表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
主役になれない傷モノ令嬢は、宮廷魔術師に抱擁される   作者: 米野雪子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

7/27

旦那様の襲来



私は次の日から、魔法塔の受付にランチボックスを届けた。

………これでいいんだ。

いつも昼食を食べる中庭のベンチにも行かなくなった。

別に友人じゃないんだし…一緒に食べる理由なんてないもの。

離縁の事も色々考えなくてはいけないし…

特定の異性と親しくするのは良くない。



「司書長、明日午前中のみ出勤よろしいでしょうか?」


「侯爵家に荷物取りに行くの?」


「はい。旦那様がいない時がいいので」


「いいけど…その腕じゃ大変じゃない?」


「大丈夫です。家令と侍女が手伝ってくれるそうなので」


「そう、気をつけなよ?

 そうだ。地下の資料室で探して欲しいファイルが有るんだけど。

 外相と宰相に頼まれてさぁ。あんたの方が把握してるでしょ?

 お願いできる?」


「はい。何の書類ですか?」



受付をエレノア司書長にまかせて、地下室の資料室に入る。

災害工事記録の去年のファイルと隣国への麦の輸出記録……

ものの3分程でファイルを見つけて、それを抱えてドアに向かった。



「リリィ?」



…え……

この声……

ピタリと足を止める。



「居るんだろ?リリィ」



嘘……全身の肌が総毛立つ。



「さっき君が、ここに入っていくのを見たんだ。

 出てきてくれ、話をしよう」



……旦那様……


何で…こんな時間にここに…足が動かない…



どうしよう…このままじゃ見つかる。

こんな人気のない所で…絶対合いたくない…

がくがくと手が震えているのに気が付いた。



「リリィ?怒らないから、出てきてくれ…」



声がする方から遠ざかる方向へ移動して、

本棚に隠れながら、ドアを目指した。


いやだ…なんでそっとしておいてくれないの…

ドクドクと早鐘を打つ心臓の音が煩い。


声を押し殺して、静かに歩き何とか開きっぱなしのドアから出る。

そのまま素早く階段を登り、図書館へ滑り込んだ。



「司書長!」


「どうしたの?そんな慌てて」


「これ、頼まれたファイルです!地下資料室に旦那様が来ました!

 見つからないように逃げてきたので、ここにも来ると思います!」


「ええっ?何それっ!とにかく応接室に入って鍵締めておきなっ!

 適当に理由つけて追い返すから!」


「はい!すいません!」



バタンッ!ガチャリッ



その5分後くらいに、受付の方でやり取りしているらしい声が聞こえてきた。

結構長い間押し問答していたが、15分後にコンコンとノックされる。



「追い返したよ。もう大丈夫」


「……ありがとうございます…」


「とりあえず明日から寮に入居した方がいいね。

 ったく…恋人と旦那の問題に巻き込まれてあんたも災難だわ…」


「重ね重ね…ご迷惑おかけして申し訳ありません……」


「あんた被害者じゃん。謝らなくていいって。

 …もう話し合いしても解決無理じゃない?

 あっちはあんたを籠絡できると信じて疑ってないし。

 あんたとは誤解があって、話し合えば分かってくれるっ‼︎ だって。

 スッゲェ自惚れ。どんだけ自分に自信あんのかしら」


「離縁申請します…契約書も、診断書もありますし…

 使用人も証言してくれると思います。

 これ以上、私も我慢なりません」


「そうだね。大変だけど、私も協力するよ。

 このままじゃ、あんたの望んでる平穏な生活を壊されちまう」



こっそり侯爵家に帰り、荷物をまとめる。

元々そんなに多くない私物だ。

旦那様から形式だけの心のこもっていない贈り物は全て置いていく。


そういえば、結婚式もしていない…

婚約式の時の白いシンプルなドレスを贈られただけだった。

本当に、何も貰っていない…指輪さえ…


自ら決めてした契約結婚なのに…こんな風に破綻するなんて…

私って…なんなんだろう…ああ…天国の両親をまた悲しませてしまうな。


使用人達に別れを告げ、2年間暮らした侯爵家を後にする。

離縁が成立するまで、ランチボックスの配達は続けてくれるらしい。

みんな涙目で見送ってくれた。必要なら離縁の為の証言もしてくれるそうだ。


旦那様以外は、本当みんないい人達だった…

公務の引継も家令にお願いしたし…私がいなくても大丈夫だろう。


ホテルからチェックアウトして、そのまま受付で鍵を受け取り寮に入居する。

大通りに面した建物で、1人で暮らすには充分な広さ。



「いい部屋ですね。奥様。大通りも一望できますし」


「ふふっ、奥様呼びはもういいわ。リリィと呼んで頂戴」


「ええっ!そ、そんな…恐れ多いです!」


「アンナ、私が侯爵夫人じゃなくなっても、友人でいて欲しいと思っているの。

 だから、慣れて頂戴。それとも友人にはなれない?」


「ああああっ勿体ないお言葉…ありがとうございます!リ、リリィ様!」



嬉し泣きする侍女と共に、荷物の整理を終え就寝する。

明日から、ここが私の家になるのだ…

悲観ばかりしてられない。自立した生活に慣れなければ。


明日はお休みだ。

あの人達がまた職場に来ないように、

早めに離縁申請しなくては。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ