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上州義理人情伝「アン ころ もち」  作者: 苺鈴


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第32話 お昼休み

 僕達が学校に着いたのは、2限の終わる時間だった。


「それじゃあ、ボクは2年の教室だから、アンズとまりりんとは、ここでお別れだねぇ…。」


 アンリは、玄関で上履きに履き替えながらさみしそう言った。


 サクマは、僕と同じ1年3組で一緒に授業を受けながら、休み時間に例の事件の聞き込みをするそうだ。


「アンリ。僕達、同じ校内にいるんだから、昼休みには会えるでしょ?」


「そうそう!ボク、お弁当いっぱい作ってもらって来たら!みんなで一緒に食べようねー♪」


 アンリは、立派な風呂敷に包まれた3段くらいありそうなお重を僕達に見せつけながら言った。


「あぁ、すみません。俺は、事件の聞き込みがあるので…。お昼は、ご一緒できません。」


「まりりん!一緒に食べようよ~?ご飯食べながらでも聞き込みはできるでしょ!だって、うちの学校で失踪した子はアンズと同じクラスの子なんだからさー。お昼になったら、ボクが二人の教室に行くから、そこでご飯食べながらやればいいじゃん?」


「そうだよ、サクマ?せっかくだから、一緒に食べようよ。」


「お前は、俺と一緒でいいのかよ…?」


 サクマは、僕にだけ聞こえるようにボソッと呟いた…。


 サクマは、まだ昨夜のことを気にしているみたい……。


「んー?二人とも、どうしたの~?なんか、車の中でもよそよそしかったけど…ケンカでもしたの?」


 ケンカどころか……僕達は、一夜の過ちを犯してしまったんだ……。


「ケンカなんかしてないよ~!あっ、もう次の授業始まるよー!サクマ、行こう!アンリ、またお昼休みにね!」


 僕は、わざとらしくサクマの腕を掴んで、引っ張った。


「うん♡!二人とも、またね~♪」


 アンリは、ボク達に手を振りながら自分の教室に向かって行った。


「おっ、オイ…!?望月…!」


「サクマ。わかってると思うけど、昨夜のことは…アンリには、絶対に言わないでね?」


「あんなこと、誰にだって言えるわけないだろ…!!」


「それに、何度も言うけど、僕はもう全然気にしてないから…。だから…」


「んあ~っ!だから…そんな風に俺のこと見つめんなよ…っ!!」


 サクマは、なぜか顔を真っ赤にして、僕の手を振りほどくと、階段を駆け足で登って行った。





☆☆☆

☆☆☆☆

☆☆☆☆☆




――昼休み――


「ねぇ、ねぇ!あの男の子が、例の東京から来た探偵君じゃない♡?」


「制服カッコイイよねー♡?やっぱ、私立の名門校のエリートなんだわ♡!」


「きゃぁあああーっ♡!?なんで杏璃様が1年の教室に降臨してるの~♡!?」


「聖先輩、今日もお美しいわ~♡!聖先輩の美しいお(ぐし)だけでご飯3杯いけるわ~♡!!」


「あ~ん♡!聖先輩、こっち向いてくださぁ~い♡!」


「転校生の席の周りだけ、顔面偏差値爆上がりスギィ―ッ♡!」


「俺も杏璃様達とお昼ご一緒したいゾ~♡!」


「どうして、ホモが湧いてるんですかねぇ…?」


 僕のクラスでは、東京から来た高校生探偵サクマと学校一の超絶美男子アンリを一目見ようと、学年や性別を問わず多くの生徒達が押し寄せて来た!!



「―――これじゃあ、聞き込みどころか、落ち着いて飯も食えないぞ!」


 野次馬根性剥き出しの上州人の多さにサクマは、ドン引きしながら叫んだ。


「そうだね…!場所を変えよう。―――んあぁ…。ボク、なんだか眩暈がするみたい…!ちょっと、保健室行って来るね……。」


 アンリがわざとらしく手で額を抑えながら立ち上がった。


「あぁっ!じゃあ、僕が付き添ぅ…いますよ?ア…っ、聖先輩!」


 具合の悪そうなアンリを労わるように僕も立ち上がってわざとらしく言った。


「それでは、俺もご一緒します!」


 サクマも立ち上がって、僕らは野次馬たちをかきわけて教室から出て行くことに成功した!


 さすがに、アンリが体調不良だと言えば、みんな遠慮してくれて、誰も保健室へ着いて来ようとはしかなかった。


 

「えへへ♪どう?ボク、迫真の演技だったでしょうー♡?」


 保健室に入ると、アンリはケロっと元気な姿になり自慢げに言った。



「―――おい?お前ら、ここへ何しに来たんだ?」


 保健室の奥から石関先生が現れた。


「何って?お昼食べに来たんですよー?噂の高校生探偵のまりりんを一目見ようと教室にいっぱい人が集まっちゃって、大変だったんですよ~。」 


 アンリは、保健室のテーブルの上に風呂敷に包まれたお弁当を開けて並べながら言った。


 アンリの持って来たお弁当は、おせち料理みたいな立派なお重に、豪勢なローストビーフやハンバーグなどの肉料理に新鮮な魚介のマリネ、彩の良い季節の野菜を使った洋風の炒め物やサラダに、デザートにフルーツが乗ったミニケーキまで入っている!


「いやいや!俺よりも、聖さんを見に来た生徒の方が圧倒的に多かったですよ?『聖先輩♡』とか『杏璃様~♡』とか熱狂的な女子の歓声がすごかったので…」


「サクマだって、女の子達が『東京から来た知的イケメン♡』とか、『氷室学園なら将来有望な超エリートよ~♡』なんて、キャアキャア言われてたじゃん?」


「アンズだって『あの杏子色の髪の子、小さくて可愛い♡』とか『ポメラニアンみたい♡』って、上級生の女の子たちが騒いでたよー?」


 いや、僕は二人と違って、女子に良い男として見られてないじゃん…。



「そんなことは、どうだっていいんだよ!ここは、食堂じゃないんだぞ?ほら、飯食うなら他行きな!」


「えーっ!?先生、堅いこと言わないでよ~?いっぱいあるので、良かったら先生も一緒に食べませんか?」


「いいよ。俺は、もう済ませたから。」


「あっ!そっか、先生は、いつも先生のママが作ったお弁当食べてますもんね~?ボク、しょっちゅう保健室来るから知ってますよー?」


 石関先生、良い歳してお母さんが作ったお弁当食べてるんだ…。


「あぁ!?お袋が勝手に作って無理やり俺に押しつけてるだけだからな…!」


「さぁ♪まりりん、アンズ、遠慮しないでいっぱい食べてね~♡!」 


 アンリは、僕とサクマにお箸と取り皿を配りながら言った。


「おいおい!だから、ここは食事する場所じゃないんだぞ?他にも空いてる教室があるだろー?」


「だって、ここ暖房が効いててあったかいじゃないですか~♡?他の教室は、寒くって…。あっ!これ、美味しい~♡!ほら、アンズ!この、お肉のやつアンズが好きなやつだよー。アンズ、あ~んして♡?」


 アンリは、箸でミートボールを摘まむと、僕の口元に運んで来た!


「ちょ、ちょっと、アンリ…!むぐっ…!?あっ、おいしい~♡」


 アンリは、僕の口に箸で強引にミートボールを押し込んで食べさせた。


 トマトソースのミートボールは、冷めていても肉が柔らかくジューシーですごく美味しい♡


「でしょ~♡?これ絶対、アンズが好きだ思ったんだよ~♡!あぁっ、アンズのお口にトマトソースが付いてるよ?」


 アンリは、僕の口元に手を伸ばすと、白い綺麗な指先で僕の唇に付いたミートソースを拭って…


 赤いトマトソースがついた指を美味しそうに舌で舐めた!


「あっ、アンリ…!?」


「えへへ♡ アンズのお口はトマト味だね~♪」



「おいおい…お前ら、保健室でいちゃつくなよー?」


 石関先生が呆れたように言った…。


「べっ、別にいちゃついてないです…!!アンリが勝手にやっただけですから…!!」







 




 








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