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84話 いい加減ズック手に入れなアカン!!


 日が沈み始め、夜の帳が下りようとしている。ちび共が家に帰る時間だ。

 まぁ、その肝心の家も壊れてたりするので、今は一旦家が壊れてない家庭はそのまま暮らし、家が壊れて住めないよ~! という状態の家庭は、武闘会に使った武舞台がキレイに片付いたところなので、今はそこを仮の住まいにしてもらっているようだ。プライベートなんてあったもんじゃないが、家がないのだからしょうがない。幸い、寝具などはきちんと用意されている。床に敷くタイプの、俺的には見慣れた布団である。この世界の寝具と言えば、基本はベッドなのだが。

 この世界での布団は、どうやら緊急時に使う寝袋的な立ち位置にあるらしい。

 布団がそんな立ち位置であることに純日本人としては誠に遺憾である。と、言いたい所だが、生憎と我が家(前世)はベッドを使っていたので、布団なんて祖父母の家へ遊びに行く時くらいしか見かけなかった。だから、ぶっちゃけそんな反感は覚えていない。というか、興味もない。どっちでも良いんじゃね? って感じだ。


 それはともかく靴だ。靴を入手せねば。

 いい加減ズック手に入れなアカン!!




◇◇◇




「という訳で、遊びに来てみました。靴とか作れねぇ?」

「何がという訳で、なのか分からんが……旦那も無茶を言いやがる。オレらはあくまで鍛冶師だぜ? ったく」 


 やれやれ頭が痛いぜ、といった感じで、頭を片手で抑えて首を振るギムリとレギン。


「前に言ってた腕時計とやらは作ろうと思えば作れるだろうが、靴となると別だ。金属靴で良いなら話は別だが……そうじゃねぇんだろ?」

「つーか、金属靴で良いなら、剣の待機状態を靴にすれば良いだけの話だしな」


 レギンが何の気なしにさらりと言ってのける。

 その発想はなかったッッッ!!! ん~。アホなのかな~? あ、俺ってアホでしたね。さーせん。

 ま、まぁいいさ。素足に金属靴とか冷たいだろうし! あ、俺『熱変動耐性Lv3』もあるんでしたね。い、良いんだ良いんだ!! そ、そう!! 履き心地悪いもん!! 素足に金属靴とか!! そうだよ。だから俺は間違ってない!! ……と、思っておいた方が精神的に楽なので、そう思うことにしておく。


「お、おい……一人百面相してどうしたんだよ旦那……。大丈夫か……?」

「特に頭の方」

「そこのレギンさん黙りなさい!! あとギムリさん? そういう時はね、触れずにいてあげるのが優しさってもんだと思いますのワタクシ。あ、だからってヒソヒソすんなよ? それが一番傷つくから。何も気付いてない素振りで真顔を保ってやんのが一番だ」

「はぁ……。旦那は、なんなんだ? 時折、女みたいな口調で喋り出したりするけど……ひょっとして旦那ってオカ」

「ちげぇぞ!!? ふざけてるだけな!? だからセーラも喜ぶなアホ!! 目覚めたりなんかしてねぇから!! ったく……」


 なんか、アニメの影響なのか何なのか知らんけど、たまに無意識にやっちゃうんだよなぁ。クロのエセ関西弁が一時期移っちゃってたみたいに……。


「はぁ……。話し戻すぞ? うちのスタイリストがうるさくてさ。どうしても黒の革靴が良いんだってよ。でも自分じゃ作れねぇからって、すげぇ悔しがってた。腕時計もそうだ」

「ほ~。……ん? すたいりすとって、なんだ?」

「ん? あぁ~。まぁ要は、なんだ? 客に似合う服装を見立ててやる仕事をしてる奴……ってとこかな。うちの場合は、メイドリーダーが元服屋の跡継ぎで服装にこだわる奴だから、スタイリストやってるってだけなんだけど」

「ほ~。まぁでも、確かにそのすたいりすとってメイドの見る目は間違ってねぇな。確かに旦那のその服装には、黒の革靴が似合いそうだ。銀の腕時計とネックレスを欲しがるのも、分かるぜ」

「あぁ、今よりずっとビシッと決まってる姿が、容易にイメージできるぜ」


 うんうん、と頷くギムリとレギン。

 何ならついでに奏たちも頷いている。シンシアとセーラは頷きつつも、何処か思案顔だ。あの2人の頭には、何か別の図が浮かんでいるのかもしれない。セーラの脳内はどうせ女装だろうから省くとして、シンシアは何を考えているのだろうか。


《シンシア》

《っ? はい!》

《ひょっとして、今のとは違う服着て欲しいとか思ってる?》

《ええっ!? ど、どうしてバレたんですか!?》

《なんか考え込んでたから。で、どういう服なん?》

《えっ、そのぅ……髑髏の肩パッドとかマントとか、王冠とか、なんというか、もっと魔王様!! って感じの服装を、して欲しいかな~って》

《あ~~、なるほど?》


 要は、もっと中二チックな服着て欲しい訳か。この娘は。


《ま、そのうちな。考えとくよ》

《わああ!! 嬉しいです~!! 期待してますね!!》


 なんか、めっっっちゃキラキラした視線を送ってくるんですが……。これは逃げられなくなったな……。仕方ない。ハロウィン文化を持ち込むか。

 プライドキングダムへ来る前、ちょうど暑くなってきた! ってくらいの気温だった。こっちでのやることに一区切りついて帰る頃には、ちょうどハロウィンをやるには良い季節なのかもしれない。

 何故ハロウィンかって? そりゃ勿論、コスプレパーティーだ。この時ばかりはどんな服装してたって問題ないからな。変に真面目な服を着てる方が、かえって浮く。それを利用して、シンシアの願いを叶えてやるべきだろう。


「しっかし、となると……どうすりゃ良いんだ? 鍛冶工房は地下だからピンピンしてっけど……地上はかなり崩壊してんだろ? これじゃ靴作れる奴も、仕事できる状態じゃねぇだろ……」

「ま、そりゃそうだ。予約だけしときゃ良いんじゃねぇか? 仕事できる環境さえ出来れば、あいつなら完璧に仕上げてくれるだろうぜ」

「ん? なんだ。知り合いなのか」

「いや、むしろ知り合いじゃねぇ奴の方が少ねぇよ。しかも、この国唯一の靴屋だぞ? オレらだって靴履いてんだから、知ってるに決まってんだろ」

「そ、そうか……。んじゃ、そいつのこと教えてくれよ。ちょっくら、予約入れてくっから」

「ん~。言っても伝わるか分かんねぇしな……。うし。明日、オレが仲介してやるよ。今日はもう寝てるだろうからな」

「ん? そうか……。分かった。悪いな。じゃあ、また明日くるわ」

「おう!! じゃあなぁ~」


 ばいばーいと手を振り合って、別れる。

 何の気なしに遊びに来たが、あいつら、まだ勤務時間中なんだよな。復興が終わるまでは移籍は保留ってことになってるので、2人ともまだ他のドワーフ同様、この国お抱えの鍛冶師という立場なのである。


 俺の目的を果たすためにも、さっさと復興を終わらせて、他所へ遊びに行けるだけの余裕をつくってやらねぇとな。


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