表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
政略結婚の旦那は恋人持ち。その恋人は事故物件(笑)  作者: 福嶋莉佳(福島リカ)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

1/3

第1話


「君との結婚は形式的なものでしかない」


「私には恋人がいる、彼女と別れるつもりはない」


結婚初日。

起業家の彼は淡々と告げた。


政略結婚とはいえ──

恋人持ちの男と結婚するなんて、夢にも思わなかった。


「はぁ」

私は間抜けな返事しかできなかった。


「その代わり君に不自由はさせないつもりだ。

自由に過ごしたまえ、

ただし家門に泥を塗る行為だけは控えてくれよ」


無表情のまま言い放ち、彼は部屋を出ていった。

泥を塗っているのは、むしろあなたでしょうに…


ショックだったが、

彼が好き!で結婚したわけではなかったので、

私は割り切れた。


盲目なのか、おとなしそうに見えたのか、

何も反論しないと思ったのだろう。


ええ、反論しますよもちろん。

若くして結婚したのに、おバカな夫に

縛られる生活なんて御免こうむりたいもの――



「君は自由に過ごしてくれ」


彼はウキウキした様子で出ていった。

きっと浮気相手に会いに行くのでしょう。


自由に過ごさせていただきます。

こっそり彼の跡をついて行った。



「君だけだ」


デレデレ顔。そんな表情できるのね…


「嬉しい♡」


どこから絞り出してるの?

と聞きたくなるぶりっ子声。


…痛々しいバカップル…


「ありがとー♡嬉しい♡大切にするね♡」


芝居がかったリアクション…

一瞬、ハンターのような目に見えたのは気のせい?


「大好き♡あなただけ♡」


彼女はずっとキャピキャピテンション(笑)

そして彼と別れた。


…気になって、彼女の跡をついて行くことにした。



「お願いしまーす♡ ダイヤだし高値でお願いね♡」


早速、彼からのプレゼントを質屋に出していた。

慣れすぎでしょ。常連なの?


「私の彼を知らないの?

あ、彼の名前でつけといてね♡」


彼の名を使ってドレスショップで女王張りの態度。

彼の名前は名刺代わりですか。


「お待たせ〜♡」


!?

えっ!?

恋人いるの!?

衝撃の事実発覚。


「見てみて♡ 今日の服も似合ってる?」

「あなたのために選んだのよ♡」


恋人のために、彼の名義で買ったのですね。


「お式楽しみ〜♡ みんな羨ましがるね♡」

「オーダーメイドのドレスにして正解♡

そう思わない?」


結婚式=マウントですか。

恋人が婚約者だったとは…

彼は財布と名刺でしかなかったみたい。


さて、どうしようか――



彼は金回りのいい男である。

だから彼女も目を付けたのであろう。


「はぁ…」


仕事終わりでお疲れの様子。

暖炉の前で肩を落とし、表情が陰っていた。


「どうぞ」


紅茶を差し出す。彼は意外そうな顔で私を見る。


少なくとも彼のおかげで何不自由ない生活が

できているから、このくらいは。


そして、財布として扱われている彼を

少し憐れんだから。


「…ありがとう」


それだけ言って、彼は紅茶を口にした。



あの日以来、彼とは多少会話が増えた。

…相変わらず恋人には会っているが。


「…君はなにも求めないのだな」

「女は皆、何かを求めるものだと思っていた」


「そういうわけでは…」

私は言葉を濁した。


「何か望むものはないのか?」


相変わらず無愛想な顔のまま、

それでも言葉だけは不思議と柔らかかった。


「…それなら」


そう言って私は書類を見せた。

彼の恋人の調査書だ。


「……」


彼は調査書を読んで固まった。

さて、どうするのだろう。

彼の表情がみるみる変わるのを私は静観した。



「今日はどうしたの?♡

またお買い物につれていってくれるの?」


浮気相手はニコニコと夫にすり寄る。

夫は彼女を押しのけて言い放つ。


「私の名を使って散財していたようだな」


「えっ」


「しっかり取り立てさせてもらうぞ」


「ちょ、ちょっと待って! 私たち恋人同士なのに、

なんで――」


「恋人? お前にとって私は財布でしかないのだろう?

お前に本命がいるのも知っているぞ」


「!?」


「…お前の恋人は知り合いでな。彼に謝らなければ…」

「彼は浮気を許さない男だからな…」


「や、やめてよ!! 彼とは結婚を控えているのよ!?」


彼女はしがみつくが、

夫は振り切って馬車に乗り込んだ。


「お金ないし!!」

「ふざけんな!! 来週には式なのよ!!」


散々貢がせといてお金ないの?

事故物件すぎる。


ヒステリックに叫び、

地団駄を踏む彼女が遠ざかっていく。


「…いいのですか?」


「ああ…」


疲れは抜け切れていないが、

せいせいした様子でもあった。


「…すまなかった、君を蔑ろにしていて」

「償わせてほしい。やり直させてくれないか」


夫は必死に言葉を重ねる。

私は答えず、ただ沈黙のまま彼を見つめた。


馬車が大きく揺れる。

進む先も、夫婦の行方も、

まだ定まってはいなかった。

ここまで読んでくださり、ありがとうございます。

ブックマークや感想・評価などいただけると励みになります。

◆お知らせ

今後の新作予告や更新情報は、Twitter(X)でお知らせしています。

→ @serena_narou

ぜひフォローしてチェックしていただけたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
投資とかお金稼ぐ才能はあるんだけど、恋愛下手で財布くん扱いや詐欺まがい嘘つき女によく引っ掛けられて、軽く女性不信になってる知り合いが居たので、こういう人いるよなぁって思いました。
>進む先も、夫婦の行方も、 まだ定まってはいなかった。 ええ… 即離婚か、それができなければ白い結婚で離婚かのどっちかしかないのでは!? 白い結婚は女にもかなりメリットがあると思う。嫌な男の夜の相手…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ