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上州義理人情伝「アン ころ もち」  作者: 苺鈴


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第23話 血

 あの小林が僕と仲直りしたかったなんて……!?


 信じられない……。


「望月君。一昨日の晩、君は石関先生に車で自宅近くの大胡駅付近まで送迎してもらったそうだね?」


「はい。」


 石関先生は、自宅まで送るって言ってくれたけど、家まで来てもらったら、ばあちゃんが旅行で不在なのがバレちゃうから…。


「そこから、家まで帰る途中で誰かに会ったりしなかったかな?」


「いえ…。もう、暗い時間だったので…。」


「不審な車なども見かけなかったかな?」


「はい。」


「そうか…。小林君の足取りなんだが、午後11時頃に(みね)町にあるコンビニの防犯カメラに映ったのが最後で、その後の足取りはまだ分かっていないんだ。この辺の田舎は都会に比べて防犯カメラが少ないからね…。」


「11時過ぎじゃ、交通量も少なそうですもんね…。」


「あぁ…。捜査は、難航しているよ…。一刻も早く、失踪中の少年達全員を無事に保護して、ご家族の元に帰してやりたいんだが…。」


 赤城刑事は、険しい顔で額を抑えながら言った…。


「僕、全然、お役に立てなくて…なんか…すみません。」


「いや…。そもそも、失踪事件の事情聴取は建前で―――君に署まで来てもらったのは、小林君達から受けていたいじめのことについて聞きたかったからだ。教師や生徒がいる学校では、話ずらいこともここなら話せると思ってね。」


 赤城刑事は、僕のことを思って、わざわざ警察署まで連れて来たのか…!


「そうだったんですか…。」


「望月君、さっきも話したように君が小林君達から受けた行為は、犯罪の域に達している。小林君が所持していた物的証拠もある。君が被害届を出せば、間違いなく受理されるだろう。」


「赤城さん。僕は、あいつらが僕にしてきたことは…絶対許せないし…っ!!小林も小渕も生方も、全員、僕をいじめた報いを受けてほしいです…!!だから……!!

 だから…必ず小林の糞ウンコ野郎を見つけてくださいね!あいつ、野球やってたから細身のわりに、力強いし、ゴキブリ並みにしぶとそうなので…絶対、まだ生きてると思うので!!絶対に生かしたまま、僕のところにつれて来て…僕の前で全裸で土下座させてやりますからっ!!!」


 まずは、小林を捕まえないと、罪に問えないからね…!!


「よし、わかった!我々、群馬県警前橋警察署が総力を挙げて、必ず小林君の身柄を確保して!!―――全裸土下座は、強制わいせつ罪になるため許可できないが、金〇の一つや二つ蹴り上げるくらいは大目に見よう!!」


「赤城さん、クッキーはお好きですか?」


「あぁ!私は、こう見えても下戸でね。酒が一滴も飲めないが、甘い物には目がないんだ。」


「それなら、良かった。僕、あとでクッキー焼いて持ってきますね♪」


 クッキーの作り方は、アンリの家のステラさんっていう中年のおばさんメイドさんに教わったんだ。



「―――赤城刑事!緊急の連絡です。―――で――――が……!」


 突然、取調室に若い警官が入って来て、赤城刑事に駆け寄ると、僕に聞こえないように赤城刑事に小声で耳打ちしている。


「何ィー!?赤城南麓で大量の血液らしき液体を発見だって…!?」


 赤城刑事が驚いたような顔で大声で叫んだ。


 赤城南麓で大量の血液……!?


「赤城刑事…!声に出しちゃダメじゃないですか~!!とっ、とにかく、すぐ来てください!!」


「あぁ、わかった。すまん、望月君…。――おい、亀里(かめさと)!誰か空いてる奴にこの子を家まで送迎するように手配してくれ!」 


「はっ、はい…!すぐに手配します!」


 赤城さんは、慌ただしく立ち上がると取調室を後にした。


「あっ!僕、自力で帰れますので…!」


「いやいや!ダメだよ~!君だって、知ってるでしょう?今、君くらいの男の子が前橋市内で相次いで失踪してるんだから!ひとりで帰すわけにはいかないよ~!ここでちょっと待っててね?」


 亀里と呼ばれた若い警官も慌ただしく取調室から出て行った。





 赤城南麓で…大量の血液……?



 血………



 血……!?




 いやだ………なにこれ……!?



 こんなの…知らない……!!



 僕、こんな記憶……知らない…!!


 何かが焦げているような匂いがして……



 目の前が真っ赤な血でいっぱいで……


 僕の服にも…身体にも…生温かい…真っ赤な血が滴り落ちて…………




 

「―――アンズ…!!アンズはどこにいるんですか!?アンズぅ~!!」


 遠くから…アンリの声がする……?


「おいっ!?コラーッ!!待ちなさ~いッ!君達、いったいどっから入ったの~~!?」


 亀里さんが驚いたような声で叫んでいる…。


「あぁっ!すみません!俺たち、決して怪しいものではないので…!聖さーん!?待ってください!勝手に部屋に入っちゃダメですよー!!」


 ん!?この聞き覚えのある声は……!


 誰だっけ…?


「アンズ―♡ッ!!ここにいたんだねぇ~!」


 取調室のドアを乱暴にぶち破って、アンリが現れた!


「アンリ…!?ふぁっ…!?」


 アンリは、椅子に座っていた僕に抱き着いてきた。


「アンズぅ~♡!無事で良かったぁー!ボク、心配したんだよ~!!」


「アンリ………。」


「アンズ!?どうしたの、アンズぅ~!?」


 アンリの温かい大きな腕の中で抱きしめられていると…


 僕は、なんだか、心の底から安心しきってしまって……


 体中の力が抜けてしまった……




 






 



 


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