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上州義理人情伝「アン ころ もち」  作者: 苺鈴


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第34話 牽制

「ねぇ!もち君は、初恋の聖先輩と幼馴染の佐倉君のどっちが好きなの~♡?」


 石井さんは、熱でも浮かれた顔で僕に迫りながらとんでもないことを尋ねてきた!


「いっ、石井さん…!なっ、ななな、なんてことを…!?」


「あははっ!夏海ちゃん。望月の本命は、聖さんに決まってんだろ?高校生探偵の俺が言うんだから、間違いないよー!」


 答えに困っていた僕の背中をサクマが優しく叩きながら茶化すように言った。


 つか!コイツちゃっかり、石井さんを名前で呼びやがった!?


「えーっ?佐倉君は、もち君が聖先輩に奪われちゃっていいのー?」


 奪われるって、どういう意味…!?


「ははっ…。奪うもなにも、俺は望月とはただの幼馴染なだけだから……。」


 そんなこと当たり前じゃん…!!


 だけど…サクマは、どこかさみしそうに苦笑している…。


 やっぱ、昨夜のことを気にしてるのかな……?


「まりりん!ボクに遠慮することないんだよ~?アンズってすごく可愛いから♡!まりりんだって、アンズに恋しちゃっても不思議じゃないもん。」


 アンリがまたとんでもない爆弾発言をするので、なぜか石井さんは無言のままその場にしゃがみ込み悶え苦しみ(でも嬉しそう?)、サクマは顔を真っ赤にしてアンリの方を睨んだ。


「そっ、そんなことあるわけないじゃないですかッ!?俺、彼女だっていますし…!!たしかに、望月は男にしては…可愛い顔してるけど……。だからって!俺はコイツにそんな…よこしまなことは……」


 サクマは、きっと大好きな彼女と離れてこんな辺境の地『前橋市』にやって来たせいで、人恋しくなって、昨夜はあんな凶行に走ってしまったんだと思う……。


 そうじゃなきゃ、男の僕とあんなことをするはずないもん……!!!


「まぁ、まりりんがアンズのことをどう思っていようとボクは、全然構わないから。でもね、ボクはアンズを誰にもわたさないよ?アンズは、ボクだけのアンズだからね♡」


 アンリは、僕の身体を抱き締めながら、さらに爆弾発言を投下したせいで、石井さんはその場に倒れ込んで幸せそうな顔で昇天してしまった…。


「あっ、アンリ…!?」


 アンリは、僕の初恋の女の子で……男だって分かった今でも、好きだけど……


 でも、アンリと恋人同士になるとか……アンリと―――昨夜のサクマみたいなことするなんて、やっぱり想像できないし…!!!


 想像したくないし…!!!



「アンリ…!僕は……っ。」


 アンリとは……サクマみたいに、大切な友達でいたいんだ。


 僕は、僕を抱き締めているアンリの胸を押して、アンリの腕の中から出ようとするんだけど…


 アンリの肩幅は、僕よりずっと広くて、力強くって……


 それが、昨夜のサクマの腕の中を思い出して―――僕は、なんだかアンリが怖くなってしまった……。


「アンズ?どうしたのー?身体が震えてるけど、もしかして寒い?」


 アンリの声は、優しいけど―――僕と違って、ちゃんと声変わりした男の人の声で……


「アンズ?」


「ごめん…っ!!僕……トイレ…!!」


 僕は、アンリの腕の中から出たくてたまらなくて、とっさに言った。


「あぁっ!ごめんね、アンズ…。」


 ようやく、アンリは僕の身体を離してくれて、僕は逃げるように保健室から出て行った。




 サクマのせいだ……っ。


 あいつが、僕にあんなことするから……!!


 僕は、アンリのことを変に意識してしまって………



「うわぁっ!?」


 何かに足を取られた気がして、僕はその場で転んでしまった。


 ん…っ?


 あれ?おかしい、全然痛くない…!?


 硬くて冷たい廊下で思いっきりすっ転んだはずなのに、僕の身体は全然痛みを感じなかった。


 というか…硬くて冷たいはずの床の上が、なぜかカーペットでも引いてあるみたい柔らかくて、なんか生温かい……?


 この感触、前にも感じたような……?



「―――杏子様。」


 僕の目の前に、大きなキ〇タマ袋を床に広げた化け狸のコロが立っていた!!


「コロ!?」 


 つまり、僕の身体を下にあるこの柔らかくて生温かいものは……(以下略)


「ふふふ。杏子様、昨夜はお楽しみでしたね♡?」



 

















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