第24話 ひじりん と まりりん
僕は、いつの間にか眠ってしまったみたいで……
「アンズ♡!気がついたみたいだね?」
僕が目を覚ますと、寝心地の良いふかふかのベッドの上で――なぜか、アンリに抱きしめられていた!?
「ふぁっ!?あっ、アンリ…!?ここは……どこ…?」
アンリの腕の中から辺りを見回すと、どこかのホテルの一室らしく…高い天井と高級感のあるソファーやサイドテーブルが目に入った。
「――利根川沿いに佇む老舗高級ホテルの『群馬ロイヤルホテル』だよ。望月、久しぶりだね。」
この聞き覚えのある懐かしい声は…!!
僕は、アンリの腕の中から顔を出して声の主の方を見た。
センター分けの黒髪のマッシュヘアに、銀縁のメガネ、グレーの学生服を第一ボタンまできっちり留めているこの優等生野郎は…!
「あぁ…っ!?サクマ…!?なんで、サクマが…!?」
東京にいるはずの僕の幼馴染の『サクマ』こと、佐倉(サクら)真理(マり)が優しく微笑みながら立っていた!
「サクマ?って、もしかして『まりりん』のことー?」
アンリがサクマを見ながら尋ねた。
えっ?『まりりん』って、まさか…
「聖さん…!その呼び方は、やめてください!!」
サクマが嫌そうにアンリに抗議した。
名前が真理だから、まりりんって…
「えぇ~?いいでしょ~?まりりん♡!ボクのことは『ひじりん』でいいよ♪」
アンリは、悪びれた様子もなく僕を抱き締めたまま無邪気に言った。
「はぁー…。聖さんって、本当に自由人ですねぇ…。さっきも、警察署で、石関先生が望月のことを受付で聞いてる間に、勝手にズカズカ奥の部屋に入って行っちゃうから…!」
サクマは、疲れ切ったように溜息をついて言った…。
「あははっ!ごめん、ごめん。だって、アンズのことが心配だったんだよ~!あんな、おっかない顔のお巡さんに連行されちゃったから、ボク、アンズが酷い尋問でも受けてるんじゃないかって!!」
「たしかに、赤城さんは顔は怖いけど…良い人だったよ?」
「本当~?アンズ、ボクが迎えに来た時、なんだかすごく疲れたみたいにぐったりしてて、すぐ気を失っちゃったんだよー?」
「それで、気を失った望月を、俺が宿泊中のこの群馬ロイヤルホテルまで連れて来たんだよ。石関先生にあとでお礼言っとけよ?俺達をここまで車で送ってくれたんだからな。先生は、まだ仕事が残ってるそうだから学校に戻ったんだ。」
サクマがロイヤルホテルに宿泊中?
「サクマは、どうして群馬に来たの?」
今日は平日だし、学校休んで泊りでこんなド田舎県に来るなんて…?
「あ―…。ちょっと、いろいろあって…こっちに来る用があったから、ついでに望月にも会いに来てやったんだよ!人見知りでシャイな望月君は、こっちでもお友達作りに難儀してると思ってさ~www」
「余計なお世話だよ~!サクマこそ、僕が転校したせいでクラスでボッチだったんじゃないのかーwww?」
「心配すんな。俺の方がお前より友達多かっただろwww?」
「それは、お前が名字も名前も女の子みたいで、みんなから揶揄われてたのを僕が『サクマ』って良いニックネームを付けてやったからだろ~?」
「自分だって『杏子』なんて可愛い名前してるくせにwww」
「――いいなぁ~。二人とも仲良しさんなんだねぇ……。」
僕とサクマのやり取りを黙って見ていたアンリが羨ましそうに呟いた。
「聖さんと望月の方が仲良しじゃないですか!?そんな、野郎同士でベッドの中で抱き合ってるなんて…!!」
サクマは、何かを誤解したらしく、ちょっと目のやり場に困ったように顔を赤らめて僕達から目を逸らして言った…。
「サクマ、誤解だ!!僕とアンリは、そんないかがわいしい関係じゃないよー!!」
「そうだよ、まりりん!!ボクとアンズは、将来を誓い合った仲だから~♡ ハグ以上のことは~、きちんと籍を入れてから…♡……ねっ♡?」
ファ――――――――――ッ!?
「『ねっ♡?』じゃないよ~!?アンリ、変なこと言わないでよ…!!」
「望月ィ…!?まさか…こんなド田舎であまりの人恋しさに、ソッチ系に奔ってしまったのか……!?」




