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77話 これよりオペを開始する

《奏、彼女にもあいつにも、ショックが大きい現場になる。2人とも眠らせろ》

《えっ? あ、うん。分かった》


 俺の思念話を介した指示に従い、奏が『眠りへの誘いスリープテンプテーション』を歌う。

 それを聞いたヘルハウンド兄妹(きょうだい)は瞬く間にスヤスヤ眠り、涎を垂らしながらイビキをかき始めた。


「で? 確実に成功する。とか言うとったが、そんな便利魔法あるんか?」

「ない。少なくとも俺は使えない。母体に負担をかけず成功させるイメージなんて出来ない」

「あん? なら、どないすんねん」

「普通に外科手術だ。まぁ魔法の力も当然借りるけどな。クロ、ヘルハウンド妹の痛覚を完全に遮断しろ。ナディは血止めを頼む。奏は2人が起きないよう眠らせ続けてくれ。セーラは完全治療薬(おんせんのゆ)を持って控えておいてくれ。シンシア、アンデッド軍団を使ってピラミッド内の探索を頼む。居ないとは思うが、魔力や闘気を消してナニカが隠れ潜んでいる可能性もある」


 魔物反応はなかった。だから、スフィンクス族の生き残りはいない。でも魔物ではなく人間や亜人、動物であればその限りではない。

 あいつらを産み出したナニカ、あるいは、その関係者が隠れ潜んでいても、不思議ではない。 


「分かりました創哉様。では、少し行ってきます」

「いや、お前はこの場に居ろ。あくまでアンデッド軍団だけを行かせるんだ。もし本当にナニカが居た場合、危ないからな。周辺の警戒に徹していろ」

「……分かりました」


 剣をメスのサイズまで縮める。『弱点看破』によって、大動脈やその他内臓の位置は見えている。幾ら完全治療薬(おんせんのゆ)があるとはいえ、幾らナディが血止めを出来るとはいえ、無駄に傷つけるのは良くない。

 精細な作業が必要だ。だが、俺なら出来る。『生体解剖』を持つ俺ならば、何をどうすれば良いのか、分かる。


「……よし。これよりオペを開始する」




◇◇◇




「ん、んん……。あれ、あたし、どうなって……?」

「目を覚ましたかい?」

「お前は……? ッッ!! そうだあたし!! ええっ!? あ、あんな膨らんでた腹が……元通りに戻って……!? それに、なんかずっと調子が悪かったのに、すっかり身体が軽いぞ……!? お前、一体何をしたんだよ!!」


 信じられない……!! と言った感じで唖然とした表情を浮かべるヘルハウンド妹。

 何をしたのか。まぁ、単純に腹やら何やらかっさばいて、中の子供を切除。当然ながら、そこに居たのは獅子の首の横に狼の首が生えてる小さなスフィンクスだった。が、それを即座に焼却。スフィンクス族は生かしておく訳にはいかないからな。奴らの習性はゴミすぎる。

 幾ら子供に罪はないと言えど、母親のヘルハウンド妹が産みたくないと望んだ以上は殺す。まぁそんなこんなで中の子供の処理が終わったら、かっさばいた患部に完全治療薬(おんせんのゆ)をぶっかけて終了だ。簡単に言えば。


「ま、俺は魔王仮面さんだからな。色々とお前らの常識外な力があるんだよ。詳しくは秘密ってことで宜しく。そ、れ、と、おら!! いい加減起きろ! いつまでぐうすか寝てやがる! 妹の方が先に起きてんぞ!?」

「うぇ~? らんだよぉ~。もうちょっと~、いいだろぉ~? うぇへへへぇ~」


 あ、こいつ……完全に寝惚けてやがる。イケメン狼な印象だったけど、すげぇ間抜け面してる……。それにこの言い振り、完全に俺を妹だと勘違いしてるな。

 なんて考えていると、


「うあ゛あ゛っ。は、恥ずかしいっ……。~~っもう!! 起きろバカ兄貴ぃぃぃ~~!!!!」


 ヘルハウンド妹はそれを見て顔を羞恥で真っ赤にして、兄のどてっぱらに頭から勢いよく突進した。 


「げぼぉっ!? な、なにすんだよぉ~!! ッは! そ、そうだ!! も、もう大丈夫なのか!? って、はあっ!? あ、あんな膨らんでた腹が……元通りに戻って……!? お前、一体何をしたんだよ!!」

「うん。ほとんど同じセリフさっき聞いたから、もう良いぞ」

「はぁ? な、何がだよ……?」


 いやぁ~、こういうとこ、ホント兄妹(きょうだい)なんだなって感じるポイントですよね。いや、顔つきとか、身体的特徴もかなり似てるんだけど。それ以上の繋がりを感じるって言うか。うん。まぁいいや。


「~~~ってことだから! ほら、行くよ!」

「わ、分かったよ」


 どうやら、ヘルハウンド妹が代わりに説明してくれたらしい。


「……あ~。なんつーか、ダッセェとこ見せたな。何をしたのかは気になるけど、お前が秘密だってんなら、別に良い。妹が助かった。それが一番大事だからな。ありがとう。……本当に! ありがとうッ!!」

「あたしからも、本当に、ありがとうございました!!! このご恩は、あたし達の全てでお返しさせてもらいますから!!!」


 一斉に、俺の前で跪くヘルハウンド兄妹(きょうだい)

 その瞬間、凄く見覚えのある輝きを2人は身体から放ち始めるのだった。



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