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主役になれない傷モノ令嬢は、宮廷魔術師に抱擁される   作者: 米野雪子


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これってやっぱりデート?



「あれ?髪…いつもと違うね」


「はい。仕事じゃない時はいつもこんな感じです」


「へぇ、いいねぇ。ハーフアップだと更に若く見えるし

 黒髪の艶が引き立って綺麗だね。

 そのワンピースも制服と違って新鮮で素敵だ。リリィに似合ってるよ」


「…あ…ありがとうござい…ます…」


「はははっ、また照れてる。可愛いなぁ」



仕事の時はいつもきつく縛っているから、

下ろすとイメージが変わるのは分かるが、

ちょっと…この人…誉め上手過ぎない?



「ヴァレリー様も今日雰囲気違いますね。格好いいです」


「ほんと?ありがとう。嬉しいよ」



ヴァレリー様はいつも白か黒のローブ姿だが、

今日は濃い紫のスーツをラフに着こなしていた。

黒いシャツにクラバットめちゃくちゃ似合う。

この人の場合は、元が良いから何着ても格好良く決まるだよね。


でも、良かった…新しくワンピースドレス買っておいて。

いつもの格好だと全然釣り合わなかった。



「こんな路地裏に…」


「いいだろ?隠れ屋っぽくて。いつも1人でこっそり来てるんだ。

 変に小洒落じゃれてないし、料理も美味いし」


「そんな秘密の場所に、いいんですか?」


「お祝いだからね。人目を気にしないで楽しみたいだろ?」



さりげなくエスコートされ、レストランに入店。

奥の個室に通され、席に着く。

照明も控えめで、凄く落ちつく。



「さて、何食べたい?」


「お薦めありますか?」


「苦手な食べ物ある?」


「いいえ、特には。ほとんど大丈夫です」


「じゃあ、ゆっくり出来るし、コース料理にしようか?」



コース料理も家庭料理が出てきたりして、作法を気にせず楽しく食事ができた。

こういう友人関係でいられるのは凄く楽しいし、安心する。

でも、片方がそれ以上の感情を抱いてしまうと、

それは呆気なく無くなってしまう。

私は経験上、男女の恋愛感情というものに嫌悪感があった。



「そういえば、聞きたいな。全て終わったら、話してくれるんだろ?」


「…そうですね。ご迷惑おかけしましたし…あまり面白くない話しですが、

 聞いて貰えますか?」


「うん。ずっと待ってた。教えて?」



両肘をテーブルに置き手を組んで、顔を傾けて微笑む目の前の美しい男性。

時々彼の美貌に目眩がするが、彼は友人だ。


なるべく自分の感情は入れずに、坦々と話した。

元旦那様との契約結婚、白い結婚、恋人さんのこと、元旦那様の心変わりのこと、

契約婚を反故されそうになったこと、腕の怪我、職場に来られたこと。

なぜ、契約婚を受け入れたか、前の王弟の冤罪事件もサラッと伝えた。



「…なるほどね……」


「重い話しで…すいません…」


「何言ってるの?一番辛い目に合ったのは君だろう?」


「でも、無事離縁もしましたし、もう大丈夫です」


「本当に?」


「ええ、今こんな風に楽しく過ごせていて、幸せですもの」


「君は何も悪くないのに、酷い話しだ…辛かっただろう…

 そもそもの元凶は王弟か……あのくそ野郎…」


「え…ん? いえ…そんな…」


「話してくれてありがとう」



何だか不穏な言葉を聞いたような気がするけど…



「リリィ、左手出して」


「え?はい」


「まだ痛む?」


「いえ、ギプスしてますし…痛みもヴァレリー様のお陰で全然…」



おずおずと手を伸ばすと、そっと左手を握られる。労ってくれているのだろうか。

ふわっと金色の光に包まれる。また痛み止めをかけてくれたらしい。


ああ、どうしよう…涙が出そう…

お願いだから、優しくしないで…

私、そういうの慣れてないんです。



「この腕もやっぱりそうだったのか。人為的な力が加わっていたのは

 分かっていたんだ。でも、君は話したく無さそうだったから、

 踏み込まなかった…今更だけど、もっと早く助けたかった」


「やっぱりバレてたんですね。

 言わなかったのは私が巻き込みたくなかったんです。

 元旦那様に親しい異性がいると知られたら、どんな言いがかりをつけられるか

 分からなかったので…」


「うん。そうか。しかし…こんなに細い腕を…よくも……別れて正解だよ」


「私が既婚者なのも分かってたんですか?王弟の事件も…」


「いや、独身だと思ってた。指輪してないし、指に指輪跡も付いてないから、

 もし、してても上手く行ってない結婚だとは思ったよ。

 王弟の冤罪事件は俺はその時期管轄が違ったから、資料で読んだ。

 君がその渦中の人なのは……今、初めて知ったよ」


「知らなくて良かったです。普通に接してくれて嬉しかったですし。

 ブレスレットをくれたのは、なにも知らない時でしたよね?

 知り合って間もない私に…なぜですか?」


「君が何かに怯えてるのは、気づいていたからね。

 少しでも力になりたかった」


「優しすぎます…ヴァレリー様」


「リリィだから。仕事以外で誰にでも優しくしてる訳じゃない」



それは、どういう意味?

でも…この先は聞きたくない。

聞いたら、この関係が壊れてしまうみたいで怖い。

ぎゅっと少し強めに手を握られて、ドキリとする。



「元旦那は執着が強そうだから、当分注意した方がいい」


「はい。ハイゼン調停官にも言われました。護衛の騎士を雇った方がいいと。

 でも断りました。寮は警備員がいるし、1人で外出しなければいいかなと」


「騎士は元旦那の知り合いもいるから、やめた方がいいだろう。

 君の情報が筒抜けになる可能性もある。平日の仕事中は司書長がいるし、

 じゃあ、休日に外出するときは俺が同伴するってのは?友人兼護衛って事で」


「いや、そこまで甘えられないです。

 ヴァレリー様の折角のお休みを奪うわけにはいきません」


「友人なのに?俺だけ?そう思ってるの。寂しいなぁ…」


「そっ…んな、こと…は…」


「ははははっ。いや、本当に頼ってよ。

 都合付かない時はちゃんと断るから心配しないで。

 ……それに、リリィって男が苦手だろ?」


「なんで知っ……私、言いました?」


「これだけ嫌な目に合ってれば、苦手になるのは当然だよ。

 女は男より物理的に圧倒的に弱いから、恐怖感もあるだろ。

 俺といても怖い?」


「いえ…大丈夫です」


「じゃあ、決まり。いいね?」


「えっ……」


「デザートが来たよ。食べよう」



この人…誘導上手い…了承されてしまった。

どうして私を気に掛けるの?そう聞いてしまいたい。

この変な期待感も、手放してしまいたい。


デザート食べがてら、連絡用の手のひらサイズの薄い黒曜石板を渡された。

そこに指でなぞって文字を書くと、それがダイレクトでヴァレリー様に届くのだ。

逆もしかり。凄い…こんなのあるんだ…



「これ…凄い…」


「いいだろ?これでいつでも連絡できるよ」


「高価なんじゃ…」


「しぃ────」



そう言って唇に人差し指を押し当てられ固まる。

唇に指触れてますけどっ!咄嗟に後ろへ頭を引く。



「そういう野暮な事は言わない。お祝いだよ」


「わ、私貰ってばかりです!」


「そうか、あげ過ぎなのも気を使わせるか…」


「私…何も返せないです…」


「時々こうやって会ってくれればいいよ」


「ヴァレリー様には、それで得はあるんですか?」


「うん。それから敬語やめない?友人だろ?」


「は、はあ…」


「そういえば、君を捕縛して腕を折った騎士はまだ現役なの?」


「え?ええ。多分…」


「どんな奴?」


「黒髪で黒目の…そんなに長くないクセ髪を少し後ろで縛って…無表情な…

 背も体格も大きくて、少し怖い雰囲気の方でした…名は存じ上げません」


「ふうん…元旦那ってクロス・ヴァルト・ラインハルト侯爵家当主で、

 宮廷騎士団所属の今は指導役。金髪に近いブラウンの長い髪と

 黄緑の瞳のだよね。…ちなみに彼の恋人の名前と外見的特徴分かる?」


「はい。確かジャンヌさんだったと思います。赤髪で青い瞳の華やかで、

 胸が大きく腰も括れた色っぽい方だと聞いています。私は面識ないですが。

 …元旦那様をご存じなのですか?」


「なるほど。分かった。

 多分俺、仕事だけど元旦那に会ったことあるよ。

 女好きだって噂は有名だけど、どうやら事実らしいね」


「あの…何かするつもりじゃないですよね?

 もう関係ない人達なので、私は関わらなければ平気です」


「女好きは自惚れが強い。自分に靡かない女には特に執着が強いんだ。

 それから恋人と元旦那は、逃げた君を逆恨みしている可能性もある。

 一応警戒対象として、チェックしておきたいんだよ。

 その方が君を守れるだろ?」


「私なんかに、そこまでして頂かなくても…もう充分ですし…」


「あのさ、もう自分を卑下しないでよ。君はすごく魅力的だし可愛いよ。 

 最悪な奴らに目を付けられたのは、たまたま運が悪かっただけだ。

 それを自分のせいだと思わないでくれ。

 卑屈な気持ちは、鼻の効くそういう奴らを引き付けてしまう。

 現に元旦那はそうだったろ?

 もうそんな奴らに、リリィが傷ついて欲しくない」


「…はい…そうですね。その通りです。

 私、自分を大事にします」


「君はここまで、よく頑張ったよ。自分をもっと誇っていい」



彼は小さく蹲る私の心を優しく包み込むように施してくれた。

時々過去について質問をして、ヴァレリー様は何かを考え込んでいたが、

その後はたわいもない会話をして、楽しく過ごした。

こんな風に周囲を気にせず、異性と何のしがらみも無く過ごすのは、

本当に久しぶりで心から楽しかった。



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