第21話 幼馴染
2人組の警察官がアンズを両サイドから取り囲んで、連行しようとしている!!
「待って…!うぅ…っ!アンズを連れて行かないでぇ…!!」
クソ…ッ!!
こんな時に…!!
ボクは、また突発的な眩暈を起こしてしまい、立ち上がることができなくなってしまった…。
「アンズ…ッ!!!」
「アンリ…!!」
ついにアンズが警官たちに囲まれたまま美術室準備室から締め出されてしまった…。
「―――クッソォ―…ッ!!」
ボクは、何もできなかった……。
眩暈もぜんぜん収まらなくて…
情けないことに…ボクは、座り込んでいるのも辛くなって、その場に倒れ込んでしまった…。
「聖!大丈夫か?」
石関先生が心配そうにボクに駆け寄る。
「石関先生…っ、ボクのことなんかどうでもいいから…!!アンズを…!!アンズを助けなくちゃ…」
「落ち着け、聖。相手が警察じゃあ、俺達には、どうすることもできないだろ……。」
「先生…!?先生は、アンズがどうなってもいいと思ってるんですか!?あんな、令状もなしにいきなり、連れて行くなんて…!誘拐と一緒じゃないですかー!?こういう時は、お巡さんを呼ばないと!!」
「いや、望月はお巡りさん(警察)が連れて行ったんだぞ…?聖、とにかく落ち着け。とりあえず…そこのソファーまで移動できるか?」
「大丈夫です…!!」
眩暈は、さっきよりは収まってきたから、ボクは少しふらつきながら、なんとか立ち上がった。
「先生、車持ってますよね?ボクを奴らのアジトまで連れて行ってください!!」
「はぁっ!?アジトって、まさか警察署のことを言ってんのか…?」
「そうです!!ボクのアンズを誘拐した極悪人共を成敗しに行きましょう!ほら、さっさと車の準備してくださいよー?」
「おいおい!?馬鹿なこと言ってんじゃねぇーよ!聖、望月を連れて行ったあの赤城さんは、群馬県警の中でもベテランの刑事さんだからな?実は、俺の遠縁の親戚なんだけどよ…あの人は顔はいかついけど、人情味のある人で、妻子持ちで子煩悩だって、俺のお袋が言ってたんだよ。
だから心配するな、赤城さんなら、望月を悪いようにはしないさ…。」
「そんなこと知りませんよ!!先生、早く駐車場に行きましょう!!」
「聖…!お前は、さっさと授業に戻れ。また留年したら、お前のお袋さんが悲しむぞ?」
ボクは留年してアンズと一緒に修学旅行に行くんだもん♡!!
「先生には、関係ないじゃないですかー?先生、どうしてもボクを敵のアジトに連れて行かないのなら……!」
ボクは、詰襟の学制服を脱ぎ捨て、ワイシャツのボタンを思いっきり引きちぎった。
「聖!?お前、何やってんだ…!?」
「先生が連れて行ってくれないなら…ボク『石関先生に密室に連れ込まれて、服を破かれて襲われそうになった!』って、校長先生に言いつけますよ~?そしたら、校長先生が110番してパトカーがお迎えに来てくれますよね~♪」
「はぁああーっ!?お前、何バカなこと言ってんだよ!?」
「ボクは本気ですよ?先生もご存じだと思いますが、ボクの親は学校に多額の寄付をしているんですよ?校長先生は、ボクと先生のどちらの言い分を信じると思いますかー?」
「んあぁーっ!!わかったよ…!警察署までお前を送って行けばいいんだな?」
「はい♡!じゃあ、ボク先に駐車場で待ってるので、40秒で支度して来てくださいね!あんまり遅いと、ボク『石関先生に襲われた~』って、校長室に駆け込みますから♪」
「聖、お前…天使みたいな綺麗な顔してるくせに、悪魔みたいな野郎だな……!!」
「先生、うだうだ言ってないで早くしてくださいよ~?」
「あのなぁ…!保健医が私用で外出するには、いろいろ手続きとかが…」
「じゃあ、ボクが体調不良で倒れて早退することになって、親が迎えに来れないから代わりに送って行くって、ていで、さっさと外出許可貰ってくださいよ~!」
「お前、策士だな…!」
「アンズのためだったら、ボクなんでもしますから♡!!」
またアンズに出会えたんだもん…!!
6年前の夏に、アンズと会えなくなってしまってから…
アンズがまたボクのところに戻って来てくれるように――大っ嫌いな病院にも何度も入退院を繰り返して、どんな辛い治療も手術も乗り越えてきたんだ。
ボクは、もうあの頃の――小さくて、弱くて、泣き虫で…いつもアンズに守られて甘えてばっかりだった情けないボクじゃないんだ!!
今度は、ボクがアンズを守るんだ!!
☆☆☆
☆☆☆☆
☆☆☆☆☆
遅い!遅い!!遅い~~~!!!
さっきから、ずっと職員用の駐車場で待ってるのに、石関先生が来ない―――!!!
もうっ!あと1分たって来なかったら、もう直接110番してやる~~~!!
「―――あのぉ?前橋X高校の生徒さんですか?」
急に声を掛けられてボクが振り返ると――この辺では、見かけない光沢のあるシックなグレーの学生服を着た男の子が立っていた。
「はい、そうですけどー?君は?」
「あぁ!すみません、俺は東京の私立氷室学園高等部1年の佐倉真理といいます。」
佐倉真理君は、ボクに学生証を見せながら丁寧に挨拶してくれた。
1年てことは、アンズと同い年か。
佐倉君は、身長はボクより低いけど、アンズよりはずっと高い。
育ちの良さそうな坊ちゃん刈の黒髪に、真面目そうな銀縁メガネをかけている。
「ボクは、ここの2年の聖 杏璃です。佐倉君って、可愛い名前だね~。」
下の名前も真理なんて、女の子みたい。
「そういう、聖さんだって『アンリ』なんて、可愛いお名前じゃないですか…?」
「あははっ。そうだねー。それで、佐倉君はどうして、うちの学校に?」
東京の学校の子がこんな群馬のド田舎学校に来るなんてねぇ…?
「俺の幼馴染がこの学校にいるんです。同じ学校だったんですけど、今年の2学期にこちらに転校してしまって…。それで、会いに来たんですけど…まだ授業中ですかね?」
「うん。ボクは、ちょっと用事があって早退するんだけど、だいたい4時頃にはホームルームが終るから…今、3時40分くらいだから、もう少し待った方がいいかもね?」
「そうですかぁ…。教えてくださりありがとうございます!」
佐倉君は、丁寧にお辞儀をしながらボクにお礼を言った。
「えへへ、どういたしまして!そのお友達と会えるといいねー♪ちなみに、なんていう子?ボク、2年だから1年の子はあんまり知らないんだけどね。」
「望月杏子っていう子です。あぁ、杏子って女の子みたいな名前ですけど、男なんですよ。」
「アンズ!?佐倉君って、アンズの友達なの!?」
「えっ?聖さん、望月のこと知ってるんですか!?」




