83話 あぁ、この兄ちゃんな。足からビーム撃てんねんで
「お疲れ。どうだ~? 進捗は」
「見ての通り。まだまだだねぇ~」
対談会が終了した後、俺とクロは復興支援をしている皆と合流していた。
セーラの言う通り、進捗はまだまだの一言。依然国は半壊状態のままである。強いて言うなら、安全通路の確保が出来たくらいだ。
とはいえ、それでもかなりの進捗と言える。俺達がピラミッドに行く前は国中のどこもかしこも建物の瓦礫などでガタガタだった。
それがある程度は片付き、普通に道を歩けるようになったのだから。
「そうか。んじゃ、早速呼んじまうか」
そう言って、シルルを産み出した時に獲得した魔物渦から発生したPOPモンスターの屋敷妖精たちを召喚する。
すると、地面に大きな魔法陣が浮かび上がり、そこへシュン! と次に次に屋敷妖精たちが現れる。その数、100。
「よし、来たな」
彼女らはあくまでPOPモンスターであるため、シルルのように喋ることはない。よって思念による指令で済ませる。
「よし。あとは……あっと、そうだ。シンシア」
「? はい。何でしょうか創哉様」
「アンデッド軍団たちを彼女らの指揮下につけてアシスタントや雑用をやってもらえ。そうすれば、もっと効率よく復興が進む筈だ」
「わぁ~~!! なるほど! 承知しました!」
瞳をキラキラ輝かせて感心するシンシア。
いや、そんな盛大なリアクションをするようなことでもないと思うんですケドネ? まぁ……別に良いけど。
え、喋れない屋敷妖精の指揮下にアンデッド軍団をつけても、まともに機能しないんじゃないかって? いや、それがそうでもないのだ。
彼女ら屋敷妖精が持つ『超家事全般』には、統率能力も含まれているのだ。リーリエのクラス『メイドリーダー』のクラススキル『侍女長の矜持』に含まれている『部下教導』と同じように、自分の指揮下に入った者を統率する為の能力がある。故に、シンシアがアンデッド軍団へ、『ちょっとあの子たちの指示聞いて働いてきて~』と命令すれば、指揮権の一時委託は完了。
再びシンシアが『戻ってきて~』って感じの命令を出すまでは、何処に出しても恥ずかしくない立派な屋敷妖精たちの雑用係が出来上がるのだ。
「っうし! まぁこれで、多少は復興の速度も上がるだろ。普通にやってたら1年くらいはかかってただろうけど、数か月先にはそれなりに見れるようになってんじゃね? 知らんけど」
「随分他人事やな。まぁ、ええけど」
「分かんねーもんは分かんねーしな。ちび共の相手でもしてくっかぁ~」
「あん? うち等は復興の手伝いせんでええんか」
「物理的な復興支援はあいつらに任せとけ。俺らは、俺らにしか出来ねぇことをする。つか、こういう大人が自分のことで手一杯になっちまってる時、ちび共の相手をしてやんのも立派な復興支援って奴よ。だから今日から暫く、『ワンダフル』の連中だけじゃなくて国中のちび共の相手だ!! 忙しくなんぞ! むしろ気合入れろ気合を。生半可な気持ちじゃちび共の相手は務まんねぇからな?」
「ひひっ、国中か。そら、大変やのぅ」
◇◇◇
「ねぇねぇ~、なんでサタンのにいちゃんって、くつはいてないの~? いたくないの~? ぼくらみたいにひづめがあるわけでもないのに」
「あっ、それわたしもおもってた! ねぇねぇなんで~? サタンのおにいちゃ~ん」
「はぇ?」
早速ちび共の相手をしていると、馬人族の子供に、俺は言われてしまった。
「す~~~」
ぶっちゃけ、忘れてましたよね。今の今まで。
いやほら俺って、素で『痛み耐性Lv8』がある訳で。その上、リーリエ特製極道風スーツの『耐物理結界・弱』もあるでしょ? だからナディと違って痛覚が死んでる訳じゃないんだけど、大体の痛みは気づくけどスルー出来ちゃう範疇な訳で御座いますヨ。まぁだから、うん。忘れて、ましたよねぇ~。
「あぁ、この兄ちゃんな。靴履いとる時は無理なんやけどな? 裸足やと、足からビーム撃てんねんで。あんたら喜ぶやろ思うて、わざわざ脱いできたんや」
「っっ!?!?」
「えっ!! そうなの!? みた~い!!」
「でも、びいむって、なに~?」
「ひひっ! そいつは、兄ちゃんが見してくれる言うてはるから、それで覚えたったらええ。ほら、見してやりや」
そんなこと聞いてませんが!? ってか、何それ!!
《ちょっとクロさん!? どういうつもりなのよさ!?》
《なのよさって、あんたは何処の誰やねん。……どういうつもりも何もあらへんわ。ちび共の前で『忘れとった~!』みたいな顔して固まっとったから、助け船出してやったんやないか。ほれ、良いから見してやりや。そんくらい出来るやろ?》
《ぬぐぐ……こんにゃろ~》
ま、まぁいいさ。
クロの言う通り、質問されてるのに何も言わず固まっていた俺が悪いし、足からビームも多分出来る。要は足に魔力を集めて放てば良いだけだからな。
しかし、折角ちび共に見せるんだ。なんかカッコいい感じにしたい……。
「しょーがないな~! ホントはまだ、見せるつもりじゃなかったんだけど、特別だぞっ?」
しっ。とウィンクと共に口に人差し指を当てる。
すると子供たちも笑いながら、俺の真似をして口に人差し指を当てた。このジェスチャーの意味など知らなかっただろうが、それでも、なんとなくのニュアンスは伝わってくれたらしい。
「よ~し!! じゃあ、いっくぞ~!!!」
上半身を後ろへ傾けながら大きく股を開くハイキックで、左足のつま先がちょうど上空へ向いたタイミングで溜めた魔闘気を放出し、つま先から魔闘気砲を発射する。更にその勢いのままバックハイキックで右足のかかとが上空へ向いたタイミングで同じように発射。
ちょうど一回転し正面を向いたところで、右足に魔法で炎を纏わせつつとどめにサマーソルトキックで終了。
「どーよ!」
「これがびいむっていうんだ!! かっこいい~~!!」
「すっげぇ~!! サタンのにいちゃんかっけぇ~!!」
「もういっかいやって~!!」
「へっへっへ!! おうおう気に入ってくれたみてぇだな! いいぞ~! 好きなだけ見せてやんよ!! そらそら~!!」
なんて繰り返し続けること3回。
――武技『超魔闘演舞』を獲得しました
――武技『焔旋脚』を獲得しました
なんか、いつの間にか武技獲得してました。




