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2話

 俺はザイーツの作戦通り、夜中に砦の対岸に陣を敷くよう全軍に指示を出す。まだ夜明けまでには何時間かある。ザイーツの仕込がうまくいけば、もうそろそろ……

 そう思っていた所で跳ね橋がゆっくりと降りてくる。そしてそれと同時に川向こうの砦の門が開け放たれる。敵の見張りは見当たらない。恐らく侵入した兵が排除したのだろう。そして、今跳ね橋は完全に降ろされ、砦への道を開く。

「よし、全軍突撃! 同士討ちに気を付けろ!」

 ザイーツのその言葉で紅の翼は砦に雪崩込む。奇襲を受けた敵軍は殆ど抵抗らしい抵抗もすることが出来ず、夜が明けるころにはほとんどが逃げるか、投降するかしていた。こちらはほとんど被害らしい被害も無く、砦の占領に成功した。

「残敵を掃討しつつ砦を掌握する。三日後には本隊が来る。それまでここを死守する!」

 俺はザイーツがそう言うのを聞きながら、砦の中を見て回る。それ程大きな砦ではなかったが、それなりの兵を養えるほどの備蓄は有った。恐らく後方支援としての役割も有ったのだろう、食糧や武器弾薬は豊富にあった。これは紅の翼が有難く頂く事にする。

 それを見て回ってるうちに残敵の掃討は終わり、味方は後始末をしている。捕虜は牢に入れ、死体を片付けている。

 その様子を見ながら俺は砦の中に入り、指揮官がいただろう部屋に入る。慌てて逃げ出したのだろう、いろいろなものが投げ出されていた。机の上に投げ出された羊皮紙を手に取ってみるが、それ程重要な内容ではなく、すぐに手放す。するとケイジオが部屋に入って来る。

「ここにいたのか」

 俺はケイジオの方をふりかえる。

「何かあったか?」

「いや、今のところは何もない。だが今晩はそうでもないだろう」

 ケイジオはそう言う。

「そうだな、俺もそう思う。まあ、それでも三日持ちこたえればいい。籠城すればなんとでもなるだろう?」

 ケイジオも頷くが、もう一つの報告をする。

「それとな、ブルース。今来た報告なんだが、盗賊に村が襲われたようだ」

 俺はその言葉に意味が呑み込めなかった。

「はぁ? どういうことだそりゃ?」

「その通りの意味だよ、被害状況はよく解らんが、昨日の夜事らしい」

 俺はその言葉を聞くとすぐに部屋を出る。

「ブルースどこに行くんだ?」

「何を言ってるんだ? 村に戻るんだよ!」

 俺の言葉にケイジオは冷静に答える。

「どうせ今から行っても間に合わん、それより今晩の襲撃に備える事の方が先決だ」

 確かにそうだろう、俺達は傭兵だ。仕事をやり遂げなければ報酬ももらえない。ケイジオのように冷酷な態度を取らなければならないことも解る。しかし、俺にはそんな事はできない。村にはリーゼとシャーリーンがいるのだ。

「じゃあお前にここは任せる。俺は何人か連れて村に帰る、戻ってくるまでここを頼む」

「本当にお前は甘いことを言うな。俺達は傭兵だぞ? そんな甘い事を言ってると勝てる戦いも負けてしまうぞ? あいつらの事は忘れろ。今は目の前の戦いに集中しろ」

 解っているケイジオの言う事はもっともだ、それでも俺は忘れる事などできる訳がない。俺はケイジオの言葉を無視するかのように部屋を後にする。

 部屋の外にはカインが立っており、すでに用意を済ませていた。

「すまんなカイン。ついてきてくれるか?」

「腕の立つもの何人かに声を掛けております」

「解った、すぐに出る」

 俺はそう言うと、すぐに外に出る。そして繋がれた馬に跨り、一〇人程の部下達はすでにそこに整列していた。

「これより村の盗賊を蹴散らしに行く。時間がない急ぐぞ」

 俺はそう言うとすぐに馬を走らせる。それに続く部下達。いずれも古くから俺に着いてきてくれている部下達で、みな腕が立つ者達ばかりだ。盗賊位に後れを取る事は無いだろう。

 とにかく今は村に急ごう。無事でいてくれよリーゼ……


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