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第十三話 真っ二つ

 タイミングを間違えれば死。外しても死。失敗は許されません。

 それでも私は、腕に魔力を込めていきます。

 準備はそれで、すべてでした。


「ふんっ!」


 次の瞬間、私は思いっ切り跳び上がりました。

 飛行ではなく跳躍。先ほどのように、瞬間的に魔力を使った浮遊魔法で、無理やり跳び上がったのです。

 私は柱に沿うように、側面へ飛び上がっていきます。

 そして同時に、腕に魔力を込めていきます。


「ノルブラスタ!」


 柱に片腕を向け、中級の爆破魔法をぶっ放します。

 同時に、私は黙って吹き飛びます。

 普通なら、反動の強い魔法の詠唱時には衝撃を緩和する魔法も、同時に扱うはずなのです。


 ですが私は、それをしませんでした。

 魔力の消費量を抑えたかったというのもありますが……本当の理由は、まさにこうして吹き飛ぶため!


「ノルブラスタ!」


 私は空中でもう片腕から改めて魔法を放ちます。

 二回の魔法を使ったのではありません。

 ついさっきまでこれらの魔法は一つでした。


 妖精は魔法生物。

 その腕には魔力を増幅する機能が備わっています。

 言わば生まれ付き杖を二本持っているような物。

 私だって、基本的には腕を束ねて魔法を放ちますが、途中で無理やり二つに分けることだって出来るのです。


 勿論、魔法の威力は半減しますが、今回の目的にはそれで十分。

 魔法使い本人を狙うならともかく。

 女性の頭上を狙うなら、これで十分なのです!


「何の……」


 何のつもりだ。女性は多分そう言いたかったのでしょう。

 彼女がそれを言い終える前に、答えはこちらに倒れて来ました。


「っ!? おまえ!」


 私が狙ったのは、まさに彼女の背後の柱!

 異変に気が付いた女性が走り出します。

 熱によって脆くなり、ひび割れた柱はとても簡単に折れるもの。爆破魔法なんて当てられたらひとたまりも無いでしょう。

 柱は天井を巻き込み、無数の瓦礫を降らせながら折れ……


『――――!!!』


 前方へと飛び込んだ女性の背後に倒れました。


「ぐっ!」


 私の体は勢いを失い、再び地面に叩きつけられます。

 先程とは違い今回は落下しただけ。

 軽い私に大したダメージはありません。


 しかしながら、それは彼女も同じでしょう。


「ふふ……」


 飛び込み、うつ伏せに倒れた女性がなにやら呟いています。


「ふはは! 何やら企んでいたみたいだけど、失敗だね! 今度こそお前は……」


 膝立ちになって狂気的に笑う女性。

 そんな彼女を横目に私は……


「上、気を付けた方がいいですよ」


 頭を下げて、衝撃に備えました。


『――!!!!!!――』


 私が放った二発の魔法は共に柱の根本に命中していました。

 一発目は吹き飛ぶ事を優先したこともあって、少し威力は落ちましたが結果的にはそれで良かったようです。

 時間差で倒れた柱は女性を押しつぶし、瓦礫が追い打ちをかけるように降り注ぎました。


「ちゃんと警戒してれば避けられたかもしれないのに」


 それでもさすがに、限界が来ました。

 私は仰向けに地面に転がって天井を見上げます。

 四本中二本の柱が倒れた事で、部屋が崩壊してしまうかも、と思っていましたがその心配は無かったようです。

 残る二本の柱が頑強だったから?


 いいえ、むしろその逆です。

 入った時も何と無く気が付いていましたが、この部屋の天井はとても薄く、降り注いだ瓦礫も少ないものでした。

 柱は言わばハリボテのような物で、簡単に倒れたのもそのおかげです。

 ではその上に何があるのか、答えは見れば分かります。


「凄い機構ですねぇ……」


 数十本もの太い管が中央の球体の上に繋がり、その先は右左前後ろ斜め上へ様々な方向へと伸びています。

 私は古代の遺跡には詳しく無いので何の装置なのかは分かりませんが、あの、部屋の中央にある球体を維持している、何らかの機構なのでしょう。


「とりあえず……ヴァリウスを助け出さないと……」


 私は起き上がり、右足を軸に立ち上がるろうとしますが……


「ぐうっ……」


 そのまま崩れ落ちました。

 どうやら体を酷使し過ぎたようです。

 今度こそ私の体は動きません。

 魔力も先程ので本当に全て使い切りました。

 もう、一瞬浮き上がることすら出来ないでしょう。


「ごめんなさいヴァリウス……少しだけ……待っていて下さい…………」


 私は地面に伏し、そう呟いて目を閉じました。








『――――!!!』

「えっ?」


 何かが吹き飛ぶような音。

 一体何が起きたのでしょう。

 私は咄嗟に目を開き、顔を上げます。


 土煙が巻き起こる空間。

 視界の中心に捉えたのは折れた柱のような影。

 それは、根本からだけなく、中央部で真っ二つに……


「スプライトウェブ」

「きゃあ!?」


 折れた柱の間から魔力の網が放たれ私の体に取り付きます。

 土煙の中心に現れたのは人影。

 杖を持っていることから間違い無くあの女性だと分かります。

 一体何が起こっているのでしょう。

 女性は確かに柱に押しつぶされたはず。


「どうして!?」


 疑問は口から出ていました。

 女性は答えず、ただこちらへと歩いて来ます。

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