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主役になれない傷モノ令嬢は、宮廷魔術師に抱擁される   作者: 米野雪子


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夜会のドレスと花畑



「リリィ様、こちらなんかどうですか?」


「うーん…アンナ、少し可愛いすぎない?」


「絶対似合いますよ?」


「親善大使交流会の夜会用だから、もう少し大人っぽい方がいいかなぁ…」


「リリィ、これは?」


「素敵ですけど…肩丸出し……」


「ヴァレリー様の選ぶドレスはセクシーですねぇ」


「君、細いからこれくらい露出しても嫌らしくないよ?」


「リリィ様、試着してみましょう!ね?」



隣国への視察出張用の夜会ドレスを選びに、

ヴァレリー様とアンナに同行して貰っていた。


結局、ヴァレリー様が選んでくれた、ワンショルダーのマーメイドドレスが

意外と一番似合っていた。

少し奇抜なデザインに見えたが、細身の私には丁度良く、

彼の言う通り上品に着こなせていたのだ。


肉厚の人は嫌らしくなって娼婦のようになる絶妙なバランスのデザインだった。

色も、上から青から黒のグラデーションが綺麗で気品に満ちていて、

私の細身のラインの良さを引き立ててくれている。


それに合わせた真珠の5連ネックレスと腕輪で華やかさを加え、

髪にも真珠の飾りを施して統一感を出し、上品で落ち着いた雰囲気になった。



「ヘアスタイルどうしますか?アップだと肩が寒そうですし…」


「片側に横に流してゆるく前で結ぼうかな…軽くカールして…」


「剥き出しの肩の方に髪を落としましょう!サイドは編み込みして…どうです?」


「いいね。可愛い可愛い」



買い物後に3人でカフェで休憩して、ヘアスタイルについて議論する。

こんな普通の日々が、今の私には幸せだった。



「あ、そうだ、私もう行きますね」


「え?アンナ?」


「ちょっと野暮用が!では、ヴァレリー様、リリィ様をお願いします。

 お先に失礼します!」


「うん。任せて、またね」


「気を付けて帰ってね…」



アンナは自分の分のお会計を済ませて、颯爽と手を振って去っていった。

どうしたんだろう。最近こういうの多いような…

最初は3人なのに、途中から必ずヴァレリー様と2人きりになるのだ。



「気を利かせてくれたんだよ…」


「え?」


「いや、何でもない。リリィこの後予定ある?」


「ううん。別に、寮に帰ってダラダラするだけ」


「じゃあ、少し俺の用事に付き合ってくれる?」



穏やかな天気の午後にヴァレリー様と町を歩く。

護衛だからと手をがっしり掴まれ、

手を繋いで歩く様はまるで恋人同士だ。



「どこ行くの?」


「秘密」


「どうして?」


「リリィをビックリさせたいから」



随分遠くまで行くんだな…と彼に連れられるまま歩いていた。

町の中心にある公園に入っていく。

フェンスに囲われた場所に来ると、彼は鍵を取り出しそのフェンスの扉を開けて

私の手を引いたまま一緒に中に入っていく。



「ここ…関係者以外は入園禁止じゃ…」


「俺が関係者だから大丈夫」


「もしかして薬草園…?宮廷魔法塔の管轄の…」


「良く知ってるね。目隠しすれば良かったな」



温室も通り抜けて、更に奥に行く。

あまり見たことのない植物ばかりで、物珍しさに回りを見渡す。

ふわりと良い香りが鼻をかすめ、髪が靡く。

ここだけ別世界みたいだ…



「ここだよ、お姫様」



以前、私が好きだといっていた野草花の一面の群生地。

サワサワと揺れる小さくて美しい花々が咲き誇りる様は、天国のようだった。



「これ…全部ハーブガーデン?」


「そう。君小さい花が好きだって言ってただろう?

 花束にしたかったんだけど、小さい花はすぐしおれるから、

 直接連れてきたんだ」


「……うん…ありがとう…」


「気に入った?」


「うん。とても……もう少しここにいても?」


「好きなだけいるといい」



どれ位そこにいただろう。

もう、青空はなく暗くなり始めていた。

オレンジ色と紫のピンクの空が広がり、そして草花が発光し始めた。



「花が光って見える…」


「夜光草だね」


「光るの?」


「そう、灯火魔石の材料にもなってる。外灯が光るのはこの花のお陰なんだ」


「綺麗…私…自然の美しさが一番好きなの…」


「うん。そうだね。リリィは確かバラはあまり好きじゃないだろ?」


「うん。形も綺麗でゴージャスで完璧なんだけど…あのむせ返る香りも…

 美しさを感じない。押し付けがましい美しさは、心が震えない…」


「君らしい純粋な…美しい言葉だね」



そういうと、体を屈めて繋いでいる手の甲に口付けを落とす。

銀髪が夕日に赤く染まって、キラキラ光を放ってなんて綺麗……

私がほんやり見とれていると、殺人的な微笑みを眼前で浴びてしまい、

ますます動けなくなってしまった。



「………くしゅ…っ…」


「あ、まずい。寒くなってきたね。そろそろ帰ろうか?」


「…え…うわっ!…何何何!」


「はははっ!お送りしますよ、お姫様」



粋なり手を引寄せられると同時に、腰をぐいっと掴み上げられフワリと体が舞う。

腰と太ももの下に腕を回され、彼の片腕の上で腰掛けているみたいな格好になる。

バランスを取るために両手で彼の両肩に慌てて掴むと、

眼下に彼の見上げる真っ青な瞳が泣きたいぐらい美しい。



「楽しめました?姫君」


「うん。ありがとう……下ろして?」


「ここ出るまで駄目」


「えっ!ちょっとヴァレリー様!!」


「ほらほら暴れない。落ちるよ?」



羞恥でジタバタする私を力で押さえ、

フェンスの囲いまで連行される。



「下ろしてってっ!重いからっ!」


「全然軽いよ。何言ってんの?」



最近はスキンシップというか、

ジャレているのか分からない絡み方をされ、振り回されている。

無邪気に笑うヴァレリー様が嬉しそうで、

本気で怒れない私も私だが…


それに、彼に触れられるのは嫌では無かった。




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