第18話【予想外】
読んで下さっている皆々様、いつもありがとうございます。今回はいつもより少し長くなっております。お時間に余裕のある時に読んで頂ければ幸いです。
──嫌な感じがするな。
理屈ではなく、直感的なものだった。
「頼んだぞ辰さん。別嬪さん、また後でね」
似つかわしくない台詞を吐いて、昇三は校舎に向かった。
「ふふふ。面白い方ねぇ昇三さんって。ねぇ辰さ──」
「千恵子さんは早く自分の避難場所に戻った方が良い」
千恵子が言い終わる前に村田が警告をした。
──気のせいなら良いんだがな。
「分かりました、辰さんの言う通りにします、って──私が言うと思う?」
千恵子は少し首を傾け、村田の顔を窺う。
「──言わねえな。でも、本当に、危ないかもしれないんだ。だから──」
大丈夫ですよ、と千恵子が頷きながら言った。
「辰さんの邪魔はしません。少し離れた場所に居ますから」
村田はもう一度、はぁ、とため息をつく。
──本当に、相変わらずだなぁこの女は。
「──危ないと思ったら逃げろよ。何かあっても俺には責任が──」
「あら。そんな事言って、いざとなったら守ってくれるんでしょう? 辰さん」
勝手にしろ、と村田は言い捨て、南門へと歩き出した。その後を千恵子が追う。
南門の内側に、やや外を照らすようにして、やはり照明が設置されている。と言ってもこれは元々小学校に設置されていた物のようだ。
スライド式の門扉はしっかりと閉ざされている。その内側には警備班の人間が三人立っている。
門扉の向こう側に、昇三の言う──変なヤツ──は居た。
警備班の三人の内の一人が村田に気付き、手を挙げた。
「やあ、村田さん、だったかな。昇三さんには会ったのかい?」
村田も軽く手を挙げ、それに応える。
「ああ、代わりに南門に行ってくれってね。で──そいつか? 変なヤツってのは」
そうだ、と別の警備班の男が答えた。
村田は改めてその【変なヤツ】を観察する。
まだ若い男のようだが、俯いている上に長いボサボサの髪が邪魔で顔まではよく見えない。
体型は中肉中背。全身をくまなく見るが、特に目立った外傷は無い。
野上の言う化け物の特徴である、体の一部が変化──している訳でもない。
──本当に、変なヤツ、だな。
「おい、アンタ。ここに避難しに来たのか」
村田が試しに質問した。が、やはり無反応だった。
「無駄ですよ。さっきから何回も聞いてるけど、なんにも言わない」
どうしたんでしょうねぇ、と隣で千恵子が言った。
「千恵子さん頼むからもう少し離れてくれ」
はいはい分かりましたよ、と千恵子は渋々退いた。
「ずっと、こんな調子なのか?」
村田の問いに、警備班の男が頷く。
「ああ、向こうの道路の方からフラフラっとやって来てさ。そこ、今立ってる場所で立ち止まったっきり。入れてくれともなんとも言わずにさ」
──化け物ではない、のか?
日中に小学校に現れた化け物は、有無を言わさず攻撃していた。野上が出会したという化け物に至っては何人殺されたかも判らない程らしい。
だが目の前に居るこの男は──
お、昇三さんが戻ってきた、という声に村田は振り向いた。昇三は、一人で走って来た。
──一人? 後藤さんはどうした?
後藤というのは警備班の班長である。四十代前半だがしっかりしていて、本人も警備会社に勤務しているとの事だ。
役目柄、村田のような年代の人間が多くなった警備班だが、後藤は扱いにも慣れたもので、初回の会議では大勢の警備班員を相手に、実に丁寧に説明をし、配置、時間帯の割り振りを済ませた。村田もその采配振りには感心した程だ。
「……っはあ、疲れた疲れた、っておお、別嬪さん、こんな所に居ちゃあ危ないよう」
千恵子です、と笑顔で会釈している。
「危ないよう、じゃねぇよ昇三。それより、後藤さんはどうした?」
良いじゃねぇかよう、と昇三が村田を睨んだ。
「ああ、後藤さんはな、俺の話を聞いた後に、機動班の人間を連れて来る、って言って急いで手配しに行ったよ。だからそれまでの間はまだ中に入れるな、ってさ」
──とりあえずはそれが妥当だな。
「なるほどな。まあ、そういう事だから千恵子さん、ここに居ても何もないから早く戻んな──」
辰さん見て、と千恵子が門扉の向こうの男を指す。
さっきまで、フラついてはいたものの、ちゃんと立っていた男が中腰になり、両膝に手をついて下を向いている。
おい、どうしたアンタ、と警備班の男達が声を掛ける。だが男は相変わらず答えない。
「どうした。気分でも悪いのか。おい──」
男が急に上半身を起こした。勢いでボサボサの髪が動き、顔が見えた。
その顔は──とても苦しそうだった。
「お、おい……」
「──たす、たすけ……」
──ああ? 助け?
門扉の向こう側の男は、それだけ言って──仰向けに倒れた。
「た──倒れたぞ。どうする?」
「どうするったってお前」
「助けて、みたいな事言ってたろ今」
警備班の三人が慌てている。
「どうする昇三さん。助けるか?」
警備班員に聞かれた昇三は一度千恵子を見て、
「──当たり前だろ。目の前で人が倒れてンだ。見殺しには出来ねぇ」
──お、おいおい!
村田は慌てて昇三の腕を掴んだ。
「待て昇三。こんな時に格好つけるな。ちょっと様子を──」
昇三は放せぃ、と時代掛かった口調で村田の手を振り解いた。この昇三、老いたりとは言えまだまだ頑健で、昔から腕力には自信があり、今尚、腕は丸太の様に太い。
「馬鹿野郎! そんな悠長な事言ってる場合か? このまま放っといて死んじまったらどうするンだ辰!」
「不用意に近付くなと言ってるんだ! お前も少しは状況を考えろ!」
──やはり近付くべきじゃあないな。
最前から誰もが感じている通り、やはりこの男は怪しい、と村田は考えている。
──今まで俺達の問い掛けにはまるで答えなかったのに何故──
何故、倒れる直前に言葉を発したのか。助けを求めていた様にも思える。助けて欲しいのなら最初からそう言っていた筈だ。
──一瞬だけ、我に返った、のか? 我に返る? 意識がなかったのか? なら何故立っていた。ここまで歩いて来たんじゃないのか。
村田の思考を邪魔するかの様に、ガラガラと音を立ててスライド式の門扉が開いた。
──開いた? あの馬鹿──
「待てと言っただろうが昇三! 戻れ!」
村田の警告を無視し、昇三は倒れている男の横に屈んだ。男の鼻と口を覆う様に手を当て、
「──息はしてるな。生きてるぞ、こいつ」
手を振りながら昇三が村田達に知らせた。
「そうかそれは良かっただから早く戻れ昇三!」
昇三は立ち上がり、村田に向けて明らかに呆れたという顔をして見せた。
「なんなんだよ辰。息はしてるけどピクリともしねぇ、そんな人間相手に何をそこまで──」
「よく考えろ昇三。俺達は何から身を守る為に小学校に避難してる? 俺達警備班は何の為にここに居る?」
村田に問われ、ムッとした表情で昇三が答える。
「そ、そりゃあお前、化け物だろ、馬鹿にするな──」
「そうだ化け物だ。得体の知れねえ化け物を相手にしてるんだ。いいか昇三。得体が知れねえんだよ。何があってもおかしくない。その男も正直──怪しい」
何、と昇三が驚く。
他の警備班員三人もざわつく。
「怪しいったって──辰、辰さんよ。こいつ、どう見たって普通の──」
「見た目はな。説明するから一回こっちへ戻れ昇三」
分かったよ、と昇三が何度か男を振り返りながら漸く門扉の内側に帰って来た。
「さあ説明しろ。俺にも解る様にきっちり説明しろ」
村田は、はぁ、とため息を吐く。
「お前らと居ると、ため息ばっかだ。昇三、お前に解る様にきっちり説明したら何時間掛かるか分からん」
失礼な、と昇三が地団駄を踏む。
「だったら大体で良いや大体で。しかもお前らってのは何だお前らってのは。この人達に失礼じゃねえか」
昇三は警備班の者達を見回す。
いや、そっちじゃねぇよ、と村田が苦笑し、チラッと千恵子を見た。
「あら、私?」
千恵子が自分を指差し、眉間に皺を寄せた。
「失礼しちゃうわねぇ。ねぇ? 昇三さん」
昔っから失礼な奴なんですよう千恵子さん、と昇三が大袈裟に頷く。
「もういいから黙ってろお前ら。今から説明してやるから良く──」
お待たせしました、と少し遠い所から声が聞こえた。村田達が一斉にそちらを見る。
──後藤さん、か。もう一人一緒に来てるな。
おう後藤さん、こっちだこっち、と昇三が呼んだ。
先頭を走る後藤が、横に並んで走るこれまた四十代位の屈強そうな男にこちらを指差しながら話している。
間もなく、後藤達が村田達の待つ南門に到着した。
「ふう──お待たせしました。とりあえず皆さん、ご無事ですね?」
到着するなり後藤はまず警備班員の無事を確認した。
当たり前よう、と昇三が親指で鼻の頭を擦る。
「ハハっ、昇三さんはちょっとやそっとじゃ、どうにもなりませんって。心配してません」
ひでぇな後藤さん、と昇三は笑った。つられて警備班員達も笑う。
──驚いたな。後藤さん、もう昇三の性格を見抜いてる。
昇三と後藤は今日が初見だった筈だ。
いくら昇三という人間が分かりやすいとは言え。
「冗談ですよ。あ、ご紹介遅れました。こちら機動班、班長の乾さんです」
後藤に促され、乾と呼ばれた男が頭を下げた。
「乾です。皆さん、御苦労様です」
──ほお……これはまた──
身長はそれほど高くないが、眼光鋭く、体格も良い。以前、野上が頼りになる人だと言っていたが、
──なるほどな。野上君とはまた違う感じの──
村田にしてみれば野上も充分頼り甲斐のある男なのだが、この乾という男は別格だった。
「この男性ですか。その──変なヤツ、というのは」
乾の問いにへい、と昇三が返事をした。もはや時代劇である。
「ちょっと変かなぁ、とは思ったんですがね、そいつ、いきなりぶっ倒れましてね。こいつぁいけねえ、ってんで慌てて助けようとしたらこの辰の野郎が近付くな、って言うから──」
昇三は村田を指差しながら早口にまくし立てた。まるで下手人扱いである。
すると乾が、ほう、と少し驚きながら村田を見た。
辰さん失礼ですが──と乾がそこで止めたので、
「村田、です」
と答えた。乾が村田さん、ですね、と復唱する。
「村田さん、この男性について何か──お気付きの点が?」
乾が柔らかい口調で村田に問う。だが、変わらず目付は鋭い。
「お気付き、と言うか何と言うか──そうだな。まず今までの状況をそのまま伝える。で、俺が感じた事を言う。その後で後藤さんと乾さん、か? 二人が判断してくれたら良いよ」
なるほど、と後藤が頷き、
「あまり情報のない我々が先入観からの思い込みで判断しないように、まずは客観的な事実から伝える、と。そういう事ですね」
まあ、そうだ、と村田が頷く。
頼むから日本語で喋ってくれよ後藤さん、と昇三が嘆いた。
「はぁ……お前その辺を散歩でもしてろ昇三。まず──」
うるせいバカ辰、という昇三の野次を無視して村田は続ける。
「その男は、自分の足でこの南門の前まで歩いて来た。で、そこで暫く突っ立っていた。こちらが何を言っても、何を聞いてもずっと黙りだ。ここまでは間違いないな?」
その通りだ、と警備班員が応える。
「それで、ついさっき、その場でぶっ倒れた。倒れる直前に一瞬だけその男の顔が見えたんだが──みんなはどうだ?」
村田に問われ、警備班員は口々に、見た、というような事を言った。
「その時の表情はどんな感じだったかな?」
再び訊かれた班員達は、苦しそうだったな、どこか痛かったんじゃないか、と答えた。
それを聞いて村田は頷き、続ける。
「うん──俺にもそんな感じに見えたな。で、倒れる直前に言葉らしきものを言った。俺には、たす、たすけ、と聞こえた」
そんな事言ってたな、とか確かに言った、と警備班員達が口を揃える。
「──言ってたな、うん、確かに言ってたぞ辰。だから俺ぁ──」
昇三が一度賛同し、続けようとしたのを村田が制す。
「お前もそう聞こえたんだな。そこまでで良い。で、いち早く助けに行った昇三を俺は呼び戻した。まあ、状況はこんな感じだ」
村田は後藤と乾を見た。
後藤は倒れている男を見ながら、ううん、と考え込んでいる。
乾は──
「──なるほど。昇三さんを呼び戻した村田さんの判断は賢明だったと思います」
──さすがに鋭いな。
村田が感心していると、昇三が身を乗り出した。
「そこが解らねえってんだよ辰。なんで──」
つまり──と、村田に代わって乾が答える。
「その男は化け物になる可能性がある、という事です」
村田と乾以外の者達が、一瞬ざわついた。
「そういう事だ昇三。いいか。その男が避難して来た普通の人間なら、ここに来てすぐ助けを求める筈だ。でもそうじゃあなかった。意味のありそうな言葉を発したのは倒れる直前だ。ここからはまぁ、俺の個人的な意見だが──その前に俺は多分、ここに居るみんなよりは化け物に関する情報を持ってる。俺が入ってるグループの代表者から聞いただけなんだけどな」
村田さん、あなたはもしかして、と乾が割り込む。
「途中で失礼。村田さんのグループの代表者は、機動班副班長の野上さんですか?」
そうだ、と村田は頷いた。
「彼は──野上君は少なからず二度、化け物とやり合ってる。で、今日、ちょうどこの南門で起きた騒ぎはみんなも知ってると思うが、化け物は見境なく、いきなり人間を襲う。勿論、会話なんざ出来ん。意識すら無いんだろうよ。そこで、だ」
村田は一度息を継ぐ。
「野上君が言うには、この化け物ってのは寄生生物に寄生された人間、なんだそうだ。彼も別に学者じゃあないからはっきりとは言い切れないらしいがな。だが、倒した化け物から見た事もない生物が出てきたのは確からしい。つまり──」
村田は門扉の向こう側で倒れたままの男を見た。
「人間が寄生生物に寄生されて操られている、というのか乗っ取られているというか──そういう事らしい」
警備班の三人が、数歩後退する。
昇三の視線が村田と門扉の向こう側に居る男を何度か往復し、
「じゃ、じゃあソイツもその、あれか? 操られていたってのか? 操られてここまで歩いて──」
そこまで理解出来れば上出来だ昇三、と村田が褒めた。
「でもまぁ、その可能性がある、っていう程度だ。確証はねえよ。俺からは以上だが──どう思う? お二人さん」
後藤と乾が顔を見合せる。
「村田さんの考えで俺は間違いないと思います。後藤さんはどうです?」
後藤も少し悩み、
「そう、ですね。そうだと思います、けど……」
どうにも歯切れが悪い。後藤が別の可能性を考慮しているように思えた村田が付け足す。
「──ただ、本当に体調が悪く、やっとの思いでここに辿り着いて口も利けず、倒れる直前になんとか喋れた、という考えも捨てきれない、かな。ちと苦しいか。どっちにしろ、その男が寄生されてないか調べてみた方が良いな」
うん、と後藤が頷いた。
乾は顎を擦りながら、
「よし、念の為、機動班の班員を数人、呼んで来ます。後藤さん、それまで、監視強化でお願いします」
すぐ戻ります、と言って乾は校舎へ向かい、走って行った。
後藤も腕を組んで頷き、
「そうですね、警備班も少し、人員配置を見直しますか。村田さん、申し訳ありませんがもう少し南門に居てもらえます? 村田さんが元居た場所に別の班員を行かせますから」
構わんよ、と村田が応じた。
「ありがとうございます。その手配も含め、職員室へ行って今後の警備計画の見直しもして来ます。そこの男性については──そうですね、その寄生生物、ですか? それがその男性に寄生しているかどうか調べるのならくれぐれも注意して下さいね」
あまりお勧め出来ませんが、と後藤は苦笑しながら、
「機動班の方々が来るまでは待機して下さいと言っても、昇三さんは聞かないでしょ?」
勿論でさぁ、と昇三が仁王立ちになった。
「無茶しないようにこの馬鹿は俺が見張っておくよ後藤さん」
助かります村田さん、と後藤は笑いながら頭を下げた。
「何か異常があったらすぐ離れて、応援を要請して下さい。皆さん、くれぐれもお気をつけて」
そう言って頭を下げ、後藤も走って行った。
あいよぅ、と昇三が手を振りながら叫ぶ。
「──だそうだ。他のみんなはともかく昇三。お前は──って、おい」
昇三は既に門扉の向こうの男の側に立っている。
どれどれ、と警備班員達も続き──
「辰さんも早くおいで」
千恵子まで加わっていた。
──まあ、予想してはいたが。
村田は苦笑し、門扉の向こう側へと出る。
倒れている男を囲むようにして、昇三や警備班員三人、千恵子が屈んでいる。村田もその輪に加わった。
その時だった。
「お、おい! 見ろ!」
警備班の一人が、倒れている男の──腹を指差した。皆が一斉にそちらを見る。
──何だ?
倒れている男はワイシャツを着ているが、前のボタンを留めておらず、中のTシャツが見えている。そのTシャツの腹の辺りが、急に膨らんだ。
「な、なんだこれ……辰、辰さんよ! こりゃあ一体──」
シャツが捲れ上がり、男の腹が露になる。
バランスがおかしい。男の身体に対して膨らんだ腹は──
──なんだか解らねえが、まずい──!
腹の皮膚が薄くなり血管が浮き上がる。所々、いや、腹全体の至るところが凹凸を繰り返している。
まるで、腹の中で小さい無数の何かが暴れ回っているかのように。
「みんな離れ──」
村田が叫び終わる前に、倒れている男の腹が大きな音と共に──破裂した。
男の腹の皮膚が、肉片が、内臓が、そして得体の知れない小さな大量の何かが飛び散る。
男の周りを囲んで居た昇三、警備班員三人、千恵子、そして村田──全員が、血飛沫と共にそれを浴びた。
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──なあ、知ってるか? お前ら。
──何が?
──保健室の件。
──保健室? 何かあったの?
──昼間、保健室に運ばれた奴、居ただろ? ソイツ殺されたんだってよ。
──殺された? 本当かよ。誰に?
──機動班の連中だってよ。
──嘘だろ? いくらなんでも一般人が一般人殺さねえだろ。
──それが殺しちまったんだってさ。間違いねえよ。俺のグループの人が全部見てたって。
──なんで病人、怪我人か? 殺すんだよ。
──それがさ、ただの怪我人じゃあなかったんだよ。ソイツ、化け物になったんだって。
──はあ? 化け物、って、昼間グラウンドに来た奴みたいな?
──そうそう。目ン玉は飛ばさなかったらしいけどな。なんか足が蛇みたいになったとかなんとか。
──何それ。じゃあなにか? 具合悪くなった奴はみんな化け物になンのか?
──かも知れないな。っつうとあれじゃねぇ? 怪我人やら具合悪くなった奴はみんな殺されるンじゃねぇの? 機動班に。
──ははは、まさか、な……
最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
今回からこのスペースに後書き的なものを書いてみたりみなかったりしようかな、と思いまして。
今回、苦心したのは、【後藤と乾がその場を離れ、村田、昇三、千恵子、警備班員三人だけが倒れている男を囲む状況】を作り出すこと、でした(笑)今後の展開にも影響するので、絶対に、それでいて自然な流れでこの状況を作り出す必要がありました。まあ、今回に限らず毎回似たようなことで苦心しているんですが(笑)
それでは、次回更新まで(いつになるか分かりませんが)気長にお待ち頂ければ幸いです。