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少年少女の恋愛物語

作者: あにおた
掲載日:2026/06/27

「アハハ、アハハハハ!!」

「アハハハハハハ!!!」

 突然、暗闇に響いた声。

 反響した笑い声は、あまりにも甲高かった。




「今日も格好いいね」

「そう? ありがとう」

 強い日差しが照りつける通学路の並木道で、二人の小柄な中学生が並んで歩いていた。後ろで話す小学生たちには目もくれず、手を繋いでゆっくりと。


「ねぇ、これからどうする?」

「とりあえず、僕は百均の包丁とかピーラーとかを買おうと思ってるけど」

「もう水槽は買って置いてあるし、私は水を張ってくるよ。それぞれで別行動して集合にしようか」

「了解、夜十時に二人の家の前に集合でいい?」

「おっけー、去年と同じようにだね」

「去年みたいに失敗したら困るけどね」

 そう言って笑う二人の声は、普段より少し高い。

 まだ両親の許可がないと遊びに行けない若い彼らにとって今日は、年に一度、何をしても許される楽しみな日なのだ。

 二人は大きな期待を胸に、別の方向へ歩き出す。




 陽は沈み、異様な静けさを放つ午後十時の住宅街。

 周囲に街灯はなく、それぞれ大きな荷物を背負った二人を照らすのは、僅かな月明かりだけ。

「今年の作戦、上手くいくかな?」

「長い期間かけて準備したんだ。成功してくれないと困る」

「それもそうだね。私たちもこの一年で成長したし」

「今年こそは」

「うん、今年こそは」

 少年少女は力強く頷き合い、家の庭に足を踏み入れた。


 数分後に二人がいたのは、薄暗く何もない地下室。

 部屋の広さは四畳ほどで、高さは一メートルと少し程度。ほとんどの大人が、入るのを断念するであろう狭さだ。

 床や天井、壁は一部を除いてデコボコしていて、まるで小学生が作った砂山のようだ。

 そんな歪な地下室は二等分され、少年が持ってきた布団や包丁、ピーラーが半分を占めている。もう半分には、少女の荷物が置いてあり、横幅が二メートル弱ほどの大きな水槽に、水だけが張ってあった。

「今年はこのあと、自由行動でいいんだよね?」

「そうだね、それぞれで目的を達成しよう」

 少女の確認に、少年は笑顔で答える。

 コップに入れられた炭酸ジュースを、二人同時に持ち上げた。

「それじゃあ、作戦の成功を祈って、」

「「乾杯」」




 少年の包丁から、濃い赤色の液体がドロリと垂れて、布団の染みをさらに広げる。

 ピーラーからは、薄橙色の紙のようなものがぺらりと落ちた。


 小さな少年の布団には、ピクリとも動かない少女。

 小さな少女の水槽には、穏やかな表情で眠る少年。


「「これで、ずっと一緒にいられるよね」」


 二人の口から異口同音に発された言葉は、告げられた相手である中学生の二人に、届くことはない。




「アハハ、アハハハハ!!」

「アハハハハハハ!!!」


 二人の笑い声が、狭い地下室を支配する。

 声は、低く唸るような音となって反響した。

 作戦の成功を喜ぶ二人とは対照的に。

 中学生の二人の無念さに呼応するように。



 狂ったようなその笑い声は、甲高いまま響き続けた。

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