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主役になれない傷モノ令嬢は、宮廷魔術師に抱擁される   作者: 米野雪子


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24/27

親善交流会と告白と帰国



昼間の視察で、もうすでにぐったりだが、

今夜は、親善大使の懇親交流会。

ただ今、優雅なオーケストラが音楽を奏でてています。


第4王子は、婚約者の王女オフィリア殿下と

クルクルと回りながら、楽しそうにダンスをしていた。

あんなに小さいのに、マナーと品が凄い…

さすが、幼少より王族教育を受けている方々だわ。


そして、なぜか私は隣国の男性司書達に囲まれ、

ダンスを申し込まれまくり、社交にも引っ張りだこで、

まだ交流会は中盤だというのに、すでに倒れそうだった。


どうも、こちらの国の女性は、彼らには可愛く見えるようで、

アンナも司書達に大人気。

彼女は粋なりのモテ期に、嬉しい悲鳴をあげている。


気を利かせたヴァレリー様にエスコートされ、バルコニーに私は連れ出された。

やっと一心地付き、はぁと息を吐く。

町を一望できる高い位置にあるお城だから、絶景の夜景が広がっている。



「疲れた?」


「はい…連れ出してくれて助かりました。

 こういう華やかな場に慣れていないし、彼らの止まらないおしゃべりで、

 脳が思考停止しそうです…」


「君、最初は頑張って楽しもうとしてたけど、

 どんどん目に光が無くなるから…

 倒れるんじゃないかと気が気じゃなかったよ。

 大分無理してただろ?」


「ダンスと立食は楽しかったんですけど…

 その後の挨拶回りと懇親交流の会話が長くて…

 司書同士なら気軽だったんですけど

 その後からの高位貴族の方々になるにしたがって…

 変なこと言わないようにと、気を使ってしまいました」


「ほんと貴族同士の会話は、裏があったり駆け引きが多いから神経使うよね…

 でも、今回君は視察兼親善大使みたいなゲストだから、

 駆け引きはしてこないと思うよ?

 もっと簡単に考えて、素直に楽しんで肩の力抜くといい。

 それに、ただでさえ病み上がりなんだから無理しないで」


「そうなんですけど…親善大使は国の代表みたいなものですし…

 そんな訳にはいかないです」


「まあ、リリィのそういう真面目なところも長所なんだけど、

 頑張りすぎて自分の首締めるからなぁ…」


「まだまだ社交は経験不足なので…」


「しっかし、男ども君に群がりすぎだろ。妙に距離も近いし…」


「し、仕事ですからっ」


「そう、何だけどさぁ………今日は特に綺麗だよ…

 そのドレスにして正解だったけど、他の男共が褒めてるのが気に入らない」


「ありがとうございます。

 これ、ヴァレリー様が選んでくれたドレスですもの。

 私も気に入ってるんです。…そのお陰ですね。ふふっ」


「人気者だねリリィは、こっちに来てから常に人に囲まれている。

 特に男に……隣国の男共は君が凄く好きみたいだ…」


「いいえ、そんな事ないです。

 こちらでは無い色合いだから、物珍しいだけですよ。

 司書さん達もおっしゃってましたし…」


「いやいや、前から何度も言ってるけど、リリィは可愛いよ。

 スレンダーで気品があるし、上品な色気がある。

 なんで気が付かないかなぁ…」


「そういうヴァレリー様は、隣国のご令嬢方が見惚れているの気付いてます?

 美貌で四方八方に砲撃しまくって、悪い男ですね」


「勝手に回りが負傷して倒れてるだけだよ。俺は何もしてない」


「ふふふっ、やだっ、何その言い方」


「そっちこそ、なにその可愛い顔。俺の理性を試してるの?」



フワッと気持ちいい風が庭を通って吹きぬけていく。

髪が少し乱れてしまって、それを慌てて抑える。

ヴァレリー様が手を伸ばして、髪を優しく直してくれた。



「ありがとう、ございます」


「リリィ…」


「はい?」



あれ?何か…目が真面目…

いつもと雰囲気が…どうしたんだろう?



「俺たち両思いだし…その少しづつでいいから、

 俺のこと男として意識してくれないか?」


「男性なのは、分かってますよ?」


「…いや…好きだけど…その友人以上恋人未満だろ?

 まだ、男として見られていない」


「はい。…好きです…え?…どういう…」


「男として、見て欲しい」


「………?……」


「あー…君、そういうとこ鈍感だからハッキリ言うけど。

 今以上の関係になりたいと俺は思っている。

 君が──リリィが心から好きなんだ。

 男女の仲に…ちゃんとした恋人になって欲しい。

 つまり、リリィとキスしたり…それ以上のことしたいってこと」


「えっ……」


「困らせてるね…ごめん。

 でも、早く伝えないと…君を誰かに取られそうで。

 どうしても男として、俺を受け入れられないなら…無理だったら…

 これまで通りの関係でいる。

 だから……リリィに男として俺を意識して欲しい……

 これから先、俺が君と人生を共に出来る相手か…考えて欲しいんだ」


「ヴァレリー様……」



そうか、ヴァレリー様と一緒に歩んでいくつもりではいたけど、

リアルに考えたことがなかったかも。

私、男性恐怖症まだ完治してるって言えないし…



「今までと付き合いは変わらないよ。

 ただ、俺に対する意識を変えて欲しいから

 触れる頻度は増えるけど」



嬉しい…凄く嬉しい。

嫌いな訳ない。好き。大好き。


そう言いたい。


でも、私の好きはヴァレリー様の言う好きと同じなのだろうか?

この想いが好きの種類が、よく分からなかった…


この半年間、彼の人となりを見てきたけど、嫌いにならなかったし、

不満なんてなかった、安心したし、楽しかった。


でも……本当に?

本当に私を好きなの?

私は彼を好きなの?


ヴァレリー様は素敵な人だ……

私なんかじゃなくて、他に相応しい人がいるんじゃないの?

これは何度も頭をよぎった。

そして、胸がどうしようもなく苦しくなった。



ああ…どうしても自身が持てない、

自己評価の低さから抜け出せない…

この意気地なしの私の心…



“あのねぇ、あんたの不幸は周りに恵まれなかったってのもあるけど、

その自己評価の低さも影響してるんだよ”


“自分の人生なんだから、脇役ばかりしてないで、

いいかげん主役を演じてハッピーエンドになりなさい”



心の中のエレノア司書長が、

私の後ろ頭をペチンッとはたいている。



そうだ。



彼と未来を生きるって決めたんだ。


今度こそ、自分の人生の主役になろう。




「ど、努力しますっ!」


「ふふっ、悩んだみたいけど…良かった。嫌そうではないね?」


「う、嬉しいです……でも…私…こういうの初めてで…

 醜聞と離婚歴あるくせに…男性経験も恋愛経験も初心者で、

 だから…どうしたらいいのか分からなくて…

 こんな誰かの特別な人に、なるなんて…思ってもみなくて……」


「じゃあ、試しにキスしてみようか?」


「はい?えっ…そそそそんないいいきなりっ‼︎」


「あははっ、頬にだよ。

 それで拒絶反応出たら、絶望的だけど…

 安心して、唇は君の許可なしには奪わないよ」



頭がくらくらする。

さっきから甘い台詞攻撃の追撃で気絶しそう…


私があわあわしていると、目の前にヴァレリー様の顔がある。

両肩に手を置き引き寄せられ、頬に口付けされていた。

温かくて軟らかな感触が頬に伝わって、呆然としている私を

いつの間にか、体全体を抱きしめられているではないか。


うわ…体温高い…やっぱ男の人って体大きい…

私…腕の中にすっぽり納まってる…

何度か抱きしめられてはいたが、こんなに意識的なのは初めてで、

私の中のもう一人の私は、悶えて床を転げ回り大騒ぎ中である。



「……嫌?」


「いいえ…大丈夫、れす…」


「ふふっ…良かった。

 本当に可愛いなぁ…リリィ…

 無理してないよね?少し肩に力はいってるけど…」


「あ…えーと……どうやって肩の力抜けば…」


「はははははっ。本当に君って人は…」



笑いながら更にきつく抱きしめられて、

もう頭の中がグシャグシャで訳がわからない。


ヴァレリー様との異性としての交際がこうして始まり、

私たちは、初めの一歩を踏み出したのだった。




* * * * * * *




帰国の日、別れを惜しむ隣国の司書達と挨拶を済ませて、

馬車に乗り込もうと歩いていると、第4王子とばったり会った。

そして、私とヴァレリー様を見て目を丸くしてこう言った。



「なんだやっぱりお前達は、そういう関係なのか?」


「はい?え?リスレン王子殿下?」


「愛し合っているのだろう?僕とオフィリアのように」


「え……」


「はい。そうなる予定です。俺はもう恋人のつもりですが、

 どこかの馬鹿共が彼女を悪戯に傷つけて、なかなか心を開いてくれないのです。

 だから、口説いている最中なので、温かく見守ってください」


「ヴァ、ヴァレリー様…」


「やっぱりか。いいではないか。お主等似合っているぞ」


「温かなお言葉ありがとうございます。

 今後とも臣下として、精一杯勤めさせていただきます。リスレン王子殿下」


「うむ、励むがよい。

 リーン司書殿の絵本の選別は、いつも興味深くて私見が広がり感謝しておる。

 隣国との書籍交流でますますその見分も広がるだろう。今後も期待しておるぞ。

 シュタイナー副師団長と末永く仲良くな」


「勿体ないお言葉、ありがとうございます…」



ヴァレリー様、王族の扱い上手い。

いや、まだ王子が子供とはいえ、私がおろおろし過ぎというか…

貴族の社交は、侯爵家の公務や視察で学んできたはずなのに、

異性関係の会話が、苦手項目すぎるのが情けない。


今回の出張は色々大変だったけど、やり甲斐もあった。

隣国の司書さん達とも沢山交流して仲良く慣れたし楽しかった。

私達が話しすぎて、通訳さんが喉が枯れ果てて可哀相だったけど。


薬草植物図鑑と古代魔術、古代語辞典、隣国の宗教の聖書、

童話絵本、恋愛小説、隣国の基礎教育の教科書の輸入と翻訳の許可を貰った。


第一段の視察交流会にしては、いい結果だと思っている。

帰国してからも、打ち合わせや手配で忙しくなりそう。


今度は隣国の司書達が、こちらへ視察にくる約束も取り付けたし、

こう話が早いのも、最初は余計な同伴だと思っていた

王族の第4王子の口利きのお陰だった。


そして、私は今後の事を考えて隣国の言葉を学ぶことにした。

そう決意して、乗り込んだ馬車の中で、

疲れが出て速攻眠りこけてしまい、

ヴァレリー様の膝枕をしてもらった事実を知り、目が覚めた時はもう…

ご満悦のヴァレリー様とは対照的に、

私は穴があったら入りたい羞恥心で、いっぱいだった。



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