プロローグ:絶望の果てに
初投稿です!
異世界モノやってみたくなってしまって…拙いですが、生暖かい目で見て頂けると幸いです。
特に何か変わったことは無い普通の人生だった。
大学出て就職して十三年間社畜生活を送った。
もう本当に働いた。自分でも引くほど働いた。
というよりも仕事しかしてない気がする。
で、篠宮啓 35歳 独身 今も仕事してます。
会社で一人虚しく残業である。何故、こんな事になっているのか。それもこれもウチの上司が〆切を間違えたからだ。完全なる尻拭いである。
脳内で上司のハゲ頭を引っ叩いてもスッキリしない。
そうでなくても、1日晴れという天気予報が外れ叩きつけるような大雨が降り注いでいるのだ。雷まで鳴り始めている。勿論、傘を忘れた。
一体俺が何をしたのか。
何もしてない。
「普通1週間も間違えるかよ…それでいて定時で帰るとか…俺のミスでも無いのに…」
確実に自分のミスになるのだが。ハゲになすりつけられて。
ぐちぐち言っても仕方ない。どうせ家に帰っても優しく「おかえり」を言ってくれる妻などいないのだから…あ、なんか泣きそう。
黙々と作業すること数時間。
とっくに終電は過ぎた頃なんとか仕事の終わりが見えてきた。このまま会社で朝を迎えることになりそうだが徹夜よりよっぽどマシである。
…しかし、今日は酷い目にあったな…上司には仕事押し付けられるわ、天気予報外れて土砂降りだわ、家に帰れないわ、…そんな負の連鎖に終止符を打とうとマウスを動かす。
─────だがしかし不幸というのは異様な程重なるものである。
カッ! ドオオオォォン!!!ゴロゴロ…
「うおっ!…おぉお、デケェな…ちょっと揺れたぞ…今の近くに落ちたよな…」
フッ「え?」
一瞬で真っ暗になるオフィス。停電したのだ。
少しして非常灯がつき…信じたくない現実を目の当たりにした。
パソコンの画面。先程までその画面に写していた資料は真っ黒に塗りつぶされていた。いや、正確には電源が切れたのだ。────保存する前に。
「え、待っ、停電した、うん、で、パソコンが落ちた、うんうん、んで、俺は保存してない。…え?」
一拍。
「ちょ、は、はああああ!!? え、え!!?全部消えた?! 嘘だろ?!!」
心許ない非常灯の明かりに照らされたオフィスで叫ぶ。背もたれに力無く寄りかかる。…現実が的確に心を抉ってきた。
「なぁ、頼むよ、残っててくれよ、データさんや。お前はそんなに弱くない筈だ。もう何でもいいから、…せめてパソコンだけでも点きやがれぇぇえええ!!!!」
再び絶叫。自分でも謎なことを言ってると思う。キチってると言われても文句を言えない。
…1周回って笑えてきた。
「フハ、フハ、アハハハハハ、アハ、ハハ…ハハ…もうなんだって俺がこんな目にぃ…マジで電気点けよぉ、明日までに…もう今日だけど…仕上げないといけないんだよぉ…」
あぁ、気のせいかな、視界がボヤけて明るく…明るく?!
パソコン点いた?!データは?!
慌てて乗り出すと、眩いばかりの光が俺の体を呑み込んだ。
あまりの光量に目を瞑った俺は何故か仰向けに倒れていた。キャスター付きの椅子から転がり落ちた覚えもない。恐る恐る目を開けると見慣れたオフィスの灰色の天井ではなく
──…青緑の葉が生い茂る木々だった。
体を起こせば何処までも続いていそうな鬱蒼とした森林が見え、遠くからギャアギャアとドスの効いた鳴き声やアオーンという獣の遠吠えが聞こえてくる。
劇的な環境の変化に対し俺の口からは
「…仕事どうしよう。」
という十三年間で培われた社畜人生の賜物が溢れた。
最後まで読んで頂きありがとうございます。