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主役になれない傷モノ令嬢は、宮廷魔術師に抱擁される   作者: 米野雪子


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花祭りのお誘い




「王都の花祭り?」


「リリィ行かない?」


「行きたいでけど…あまり人が多いところはまだ…」


「ああ、なるほどね。でも、俺も一緒だから大丈夫だよ」



離縁して、そろそろ5ヶ月が経とうとしていた。

もう問題無さそうな気がしているのだけれど…

あんなにしつこかった元旦那様の沈黙が不気味で、警戒心が抜けないでいる。

でも、もう案外契約妻の私の事など忘れて、

恋人さんとよろしくやってるのかもしれない。


花祭りは、毎年催される王都のお祭りだった。

なぜか私は縁がなくて、なかなか参加出来ていなかった。



「行きたいなぁ…」


「行こうよ。大丈夫だって。昼は華やかだし、夜はライトアップされて

 幻想的だし、花火もあって綺麗だよ。出店も沢山あって食べ歩きもできるし、

 絶対楽しいよ?」


「い、行きたい!」


「祭りの警備担当騎士の名簿には、元旦那の記載はなかったから、大丈夫」


「ほんと?じゃあ…一緒に行ってくれる?」


「勿論だよ。花祭りの衣装着てみるかい?きっと似合うよ」



この祭りの特長は、さまざまな種類の花で花冠を作った出店があり、

パートナーに一番に合う花冠をプレゼントすると縁が深まるといわれている。

毎年、恋する女性達に大変人気の祭りだった。

花冠さえ購入すれば一人でも参加できるが、

当然パートナーと参加する人が多数で、反面独り身には辛い祭りだった。


私は連れて行ってくれるパートナーに恵まれず、

だからと言って一人で参加する気も起きず、今まで参加する機会がなかった。

だから、ヴァレリー様が誘ってくれたのは、

友人とはいえ凄く嬉しい申し出だった。


町の大通りを通行止めにして催されるので、出店の準備で色んな業者が

忙しなく動き回っているのを図書館の窓から時折見ては、

年甲斐もなくワクワクして浮き足立ってしまっていた。


うわ…どんどん華やかになっていく…

楽しみだなぁ…花冠、どんな花がいいかなぁ…



「なぁに?にこにこして」


「司書長!すいません。町が花祭りに向けて華やかになってきて

 つい、浮わついてしまって…」


「あら、いいのよ?ふふっ、今年はこそは参加するのよね?」


「はい!ヴァレリー様が一緒にって!楽しみです」


「ほおお~?」


「何ですか」


「まあまあ、上手く行ってるみたいで何より。

 でも、好意に甘えて相手をあんまり待たせちゃだめよ」


「…司書長は、彼氏と行くんですか?」


「そうねぇ。誰と行こうかしら?」


「ええ~、まだ絞ってないんですか?」


「モテる女は辛いのよ?

 本当に好きなのか、ただの体目当てかどうか見定めないと、

 遊ばれてポイッなんてゴメンだわ。時間掛けて探らないと。

 あ───面倒くさいっ‼︎ 」


「な、なるほど…見目がいいと、そういう苦労するんですね…」


「好みじゃない男が性欲全開の目で口説いてくるのよ?

 そんなモテ方が嬉しいと思う?

 ほんと気持ち悪いったら。不愉快のが圧倒的に多いわよ」



そうか…美人も大変なんだ…

司書長はそれにダイナマイトボディだし…それ目当ての異性も多いのか。



「あんた良かったじゃん。あれはいい男よ?」


「ヴァレリー様ですか?」


「そう。あの地位と外見で浮いた話を聞いたことないし、

 傲らない誠実な男って貴重なんだから」


「良すぎて、逆に不安になります。まだ遊ばれていた方が気が楽……」


「まーたそうやって自分を卑下する!自分を安売りするんじゃない!

 あんた可愛いんだから!分かった?」


「はぁい……」



バンバンッと背中を叩いて、ヒラヒラと手を振って仕事に戻る司書長。

働く女性の格好よさを凝縮したような人で、私は彼女に憧れていた。

でも、私の見ていない所で色々苦労しているのを少し知って、

勝手にその人となりを自分が見たイメージで、決めつけては良くないと反省した。




* * * * * * *




「最っ悪。花祭りの見回り警備担当に当たっちまった」


「ご愁傷さまオーエン。まあ、そんな問題起こらないだろ。

 注意するのは、毎年恒例の酔っぱらいとスリとカップルの痴話喧嘩くらい。

 それに、お前の大好きな若い女の子も沢山来るし、警備がてら楽しめよ」


「んだよ。仕事だから遊べねーし。殆どパートナー同伴だろ。

 お前はいいよな。あの可愛い彼女と行くんだろ?」


「一応護衛としての同行だよ」


「名目上はだろ?脈はありそうか?」


「うん。でも少し時間はかかりそうだ」


「無理もねーよ…よく立ち直れたよな彼女。

 あんな大人しい子を寄ってたかって貴族共が玩具にしてたんだろ?

 暇人の権力者はえげつねぇわ…可哀想に運が悪かったなぁ」


「正直、まだ立ち直ってない。離縁の件も、今必死に前に進もうとしている。

 まず、その手助けをしたい。口説くのはその後だな…」


「珍しく随分と惚れ込んだな。まあ、お前なら彼女は適任だと思うよ。

 でも、あの事件以降、どんな令嬢も拒否してたお前が、どういう心境の変化?」


「図書館で再会したのは偶然で、本当に自然に彼女に惹かれたんだ。

 そして、あの時の彼女だったと知って同情した。何とかして負の連鎖を

 断ち切らせてあげたかった。俺も無関係じゃなかったしね。

 でも、あんな目に合ったのに…変に拗れてないし、

 駆け引きと打算が一切ない子なんだ。貴族令嬢らしくなくて気取ってないし…

 優しくて素直で…一緒にいると心から安らげる。

 賢い才女なのに傲らないし…それに笑顔がめちゃくちゃ可愛い。

 彼女の良いところを上げたけど、正直、この想いは理屈じゃないんだ」


「はいはい。わかった分かった、ごちそうさま。

 でも、あの件は元々お前関係ないだろ?王命で治癒頼まれただけなんだし。

 てゆうーか、実は図書館の司書達って密かに人気なんだよな。

 才女で、慎ましい美人が多いって。

 賢い女を嫌うプライドの高い男はまだ多いけど、俺は好きだよ。

 まあ、守ってやれよ。前の旦那もまだ彼女を諦めてないんだろ?」



分かっている。

彼女たちと知り合いになりたい男共は沢山いる。

昔とは女性への求める価値観が違ってきているのだ。

地位目当てに男に全力でのし掛かってくる貴族令嬢は悪習とされ、

女性が社会進出して自立し始め、時代が変化しつつある。

と言っても店番やら店員が一般的で、いわば、司書達は働く女性の中で、

国家資格をもった公務員、高位の役職なのだ。



「ああ、勿論だよ」


「治癒の件、話さねぇの?彼女に」


「思い出させたくないんだ。本当にひどい状態だったから…

 今の所は、初めて知った体にしてるし、

 彼女まだ、いっぱいいっぱいだし情報が多いと混乱するだろ。

 もう少し落ち着いてから話すよ」


「腕折られたんだよな?しかも何日も放置されてたんだろ?」


「ああ、リリィの離縁の詳細を聞いて、

 あの王弟事件の当事者だったのには驚いたけど。

 遠征部に異動した途端、秘密裏に治癒依頼されて行ってみたら、

 彼女が牢の中でたった一人、何もかも諦めた瞳をして震えていた。

 怖くて痛かっただろうに、腕を治癒した後、彼女…

 笑顔でありがとうってお礼を言ったんだ…

 あの時と人となりは変わってなくて、嬉しかったけど。

 でもその反面、あの半死半生の悲惨な外見と違いすぎてて、

 再会した後も、同一人物だとは信じられなかった」


「あー聞いてるだけで痛々しい。

 冤罪で醜聞って酷くね?王弟お咎めなしだったけ?」


「ああ。王弟には、その内俺なりのやり方で、罪は償ってもらうよ」


「え、こわっ」



王家の権力でやりたい放題で、いい噂を聞かない王弟殿下。

特に女性関係が酷く、平民の娘相手に強姦紛いの騒ぎをよく起こしている。

王家もいつまであの阿呆を庇うつもりなのか。

いい加減うんざりするし不愉快だ。それは王弟妃もそうだろう。

今度、王弟妃に良いものを贈ってやろうか。




コンコン




「どうぞ」


「じゃあ、俺帰るわ」


「ああ、じゃあなオーエン」


「失礼します。シュタイナー副師団長。

 花祭りの警備担当の騎士の名簿とスケジュールを提出にきました」


「ああ、ご苦労さん。今日はもういいよ」


「えっ、あ、はい」


「花祭りの準備で道路が閉鎖されて動きにくいし、

 特に急ぎの仕事がなければ上がっていい」


「はい。あの…」


「何?」


「副師団長は、花祭りに参加するんですか?」


「ああ」


「誰と…ですか?」


「今口説いてる最中だから、秘密」


「そう、ですか…もしかして、あのランチボックスの女性ですか?

 でも、あの人って確か王弟の…」


「秘密って言ったよね?詮索しないでくれる?」


「すいません。…では、失礼します」



最近、フェリスの俺を見る目が熱を持っているのに、気づいていた。

部下だから丁寧に対応していたが、勘違いさせてしまったのかもしれない。


リリィのあの悪評も間に受けている感じで、彼女を遠回しに悪く言うこともあった。

それに、リリィが俺を避け始めたのも彼女がきっかけだ。


やはり、遠征部はいくら優秀でも、

女性は入部させない方がいいかもしれない。




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