…食べたいとかそんな理由じゃないよね?…ありえそうで怖い。
うーん、どうしたもんかね〜。
「…主。」
「どうした?ギンヤ。」
考え事をしつつキノコや果物を集めているとギンヤが一点を睨みつけて声を掛けてきた。
「…人の、ニオイ、する。」
「…マジ?」
「足音、…男の三人。」
まさかの初、人間?人外以外での会話できちゃう感じ?冒険者っていう人がいるらしいし仕事で来たのかな。この森、危険だからそういう事を生業としている人しか来ないからな。
「…会話、聞こえる。」
「本当、耳も鼻もいいな、ギンヤは。俺全然分からん。」
「あの、感覚、繋ぐやつで、主も聞けない?」
「あ、感覚共有か。使った事ないからなー上手くいくかな。」
これも念じればいいんかね?
ギンヤと、聴覚を共有〜〜〜
『銀犬人族と聴覚のみを共有しますか?』
お、謎の天の声さん来た。
します、と。
オーケーを出すと頭の中に新たな情報が流れてきた。
最初はノイズ混じりの音声だったが同調率が上がったのか徐々に鮮明になってくる。
「…ぁ、…たか?」
「…っスね。ここまで、来りゃあ大丈夫でしょう。」
「あいつらもほんと、しつけぇ…」
なんだ?誰かから逃げてんのか?
「狭え村でギルドもねぇからいい狩場だったのによぉ。」
「ギルドに依頼出しても、あと数日は掛かると思ってたんスけどね。」
「まぁ、でも、良いじゃないですか、親分。大して金目のモンも無かったんですから…あ、強いて言えばガキは良かったですかね。」
「…ギリル、その性癖相変らずっスね。何がイイのか全くわからないっスわ。」
んんん?
この口振りだと冒険者から逃げてるっぽいな…。
で、敬語の奴はロリコンか、ショタコン…若しくは、両方か…いや、今それどうでもいいから。とりあえず、双子には会わせないようにしよう。会って手を出そうとして返り討ちにされるだろうからな。もしかしたら男の大事なもんまで失うかもしれん。
「お前らの性癖なんてどうでもいいっつーの。今は金がどれぐらいあるかだ。冒険者から逃げるためにも金が必要だ。」
「えーと、村の連中から掻っ攫ったのはこんぐらいっスね。」
「ほんと、しけた村でしたね。」
…掻っ攫う=盗む、の解釈でオーケー?
オーケーですか。
これ、あれか、盗賊的なやつか。犯罪者か。
居るよね、そりゃ。ここ日本じゃないもの。
異世界初の人間が、盗賊って…どうしようもねぇな。
盗賊かぁ…どうしよう…まともに話なんて出来ないよな。冒険者とかなら出来たら町までのナビとか頼みたかったんだけど。
「主、あいつら、殺る?」
「…それが一番に出てくるあたり魔人だわ。」
「人、食べない。悪い奴、殺す。」
「か、過激だな…」
いや、これが当たり前なのかもな。こっちは異世界。死が身近だ。俺みたいなあまちゃんが珍しいわけで。
…だからと言ってあいつらを殺すか、と言われると却下だ。別に俺らが直接被害被ったんでも無いし。
ただまぁ、異世界だし、悪人から身包み剥ぐくらいイイよね?
「ギンヤ、案内してくれ。」
「殺す?」
「殺しはしない。気絶させるだけ。」
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「あんまり長居すると危ねぇからな…確か近くに都市があったよな?」
「そうっスね。城塞都市スノリィ。ガザリア帝国の領土っスよ。」
「ああ、帝国には手配書回ってませんでしたね。逃げるにはちょうどイイです。」
「そういうこった。行くぞ。」
「うっス。」「了解しました。」
冒険者共に追われてシグノ大森林に逃げ込む羽目になるとは…。
シグノ大森林。
浅い場所でも稀にB、Aランクの魔物が出ると言われる樹海。最奥に進めるのはそれこそ伝説に出てくるようなSランクの冒険者、つまり勇者ぐらいなものだ。
ほとんど人は立ち入らない魔物の楽園。
だか、自分たちのような人間が隠れるのにはうってつけだった。なかなか捜索の手が入ってこれない。リスクが大きいがその分リターンも大きい。
森を抜けてしまえば、帝国領土。
今まで悪さを働いていたのはムウアン共和国の領土。帝国内には自分達のことなど知られていないだろう。
資金は、まぁ、入るのに銀貨一枚だったが盗んできた金はあるし大丈夫だろう。
「はー当分は大人しくするしかねぇな…」
「っスね。親分。ところで親分のタイプってどんなんスか?」
「あ?そんなもん勝気な美女に決まって…って何聞いてんだ、ガスト。」
「いや、俺じゃないっスよ?」
「は?じゃあ、」
「俺でも無いですよ?というか、この氷の像なんですかね?すごい好みなんですけど。」
と、ギリルの奴がさっきまで歩いてきた場所を指差す。いつの間にか背後に氷でできた執事服の少年の像があった。
「んで、こんなもんが…まさか…」
「へぇ?親分は勝気な美女がいいんだ?」
「く、くっぷく、させたい?」
「!?」「ふ、増えて…」
1つ目の像と反対側に全く同じの二つの少年の像。
それぞれ別の男の声がする。
こんなものが話しているというのか…?
「な、なんなんスかぁ、これぇ!」
「そこのお前はどんな子が好みだ?ちなみに俺はエプロンが似合う家庭的な子だな!」
「知らねぇっスよ!そんなん!」
「つれねぇなぁ。」
ホラーな状況なのに、緊張感皆無の会話。
「落ち着け、お前ら!魔物だ、魔物!惑わされんじゃねぇ!」
「いや、でもこんなに知能が高いならっ…!ま、魔人ってことも…」
「ま、またまたぁ…こ、こんなにたくさんいる訳が…」
ありえなくも無い。
魔物がこんなに流暢に人語を操れるはずが無いからだ。
でも、その場合…死は確定していた。
魔人は天災。一瞬にして国1つが灰塵と化すこともあるという。そんな相手に勝てるはずもなかった。
「う、うわあああああ!!!!」
「ガスト!?」
仲間の一人が恐怖に耐え切れず氷に斬りかかる。
微動だにしない氷の少年の肩にナイフが喰いこむ。
バキバキと音を立てて右腕が落ちた。
「ほ、ほらただの氷の像っスよ!今までのは幻聴…」
「ダメ。主、作った、お前、壊した。」
「ひっ…!」
声が近い。
今度は氷では無く、本物の、少年。
人形のように整った顔立ちが、口が、言葉を紡ぐ。
「全部、喰う。」
そこには銀色の毛を靡かせた気高き獣、恐怖の象徴がいた。
「あ、ああああ…」
意識はそこで途絶えた。
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「上手く行ったな。」「ん。寝た。」
木の陰からひょっこり顔を出す。
氷のギンヤの像と本物のギンヤに囲まれて失神している盗賊三人組。
哀れにも股間を濡らしておねんねだ。
「こんなこと、しなくても、殺せばいい、のに。気絶、させるなら、殴ればいい。」
「間違って殺しちゃやだし。後、こういうホラー的なのやってみたかったんだ!!」
「主、楽しかった?」
「おう!ひっさし振りに悪ふざけ出来て!」
あー楽しかった。
三人のビビリようを見てて。
我ながら悪ふざけの域を超えてるんじゃね?と思わなくも無いがこいつら盗賊だし、あれだ、月に変わってオシオキよ☆だ。
いや、最初はビビらせる程度でギンヤにパパッと片してもらおっかなって考えてたんだけど…想像以上のビビリっぷりにこう、イタズラ心がくすぐられたんですよ。うん。
後悔も反省もしない、満足(`・ω・´)キリッ
「よし、さっさと、金だけ貰ってとんずらするか〜。あーでもこいつらここに放置したら…」
「間違いなく、死ぬ。」
「だよね。」
それは寝覚めが悪いな。
せっかく殺さないのに…まぁ、この後無一文で生きてけるか、って言われると微妙だけど。
「…ギンヤ、こいつら人里探すついでにそこに置いておこう。」
「?人のいるとこ、探すの?」
「せっかく金ゲットしたからな!冒険者にもなりたいし…木の食器の価値も知りたいからな。売れれば金は増えて…グフフフフ」
あの木の食器、自信作だからな。大した額にはならないだろうけど、元はタダだから売れれば丸儲けだ。あ、塩も売れっかもな。たくさん用意せねば…
「主、行こ?」
「うし、じゃあまずは探索開始ー!見つけても近寄りすぎるなよ?こいつらぽいって捨てて終わりだ。」
「ん。」
「レッツゴー!!!」
最後まで読んで頂きありがとうございます(●´З`●)