第十話 バカンスに来た
今回から新章です!
よろしくお願いします( `д´)
新しい能力ゲットだぜ!
俺は浮かれていた。とっても。
思わず、キタコレ!と叫んでしまった。
フフフ…ここから俺のチート異世界ライフが始まるのさっ!…調子乗るのはここまでにしよう。
俺の新能力、造形。
三人におんぶに抱っこ状態を脱するべく一から食器類を作ってみようと思ったのがキッカケだった。
木なんて大量にあるので一部切り出して氷でノミっぽいものを作って削り出したのだ。
いやぁーやってみると自分の無謀っぷりが分かるわー。
刃物じゃないから刃先砕けるわ、全体図が想像できないから、今どこ作ってんのか分かんなくなるわ。
試行錯誤の連続だったね。
氷のノミが割れないように魔力で覆ってみたり、氷でコンパス作って円を掘ってみたり。
改めて感じたよ。魔力の偉大さを。
基本的になんでも出来る。
魔力様の偉大なるお力を存分に使い完成に漕ぎ着けた。初めて作ったお皿は不格好だったけど嬉しかった。
慣れてくるとこだわりが出てくる。
表面のトゲトゲ、均一とは程遠い底の厚さ。
イライラした。
思い通りにならない自分の手が本当にイライラした。
またもや試行錯誤の結果、いっその事氷の形変えるみたいに木の形変えちゃえばいいんじゃね?あ、それよくね?という考えにたどり着いた。
氷で作ったコンパスとか、ノミの出来は俺の理想通りだったし、あ、これいけんじゃね?って思ったんだよ。
まぁ、そんな考えにたどり着いてから1週間。
出来ちったよ。
肌ざわりのよい木の質感。まるで表面は加工されているかのような滑らかさ。形状も完璧。
思わぬ出来に感激していると
『能力 造形を入手しました。』
軽快な音ともにアナウンスが流れた。
この声一体どっから来てるのやら。
困った時のノワールさん。聞いてみた。
「さぁ?そういうもんなんだよ、そういうもん。」
そういうもんなんですか。
最初っから聞こえるから誰も疑問に思わないのか。
神様の声、とかなんかね。
それはいいや。この世界のルールなんだろう。ステータスなんてものがあるのだし、今更だ。
で、この新能力、造形は物に触れて形を変化させるというチート能力だ。
あんなんでゲット出来ちゃっていいんか、と思わなくもないが、皿一枚作るのに1週間かけたんだし努力の結晶だよ、うん。
使ってみた。
なんということでしょう。1週間掛けて作っていたお皿が1時間も掛からずに出来てしまったのです。
…魔力枯渇を起こして鼻血を吹き出したが。
気持ち悪くてそのまま倒れた。
魔力枯渇ってヤバイね。
ノワールとの特訓の最中にMP0にしたこと無かったからあんなに気分悪くなるもんだとは…。
頭痛くなるし、吐き気は催すし、鼻血吹くし…最悪だった。
俺の少ない魔力だと一気に勧めると碌な事にならないというのが身を持って分かった瞬間だった。
今後、調子に乗るのは止めよう。
なのでレベルを上げて、MPを増やしつつ造形の練習をした。
練習の一環としてノワールと双子の像を作ったりした。予想以上の完成度で本人そっくりだった、が、ノワールのイケメン顔が再現され過ぎてて、完成した時イラっとして思わず破壊しようとしてしまった。
え?破壊しなかったのかって?
慌てたノワールさんに投げられましたけど、何か?
最近、やたら飛んでる気がする。
そんなこんなで俺はこの能力を使いこなせるようになった、と思う。
テーブルとか椅子とか、色々作ってたら洞窟内が家みたいになってた。
それでいよいよ作るものが無くなってきた時、コチョウと調味料はどうするかという話をした。
人里行って買うしかないよね〜みたいな話を。
でも金がない。
じゃあ、どうするか?作っちまおう。
こんなチート能力があるんだ。やらない手はない。
材料さえあれば加工も簡単。俺のイメージ通りになるんだから出来ないなんて事ないはずだ。
という訳で、
「来たったぜ、海!!!」
「いや、どういう訳だよ。」
「塩って言ったら海だろ。」
「知らねぇよ。」
全く、海に来たのにテンション低いなぁノワールは。
双子を見習えよ。魔物モードで海に突っ込んでるというのに。バシャバシャやってて楽しそうだぞ?水しぶきの高さが3メートル越えだけど。
思い立ったら即実行。
ノワールに海を聞いたところシグノ大森林を抜けた所だというのでギンヤの背中に乗りやって来た。
ノワールとコチョウも魔物モードになったので道中何も寄ってこなかった。
「う、けほ、ご主人様、この水しょっぱいです〜。」
「そりゃ海水だからな。塩を含んでんだよ。」
「これが塩ですか…ベタベタしますね…」
一通り満足したのか人間モードになって上がってくる双子。コチョウは濡れた体に顔をしかめている。ギンヤは砂いじりを始めた。あいつ意外と器用なんだよなぁ。俺が皿作ってるの見よう見まねで出来てたし。
「俺、これから塩作ってみるけどお前らどうする?」
「特にする事ねぇんだけど、なんか面白い事あるか?」
「面白い事なぁ…あ、サーフィンとかは?俺やった事ないけど。」
「さーふぃん?異世界の遊びか?」
「そんなとこだな、ちょっと待ってろ。」
近くにあった木をサーフボードの形に変える。
木の加工も中々上手くなってきたな。
サーフィンなんて俺やった事ないから教えられないし、波結構荒いけど、まあノワールならなんとなくで出来ちゃうだろ。
「このボードに乗って波を乗りこなす遊びなんだよ。えーと、こんな感じに…」
砂に触れて波の上にサーフボードに乗った人の像を作る。便利だ、造形。これでMPの消費量が少なければなぁ…
ノワールはふむふむという感じで海へ向かった。コチョウは魚を取っている。口で。見た目人間だけど犬だもんね。ギンヤは前に教えてやったスカイツリーを砂で作っている。
よし、俺も頑張るか。
予め用意しておいたポリンタンクに布を貼りフィルター状にする。この布はバイオレットスパイダーの糸で作ったものだ。新しい服が欲しくなって作った時の副産物だ。
で、海水を注ぎ込むっと。
ここの海、透き通ってて綺麗なの分かるけどやっといた方が良いだろうしな。
鍋に移し替えて、人差し指でちょんと触れる。
後は、ひたすら念じる。
「塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩塩…………
……………出来た!…おえ、き、気持ち悪い…魔力切れた…」
念じ続けて数時間。バケツの中には真っ白でサラサラな塩があった。
造形に不可能はなかった…最悪出来なくてもコチョウに熱して貰うつもりだったけど。
塩って言ってただけだって?雑念が一瞬でも入ると全く別もんが出来上がるんだよ。一つの事考えるって大変なんだぞ?ひたすらブツブツ言って脳内塩で埋め尽くさないといけないから他の事出来ないし。複雑な工程を踏むものは時間掛かるし。
「ご主人様、出来たんですね!」「さらさら。」
「おーコチョウ、ギンヤ、舐めてみるか?」
「はい!ん、しょっぱい!けど水と違って美味しいですね。料理の幅が広がります…」「うまし。」
どれどれ、俺も…お、ちゃんと塩だ!食えるし、問題なさそうだな。
「おーい、ケイ!これ面白いな!」
ん?うわ、ノワールの奴サーフィンバッチリ出来てやがる。なんでそんな完璧に乗りこなしちゃってんの?あの、中を通る感じの出来ちゃってるし…こんのハイスペックイケ蛇め。
と、憎々しげに見ていたら
ドッパァァアアアン!!!!!
盛大な水しぶきが上がりノワールを呑み込んだ。
「ノワール!?無事か!?」
「ブハッ!お前ら岸から離れろ!!!」
「は?」
ノワールが顔を出したと思ったら津波が起こった。
勢いよく迫ってくる波。
コチョウは塩の入ったバケツを抱えて、ギンヤは魔物モードになって俺を咥えて駆け出した。
遠目にノワールが蛇になり翼を出して飛んでるのが見えた。
波が引いた後、海に戻ると蛇VS蛇の戦いが起こっていた。
「シーサーペント…」
ぽつりと漏らしたコチョウの呟きにノワールとは別の紺色の鱗を持つ大蛇を見る。
シーサーペントって大海蛇とか言われる未確認生物だよね?こっちにもいるんだ…。
真っ赤な目が3つあって、その体はノワールよりも大きい。
ノワールが噛みつかれていたからピンチ?!とか思ったけどそんなことはなく、ブレス…多分、能力 畏怖ノ咆哮…を浴びせて一瞬の隙に凍らせた。一緒に海の一部分が凍った。
ええええ、圧勝やん。
コチョウの言い方から察するにすごい強いんじゃないの?シーサーペントって。
「ち、思ったより手間取ったな…」
余裕綽々といった感じで浜辺に上がってきた。
「あ、ケイ、あの板壊れちまったから作ってくれ!」
…なんか、さすがはノワールさんですわー。
˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚˙༓࿇༓˙˚
おまけ4
「私が乗せていくの!」「主、俺、乗せる。」
「「どっちが良いですか(良い)!?」」
「あーちょっと、女の子の上に跨るのはなぁ…出来たらギンヤがいいなーなんて…」
「フンッ(勝ち誇り)」「くっ…仕方ありません。」
「…お、俺が乗ってやろうか?」「ミミズ、飛べるじゃないですか。」「…くそッ。」
おまけ5
シグノ大森林に来ていた冒険者の会話
「はーやっぱ、ここは魔窟だな、危ないったらありゃしねぇ。」
「そうだな…って、おい!あれ!!!」
「ん?…な、な、あんなバカでかい蛇見た事ねぇぞ!?つか、あれ、蛇か!?」
「翼があるから、黒氷蛇か?いや、あんなサイズはありえねぇ…変異種か?」
「と、とにかくギルドに報告しねぇと!あんなんにあったら死んじまうぞ!」
「ああ、でも、なんだって海の方に…」
A:バカンス
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