第九話 特訓した
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あの時の俺に言ってやりたい。
『ボケっとしてんじゃねぇぞ、ケイ!
俺に殺す気が無いからって危機感は持てよ!!』
こんな危険人物攻撃するなんて馬鹿じゃないのかと。
『お前なんかピ──のピ──だ!!!
ピ──ピ───して、ピ──────してやる!!』
セリフの大半にモザイクが掛かる危険人物を。
『ピ────…』
『うるせぇんだよ!!!
さっきから悪口のレベル高すぎんだよ!!!』
『な、教官の俺に向かってなんて口利いてんだ!!』
『教官っていうより凶漢だろーが、お前は!!!』
あー、双子が思念伝達使えなくって良かったー。
教育上よろしくないからな。
ノワール(魔物モード)との訓練(弱い者イジメ)は想像を絶するほどの苛酷さだった。
何せ、相手は52レベの蛇。
1レベの俺が戦ったらバシバシレベルが上がる。
そしてレベルアップ特典なのかHP、MPが全快する。普通なら嬉しいのだが俺は全く喜べなかった。
全快、それ即ちまだまだ戦えるってことだ。
そこから俺の地獄のエンドレスループが始まった。
凍らされ、蛇の身体に吹き飛ばされ、咆哮を浴び、凍らされ、蛇の身体に吹き飛ばされ、咆哮を……
と、まぁそれをひたすら延々と繰り返した。
途中、流石に腹が減ったのでご飯を食べて再開。
日を跨いでの特訓だったので睡眠を取ったりもしたが。
メキメキ上がるレベル、回復してしまうHP、MP。ついでに増える凍傷耐性、寒冷耐性。経験をするごとに長持ちする俺。嬉々として襲ってくる大蛇。
もう上がらなくて良いから!!!と何度も絶叫した。これ、異世界人補正で経験値倍増とかあるんじゃないの!?神様の鬼畜め!と信仰心の塊のような人が聞いたらぶち切れそうな恨み言を吐いたりもした。
死なないのは分かってる。ノワールにその気がないから。
でも、それは大した問題じゃ無い。
向かってくる氷の礫、唸りを上げて突進してくる鞭のような身体、迫ってくる鋭い刃。
怖い。とにかく怖い。
ノワールの双子に振り回される残念っぷりを知らなかったらチビってたかもしれない。
ひっさびさに人外の恐ろしさを目の当たりにした。
俺に危害を加えてきた初日を彷彿させた。
あの時の比じゃない恐怖を感じたけど。
まぁ、でも、人間頑張れば何でも出来るんだね。
俺は耐え抜いた。完敗とか知らない。ボロ雑巾の状態で倒れ伏した。あの恐怖からやっと開放されたのだ。
ある一定の所で俺のレベルが上がりにくくなり、ノワールへの対処が追いつかなくなったのだ。
それと共にノワールにも疲れが出てきたのだ。
何せ3日だ、3日。
俺とバトったのが。
その間、俺を殺さないように気を配り、それでいて手加減しすぎないように気をつける。
そんなこと続けてれば否が応でも疲れが出る。
いやぁ、ノワールさんマジパネェっす。
手加減出来るってことは自分の力を十全に扱えるってことだからな。
正に達人って感じだ。
ノワールさんがどんどんハイスペックになっていく。
俺はそのまま気絶するように眠りについた。
モフモフ、フサフサ
現在の俺は毛の中に埋もれていた。
ギンヤ、魔物モードである。
最近の俺の寝床はギンヤの背中。
あったかいし、柔らかいし、気持ち良いし。
そんな三拍子が揃った素晴らしい寝床である。
岩剥き出しの所で寝ると体がバキバキになるのでありがったかった。
「ワン(おはよ)」「はよ〜、ギンヤ〜」
言語翻訳、鳴き声にも使用可能だからなぁ。便利なことこの上ない。俺の言葉を犬語(?)に翻訳されてるらしい。分かんないけど。
「…あの後、どうなった?」
「ん、主カッコよかった。」
俺が降りると素早く人間モードになるギンヤ。
褒めてくるのも相変わらずだ。
カッコよかったって…俺、ボロッボロにされた記憶しかないんだけど。
「主、そのまま寝た。だから、俺の体に、乗っけた。
コチョウ、ご飯、作る。ミミズ、寝た。寝てたの、1日ぐらい。」
なるほど、なるほど。
予想以上に疲れていたようだな。それもそうか。
体力的な疲れはレベルアップのせいでそんな無かったけど、精神的な疲れは取れないからな。
兎にも角にも、俺、完全復活!
ぐ〜〜〜
…カッコつかねぇな…
仕方ない。人間の三大欲求のひとつなんだから。
我慢なぞ出来んのだ。
「ご主人様!おはようございます!
朝食出来ております!」
お、ナイスタイミングだ、コチョウ。
ウチの僕はとっても優秀だ。
衣食住の食と住を満たしてくれる。
出されたのはフルーツの盛り合わせと肉炒めだ。
調味料はまだ無いので食材そのものだが、これがまた美味い。
そもそも火を通してある時点で美味い。
調味料の方はその内見つかると思う。シグノ大森林は魔物の安住の地、人の手が加わってないからか生態系豊かだ。
サトウキビとか見つかったら良いなぁ。
人里も行きたいし。無一文だから何か方法を考えないとな。
ま、食関連は双子に丸投げだ。適材適所だ、うん。
…俺が役立たずとも言うがね。
「おい、俺にも飯。」「ミミズはそこら辺の虫でも食べてれば良いのです。」
「まぁまぁ、みんなで食べようぜ。なぁギンヤ。」
「はぐはぐ(うまうま)」
一心不乱に肉に齧り付くギンヤ。
俺のようにスライスはせず、肉塊だ。
ギャンギャン言い合いをするコチョウとノワール。
はー和む。
日常万歳。
異世界なんて不安で仕方ないはずなのに今じゃこいつらといるのが楽しくて仕方ない。
日本に帰る気なんて失せた。帰れるか分からないってのもあるけど。
「ステータス確認しようぜ。」
俺も楽しみにしていたステータス確認。それと同時に不安でもあった。
ノワールの一言でいよいよ確認することになった。
以下、レベルアップしたステータス。
ケイ=シノミヤ 種族 人族
Lv.12
HP94/94(+71)
MP125/125(+90)
【特別能力】繋鎖心縛 言語翻訳 氷神刃斬 氷神壊弾 畏怖ノ咆哮 並列思考 予見視
【通常能力】氷結 氷柱 氷幻想 氷剣兵 氷盾
【耐性】寒冷耐性 凍傷耐性 恐怖耐性
【補正】回避ex 防御ex
【標章】異世界からの客人 社畜 氷ノ力
おおおお!!!
ついにLv.1を脱した!!!
たった3日で12!頑張った甲斐あった!
能力は並列思考と予見視が増えたか。ほかはノワールのだな。あ、でも、畏怖ノ咆哮は初めて見たな…もしかして戦闘中に何度もくらった、体の疎む咆哮か?
それのおかげで恐怖耐性ついたのかもな。
後は補正?回避exと防御ex。避けまくったのと吹っ飛ばされたのが役に立ったか。
ここまで上がるとは…凄いな、ノワールの強化特訓は。
「そうだろう、そうだろう、もっと感謝しやがれ。これからもっと鍛えてやるからな。」とドヤ顔してる。
…俺の心配はどうってこと無かったようだ。
俺が強くなったらノワールが居なくなるという心配。
だってそうだろ?俺が弱いから守る為に一緒にいるんだから。俺が強くなったらどっか行っちゃうのかなって。
そんな俺の心配を他所に双子とわちゃわちゃするノワール。
最初はガチで怖かったけど今は気に入ってると思う。
ノワールもちょっとは俺のこと気に入ってくれてると良いなぁ。双子の事気に入ってるみたいに。
…恥ずいわーいい年して何考えてんだ、俺。
最後まで読んで頂きありがとうございます♪☆彡(ノ゜▽゜)ノ☆彡
次回はノワール視点でお送りする予定です。