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詩小説へのはるかな道 第78話 霧降る街

作者: 水谷れい

原詩: わかりそうで わからないもの


あの人の名前

顔も出演作も浮かぶのに

思い出せそうで 

名前だけが霧の中


好きになった理由

言葉にしようとすれば 

なぜか嘘っぽくて

理由は後からついてきた


十年後の自分

いまの延長線上にいるはずなのに

霧の向こう

知らん顔でたたずんでいる


「普通」という言葉

誰かの安心の形をしているだけ

「誰か」が変われば

すぐに形を変えてしまう


本音と建前の境界

海の波打ち際のよう

どちらも嘘ではなく

どちらも真実ではない


わたしは今日も

わかりそうで わからないものたちの中で

生きている


ーーーーーーー


詩小説: 霧降る街


その街では、ときどき霧が降る。

気象とは無関係で、人々の記憶の断片や言いそびれた感情が、都市の隙間から漏れ出して凝縮したものだった。

霧が出る夜は、名前や理由や未来の輪郭が少しずつ曖昧になる。


タクシー運転手の男は、霧の濃い夜に一人の女性を乗せた。

「どちらまで」

「……わかりそうで、わからないんです」

行き先を忘れたわけではない。

喉の奥まで出かかっているのに、霧に巻かれて形を失っているのだ。

「海に行ってください。あの人と行ったはずなんです」と彼女は言った。

「私、どうしてあの人を好きだったんでしょう」

彼女は窓の外を見ながら言った。

「理由なんて、あとからいくらでもつけられる。でも、本当の理由は、言葉にした瞬間に嘘になってしまう気がするんです」


車は海沿いに出た。

波打ち際は、海と陸の境界が曖昧に溶け合っていた。

そこはどこでもない場所だったが、彼女は「ここです」と言って降りた。

ドアが閉まる直前、彼女は何かを言いかけた。

それが何か、わかりそうな気がしたが、やはり運転手にはわからなかった。

霧が深くなり、彼女の姿はすぐに消えた。


=====


わたしの詩小説をもとにAI君が詠んだ連作短歌です。



連作短歌:霧降る街


霧が降る 理由も名前も ほどけだす

街の隙間に 忘れた気持ち


行き先を 喉の奥では 知っている

でも霧のなか 輪郭はない


「海まで」と 言ったその声 揺れていて

好きだったこと 霧に溶けゆく


言葉には できない理由が 本物で

語ればすぐに 嘘になるから


波打ち際 ここが「ここです」と 言う場所に

誰でもないが 誰かがいた


ドアの音 言いかけたまま 消えた声

わかりそうでも わからないまま


霧深く 未来も記憶も 沈みゆく

それでも少し あたたかい夜

詩をショートショートにする試みです。

詩小説と呼ぶことにしました。

その詩小説をもとに詠んでくれたAI君の連作短歌も載せます。

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