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68話 王位選定武闘会-閉会式/襲撃


 セセリーとの決勝が終わった翌日である。

 キレイに修復された武舞台の上に、俺達はいた。まだグラン王との戦いは控えているが、ひとまずは王位選定武闘会の優勝者、準優勝者などを讃えようということだ。つまりは表彰式と閉会式だな。優勝者とグラン王の戦いは、あくまでエキシビションマッチ、大会とはまた別枠なのである。


――サーターン!

――サーターン!

――サーターン!


 武舞台中に響くサタンコール。 

 このコールをされると、どうにもアフロヘアーなあの人が脳裏に浮かんで微妙な気分にならざるを得ない。観客さん達に悪気はない。それは分かっている。けれど、なってしまうのだ。


《これより表彰式を始めます!! 皆さん、ひとまずお静かに願います!!》


 試合中とは違い実況席ではなく俺達の目の前に居るが、観客たちにも声を届けるためマイクを手放さない実況さん。

 そして、その実況さんの言葉に従い、アレだけ沸いていた観客たちが一瞬で静かになる。かなり統率が取れてるな。流石だ。

 

《では、準優勝のセセリー選手!!! おめでとうございます!! こちら記念の純銀トロフィーと、表彰状になります! では、今のお気持ちをどうぞ!!》


 そう言って、実況さんはセセリーに自分のマイクを差し出した。何か喋れということか。俺も何か考えとかないとな……。


《悔しいばかりです。同時に、応援してくれた隊の皆に申し訳ない気持ちです。今回こそは優勝し、グラン王に挑み、そして王位に着くつもりでしたから。けれど、結果は結果。これは僕の実力不足が招いたことです。なので、この結果を真摯に受け止め次回に備えるつもりです。以上です。ありがとうございました》


 うわ、すげー真面目。あいつ、あんな飄々(ひょうひょう)とした感じだったけど、やっぱ警備隊という公職に着くだけあって基本は真面目なんだな。


――かっこよかったぞ~~~!!!

――次も応援してるわよ~~~!!!

――セーセーリー! セーセーリー!!


 武舞台に響くセセリーコールと、声援、そして拍手。


《はい。セセリー選手、ありがとうございました!! 観客の皆さんも、温かい声援と拍手、ありがとうございます!! ……それでは、優勝おめでとうございます! サタン選手!! こちら記念の純金トロフィーと、表彰状になります!! では、今のお気持ちをどうぞ!!》


 まぁ当然来るわな。同じように、俺にもマイクを差し出してくる実況さん。


《はは、ありがとうございます。でも俺が勝てたのは、俺だけの力じゃありません。応援してくれた仲間や知人たちのおかげですよ。それに何より、まだゴールじゃない。グラン王との戦いが待っている》

《なるほど。やる気十分、ということですね! これはグラン王との戦いにも期待が持てそうです!! 私、今からワクワクしてきましたよ~~~!! ねぇ、皆さん!!》


――おおぉォォォーー!!!

――頑張れよ~~~!!!

――すっげー戦い見せてくれ~~~!!!

 

 戦いにここまで沸くことが出来る。

 やはり、俺の計画に間違いはなさそうだな。その為にも、俺はグラン王に勝たなければ。


《これにて表彰式を終了といたします!! では次に、閉会式をとり行います》


 それからつつがなく閉会式は進行していき、王位選定武闘会は終了した。

 そして、エキシビションマッチとなる俺対グラン王の舞台が整ったのだった!!! 




◇◇◇


 


「まずは、祝福させてくれ。サタン。優勝おめでとう。こうして、そなたと互いの誇りをかけて決闘が出来ることを、余は心より嬉しく思うぞ」

「痛み入るグラン王。俺も、貴方と是非戦ってみたかった。宜しく頼む」


 観客たちが見守る中、笑い合いながら握手を交わす。

 けれど俺もグラン王も、目はマジだ。挑発のつもりなのか力を籠めて握手してくるので、俺も負けじと握り込んでやる。

 すると面白そうにしながら闘気を高めてくるので、負けじと俺も闘気を高める。


《え、えー。んんっ!! あの、お二人とも? まだ試合は始まっておりませんので、どうかその辺りで》


 気まずそうに割って入ってくる実況さん。


「おおっ、これは申し訳ない。グラン王が挑発してくるものですから。つい」

「何だと? そなただって、あのような挑発的な目を向けてきたではないか。全てを余の責任にするなど、男らしくないぞ。サタン」

「そいつは失敬。けどよ、面白がってどんどんエスカレートさせてったのは、何処のどいつだっけなぁ? 俺はちょっと覚えてないんだけど、あんたは知ってるか?」

「さぁ、誰だったかな……? 余も覚えておらんな」

「あぁ?」

「なんだ?」


 しかし、話の流れで再びバチバチし合う俺とグラン王。


《あーもう!! だからその辺りにしてください!! 試合が始まってからなら好きなだけしていいので!!》


 全くもう!! って感じで再び割って入ってくる実況さん。

 ちょっと申し訳ないが、面白がって挑発してくるこいつが悪いのだ。ずっとニヤニヤしているのだから、確実に狙っている。性格の悪い奴だ。


 まぁ嫌いじゃない。むしろ好きな方だ。こういう奴はつるんでて面白い。


《えー、落ち着いたようですね? では!! 王位選定武闘会優勝者であるサタン選手対、我らが王グラン・レオーネ様によるエキシビションマッチを行いまぁぁす!!! それではぁぁ……始――》


 実況さんが試合開始の合図を出そうとした瞬間!!


チュドォォォン!!!


 セセリーの爆発の比ではない特大の爆発が、対峙している俺とグラン王のちょうど真ん中。この武舞台の中央を爆心地として突如発生する。


「ご機嫌よう、勇者の経験値諸君。何か大事なイベントの最中だったようだけど、ちょっとお邪魔させてもらうわね……? ふふ」


 爆炎の中現れた、そいつ。

 耳の長い女だった。


「あら、貴方は……ふふ! ふふふ!! ちょっと変わっているけれど、一目で分かったわ。でも、どうして貴方がこんな所にいるのかしら。迷宮主(ダンジョンマスター)なら自分の城に引き籠っているのが普通でしょう? まぁいいわ。貴方がいるなら話は別。自己紹介させてもらうわね? 初めまして。今代憤怒の魔王(サタン)、私は魔法大国の女王フィリオーラ。私の物になる気はない? 魔王は殺し尽くさなきゃだけど、私の物になるなら、貴方だけは見逃してあげても良いわよ」


 楽しそうに、愉しそうに。そいつは笑った。

 俺のことを舐めまわすような視線で見ながら、嗤った。


 魔法大国の女王、フィリオーラ。


「ぐっ!?」


 その瞬間、凄まじい頭痛が俺を襲う。胸の中のナニカが騒ぎ出す。

 嫌な予感がどんどん、どんどん強くなっている。まさか、こいつこそが俺を襲う嫌な予感の正体なのか……? いや、それもなんだか違う気がする。

 でも、間違いなく、ヤバい相手だ。


 こうして、俺とグラン王の試合は中断することになった。予想外の、招かれざる来客の襲撃によって。


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