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主役になれない傷モノ令嬢は、宮廷魔術師に抱擁される   作者: 米野雪子


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隣国へ出発と司書達との交流




「明日、隣国へ行くのですか?」


「ああ、その間にあの騎士を頼む」


「はいはい。全くあなたは恐ろしいですねぇ」


「はて、何のことだか」


「しかし、こう関係者の不幸が続くと、また変な悪評がつきませんか?」


「いいんだよ。舐められるより、恐れられた方が彼女を守れる」


「ふふっ。まあ、こちらとしても、王族のゴミとその一派が掃除できて、

 好都合だから、協力してるんですがね」


「なら、お互い様だ。いい国にして行こう、ハイゼン調停官殿」


「ええ、仰せのままに、シュタイナー副師団長」




* * * * * * *




「本当に、もう大丈夫?無理してない?」


「はい、だってずっと楽しみにしていた視察ですもの」


「まあ、アンナもシュタイナー殿も一緒だから、

 大丈夫だとは思うけど」


「私、これでも少しは強くなったんですよ、エレノア司書長」


「ふふっ、分かった。いってらっしゃい。

 でも、くれぐれも頑張りすぎないのよ?分かった?」


「はい!」



今日は、隣国へ書籍視察へ行く日だ。

王宮の裏口に集合して、出立の準備をしていた。


出発の時間になり馬車に乗り込もうとすると、

第4王子が私の体調を心配して、声をかけてくれた。

まだ8歳だというのに、王族らしい振る舞いは完璧だ。



「大変だったな、リーン司書殿」


「いいえ。こうして無事でしたし、大丈夫です」


「うむ…無理はしていないのだな?」


「はい。結果的に、こんなに大事になってしまい、大変お騒がせして、

 王家の方々にも動いて貰うことになり、お手数とご迷惑をおかけしました」


「叔母上が、王弟妃殿下が色々動いてくれてる。気にするな。

 そなたは何も悪くなかろう?被害者が詫びることはない」



王弟妃殿下…あの方、王族なのに義理堅く

まだ私との約束を守ってくれているのだ。



「そうそう、これはただの独り言として、聞き流して欲しいのだが、

 叔父上…いや王弟殿下が、どうにも最近大人しくてな。

 なんでも、あの色欲、不能になったらしいぞ?

 今までの悪行のバチが当たったのだろう。いい気味だ。はっはっは!」



横に並んで立っているヴァレリー様も、なぜか満面の笑み。

二人で目配せして、何だろう…私の知らない事を通じ合ってるみたい。



「やっと、王族の問題児の阿呆が大人しくなって、皆上機嫌だ。

 しかし、リーン子爵令嬢には、本当に迷惑をかけたな。

 遅くにできた息子だからと、王太后が寵愛して庇うものだから、

 結果的に、正式な沙汰を王家が下せなかったばかりに…

 そなたはあんな阿呆に名誉を傷つけられ、人生を潰されかかったのだ。

 同じ親族として詫びて済むことではないが…本当に申し訳なかった」


「あのっ、リスレン王子殿下が悪いわけではありません。

 お顔をあげてください」


「私はそなたの味方だ。名誉回復に注力しよう。

 何か困ったことがあれば、いつでも頼ってくれ」


「あ、ありがとう、ございます…」



敵だと思っていた人達が、今は味方をしてくれている。

まるで目の前の雲が晴れるように、

私の人生は、信じられないほど輝き出したのだった。


そして、それに続くように、隣国へ向かう道中に、

今度は私の腕を折った騎士が行方不明になったそうだ。


最近、私を害した人達が軒並み何らかの不幸になることが立て続けに起こり、

私の過去の虚偽の悪評の噂も、いつの間にか鳴りを潜めた。


そして、私に嫌がらせをすると、

“呪われる” と、新たな噂が広がり始めていたのだった。




* * * * * * *




ゴトゴトと移ろいゆく景色を見ながら、

馬車の中には、私の前にアンナ、

私の隣にはヴァレリー様で相乗りしている。


一応、隣国語の挨拶と隣国でのマナーも一通り学んだし、

やってはいけないジェスチャーも頭に叩き込んだ。


隣国は、主に男性が働き、女性は家を管理する。

男尊女卑ではなく、非常に女性を大切にする国民性だ。

女性を社会で働かせないのは、他の男性との接触を避けるためだという。

学者肌の方が多くて知識欲が強い。魔術の研究も進んでおり、魔道具も豊富。

そのおかげで、魔力がない人達も不便していなかった。

だから、あのような豊富な書籍がこの国にはあるのだ。


技術が発展しているからと、それを傘に来て他国を支配するのではなく、

国内の発展に役立てている平和主義国だった。

当国と友好国で、隣国の足りない部分の武力支援もしている。

そのお陰で、他国からの武力支配を受けずにいると非常に感謝されている。


だけど、女性が社会進出し始めた当国のことをどう思って、

どういう対応をされるのか、少し不安でもあった。


私は期待半分不安半分で、ドキドキしながら隣国へ向かった。


しかし、それは喜憂だった。



「ようこそ!リーン司書殿!お待ちしてました!」


「うわー、本当に女性の司書だ!可愛いなぁ!」


「それ、司書の制服?カッコイイ!できる女って感じですね!」




テンション、たっか。




この通り、大歓迎である。


隣国の司書は、もちろん全員男性。

肌が少し浅黒くて、ミルクティー色の髪にグレーの瞳の人が多い。

たまに金髪っぽい人もいるけど、少し燻んだ色合い。

私から見るとワイルドな野性味があって、格好いい外見だった。


だから、こちらの王族の特徴の金髪碧眼、ヴァレリー様の銀髪碧眼、

地味な色合いの黒髪茶目の私でさえ、隣国には居ない色で珍しいらしく、

めちゃくちゃキラキラした瞳でガン見された。

特に私の真っ直ぐな黒髪が、綺麗だとワラワラ見物に集まる始末。

そして、妙にフレンドリーで人懐っこい。

ヴァレリー様の殺気が凄いことになったが、これは仕事だから見ないフリした。


少しタジタジになりながら、宮廷図書館に案内され、

目的の書籍を丁寧に詳細にお腹いっぱいになるまで、説明してくれた。

彼らが息継ぎしてんのかってくらい、矢継ぎ早に話を繰り広げるので、 

通訳の方が右往左往して、一番大変そうで気の毒だった。



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